【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第91話 かぶき者

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~織原朔真視点~

『それではゲストをお呼びします』

 僕のヘッドホンから鷲見わしみカンナさんの快活な声が聞こえた。

『最近、目覚ましい活躍をしているこの方!エドヴァルド・ブレインさんでぇ~す!!』

「ぇ~カンナスキーの皆さんこんヴァルド、エドヴァルド・ブレインです。宜しくお願いします」

『ヴっ……』

 鷲見さんはおっさんがえずくような声を発する。

「だ、大丈夫ですか!?」

『…っ!はぁ、はぁ…イケボが、すぎる……』 

「いちいちそんな反応されたら俺もやりづらいんですけど!?時間も限られているのでなんとか──」

『え?時間も限られてる?今日はもう朝までだって聞いてますけど?』

「誰から聞いたんですか!?」

『全日本イケボ組合から……』

「そんなわけわからん組合存在しないですよね?」

『ねえもぉ、ちょっと本当に待って!私、そういえばエドヴァルドさんの配信今までまともに聞けてなくて……』

「どういうことですか?」

『もうイケボ過ぎて、はぁん♡聞けな~い♡ってなっちゃって……』

「カンナスキーの皆さん、これが鷲見さんの通常運転ですか?」

 カンナスキーとは鷲見カンナさんのファンネームだ。

 〉通常っちゃ通常
 〉いつもよりメス増してる
 〉すまんエド、うちのカンナが……
 〉うちのカンナを宜しく頼む

「いつもよりメス増してるってなんだよ、一郎系らーめんか?」

『本当に、数々のイケボ配信者と対談形式で配信をしておりますが、エドヴァルドさんは初めてのタイプでぇ、その配信者の方達は勿論みんな素敵な声の方々なんですけど、エドヴァルドさんの声は今まで聞いたことのないタイプの声なんですよね。例えば俳優さんの誰々に似てる声だとか、声優さんの誰々に似てる声だとか、私の中で今まで対談してきた配信者さんの声をカテゴライズしてきたんですけど、エドヴァルドさんは私のカテゴリーのどこにも当てはまらない感じでぇ、そのカテゴリーを作るのにいちいちこういう反応をしてしまうんですぅ~……』

 〉早口になってるぞ
 〉わかる
 〉メスマシマシw

「なるほど、耐性を作ってるってことですよね?毒かなにかかな?」

 〉毒w
 〉逆に抗体作りすぎてアナフィラキシーで死ぬ可能性も
 〉それそれw

 僕と鷲見さんのオープニングトークはまだ続く。

『そういえば、うちの後輩がお世話になりました』

「え、薙鬼流さんのことですか?いやあれは全然…寧ろこっちがお世話になったというか……」

 鷲見さんは僕に構わず続けた。

『あの大会見てたら感動して大号泣しちゃってぇ……たぶんひなみちゃんはエドヴァルドさんがいなかったら結構キツかったと思うんですよ』

 鷲見さんは珍しくも落ち着いた雰囲気で話す。

「ん~大会でも言いましたけど、彼女が居なければ俺もあんなに頑張れなかったですよ?だから俺がいなかったら~ってのはちょっと違うかもです。シロナガックスさんもいなければ優勝なんてできませんでしたし」

 〉優勝おめでとう
 〉おめです
 〉イケメンの発言だな

『彼女がいなければ僕も頑張れなかった……私もそんなこと言われてぇ~!!』

「てか寧ろ鷲見さんがいなければ俺はここまで皆さんに知られることもなかったんです!鷲見さんがご自身のチャンネルで俺のことを紹介してくれなければ、大会にも出れてなかったですし。本当にあのときは取り上げて頂きありがとうございました」

『い、言われたあぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 鷲見さんはバンバンと机を叩きながら叫んだ。

 〉鼓膜死ぬ
 〉うるさっ
 〉耳ないなった
 〉ミュートしてね?

 画面の鷲見さんは斜め上を半目となって見つめている。暫くの間、軽快なBGMだけが流れた。

『それではこれより!皆さんから頂いたマシュマロを元にエドヴァルドさんのことをどんどんと掘り下げて行こうと思いまぁす!!』

──────────────────────────────────────────────────

~音咲華多莉視点~

 高い天井にシャンデリア、清潔感のある白い壁に温かみのある大量の照明が大きな会場を照らす。ここは都内某ホテルの宴会場だ。

 最大約1500人ほど入るこの会場の中央に私、音咲華多莉と同じ椎名町のメンバーである三枝さえぐさふみか、共演者で番組の名前にも入っているメインパーソナリティーの住吉すみよしさんとお笑い芸人で日本一の漫才コンビの称号を2009年に獲ったタマアンドテツさん。そして同じくお笑い芸人で日本一のコントを決める大会で常連となっているポケットジャングルの2人と元プロゲーマーの新界雅人さんが丸いテーブルをそれぞれ前にして座っていた。

 丸いテーブルには白いテーブルクロスがシワなく掛けられており、出演者一人一人の顔をきっちりと撮れるようにカメラが置かれていた。

「始まりましたぁ~住吉ぃぃeeeeの時間です!」

 大きすぎる拍手とイェーイやオオッとオープニングを盛り上げる声がする。私もふみかも同じように拍手をした。

 きっと今頃エドヴァルド様は鷲見とかいう女とコラボ配信をしていることだろう。こうやって収録と配信が被ることが最近では多くなった。リアタイできなくて残念だが、私は仕事に集中する。

「今回の素敵なゲストはこちらの方達でぇす!」

 メインMCのテツさんから紹介される。私は置かれているカメラではなく、カメラマンさんが持っているカメラに視線を合わせて言った。

「はーい♪︎皆のカタリ!椎名町45の音咲華多莉です!!」

 共演者さん達が拍手や歓声をあげてくれる。そして隣のふみかも同じようにして自己紹介をする。私も拍手をして場を盛り上げた。

 ふみかの挨拶が終わるとテツさんが進行を続けた。

「そして、元プロゲーマーにしてゲームをする若者達の間では知らない人はいないというこの方、新界雅人さんです!」

 新界さんは元ぷろげ~ま~と書かれた緩いTシャツを着て一礼しながら挨拶をした。

「宜しくお願いします」

 テツさんが住吉さんに訊いた。

「住吉さんは、新界さんのことはご存知でしたか?」

「この番組にもねぇ、プロゲーマーの方が来てくれたりした時に、お名前は伺ったことありますよ」

「ありがとうございます」

 新界さんはそう言って住吉さんに礼をした。

「いえいえ、でもあれ面白かったですよ。君の名──」

「それ誠の方です!こっちの新界さんのやつじゃないです」

「あれ、違った?すみませんねこんな感じで……」

 住吉さんは持ち前の愛嬌のある笑顔でその場を濁しながら盛り上げる。

「名前いじりはちょっとデリケートなので、やめてくださいね」

 軽いボケをしたことに謝罪する住吉さん。するとテツさんの相方のタマさんが言った。

「でもこの前、たけしさんの番組とかラジオでもご一緒させて貰って──」

「それ大竹の方な!なんでマコトで繋げんだよ。わかりづらいだろ」

 そのボケにまたしても一礼する新界さん。

「この新界さんは本当に凄い方で、日本のeスポーツ業界のパイオニアとして多くのプロゲーマーの方達に影響を与えてる人なんですよ」

 おおぉ~と住吉さんやタマさんが歓声を上げるなか、テツさんは進行を続けた。

「えぇ~、以上の皆さんで、お送りしたいと──」

「ちょっとぉ!!」
「待てぇぇい!!」

 ポケットジャングルの2人が椅子から立ち上がり、テツさんにつっこんだ。そこでひと笑い起き、メインパーソナリティーの住吉さんも無邪気な笑顔を見せて言った。

「歌舞伎の人みたいなのがいる」

 それを聞くとポケットジャングルの佐藤さんが見様見真似の見栄を切りながら言った。

「あ"!待てぇぇぇい!!」

 すぐにポケットジャングルの幸田こうださんが佐藤さんの顔面を片手で覆いながらつっこんだ。

「やったことないんですから!ふらないでください!!やっちゃうんですよこの男は」

 咳を切ったような笑いが出演者に広がる。住吉さんが言った。

「あれ?でも今日、さたけいないじゃん?」

 ポケットジャングルは3人組のトリオだが今日呼ばれているのは佐藤さんと幸田さんの2人だけだ。

「今日はもう我々だけで──」

「また寝ちゃってんの?」

「ちょっと!!」
「よくご存知でいらっしゃる!」

 住吉さんとポケットジャングルの2人以外、私含めてクエスチョンマークがついた。おそらくこれは収録だが多くの視聴者も何のことを言っているのかわからないだろう。それを説明するように佐藤さんが口を開く。

「さたけ昔、料理人のバイトしてたんですけど、暇だっつって厨房で寝てたんですよ。それが見つかってクビなったっていう──」

 幸田さんが引き継いだ。

「しかも、1回目は罰金払っただけですんだんですけど、アイツ馬鹿なんでその後もう1回寝ちゃって……その時のアイツの発言で、罰金さえ払えば寝て良いって解釈をしたみたいで」

 住吉さんはじめ、共演者やスタッフさんの笑い声が会場を彩った。このトークが使われるとしたら画面右下にさたけさんの宣材写真が貼られるだろうと私は予測した。

「馬鹿だなぁ~」

 笑いを噛み締めるような住吉さんの発言でオープニングトークが終わった。カメラが止まり、それぞれに置かれていた液晶ディスプレイが起動する。

 この住吉ぃぃeeeという番組は、毎週木曜日21時に放送されるテレビゲームにフォーカスを当てた番組だ。お笑い芸人の方達や私のようなアイドル、プロゲーマーやゲーム実況をしている有名ストリーマー、ゲームがサッカーゲームなら元サッカー日本代表の選手なんかもゲストに呼ばれる。

 今日は私とふみか、新界さんとポケットジャングルの2人が全国高校eスポーツ選手権大会の番宣でこの番組に出演した。

 今日、番組でやるゲームはeスポーツ選手権でも競技採用されているフォートトゥナイトだ。それを新界さんが操作方法やルールを分かりやすく説明していく。

「なるほどねぇ~、これはなかなか難しいですね。僕の世代なんかはゲームって言ったら専らRPGでしたけど、ネットの普及で今やこうやって世界の人達と対戦ができるって本当に凄いことですよね」

 住吉さんが共感を誘い、そして私に話をふった。

「かたりんとかもゲームするの?」

 きた。私は応える。

「一応やったことはありますけど、私は自分でプレイするよりも、新界さんやVチューバーさん達のゲーム配信をよく見たりしてます」 

 すると住吉さんが言った。

「え~本当に?この大会に合わせてそう言ってない?」

「本当ですよ!実際にこの前、配信で新界さんの出てた大会も見てましたもん。あの時の大会はフォートトゥナイトじゃなかったですけど」

 私の言葉に新界さんは返す。

「そうなんですか?でもこの前自分の配信にコメントしてくれたので本当に見てるんだろうなって思います」

 すると今度はテツさんが訊いた。

「ふみかちゃんは?」

 ふみかが答える。

「えぇ三枝は、友達がやってるのを横で見たことはあるんですけど、こうやって自分でプレイするのは初めてでぇ~、でもなんだかハマっちゃいそうです♪︎」

「へぇ~。でもこういうゲームが世界中で人気で日本の高校生達も男女問わずやってるんだよねぇ、実力とかはどうなんですか?高校生達の」

 住吉さんの質問に新界さんが答える。

「凄く高いですよ。このフォートトゥナイトは世界中で大会が開催されていて、そのアジア予選に選出されたYummyヤミー君とかアメリカ留学してるRainレイン君とかも今回出場したりするので、レベルの高い大会になりそうですね」

「「「留学!?」」」

 住吉さんはじめ、多くの人が驚いた。新界さんは現在の日本のeスポーツ教育について話した。

「日本でもeスポーツ科っていうのが授業に取り込まれたりとか、部活としてeスポーツをしている高校生とかもいますね」

 へぇ~、と感心する一同。

──────────────────────────────────────────────────

~Yummy視点~

 木材でできた空中迷路を建築しつつ、その迷路に迷い込んだ最後の1人をアサルトライフル型の武器で撃破した。

 ビクトリークラウンを手にした俺の操るアカウントYummyの文字がキャラクターの頭上に輝く。

 全国高校生eスポーツ選手権大会に出場する俺だが、あまりこの大会には興味がない。俺の持つ興味はただ1つ、同年代で最も強いと言われているRainだけだ。

 Rainをぶっ倒して、この世代最強の称号を手に入れたい。俺はゲーミングチェアに身体を預けて、先程のゲームで手にした勝利の余韻に浸りながら、大会に想いを馳せる。

 Rainのプレイ動画を見たことのある俺は奴の動きを正確にイメージできる。問題はない。コメンテーターの1人であるルブタンともマッチしたこともあるが大したことはなかった。

 ──アイツの方が強い……

 世界大会のアジア予選に出場した際に俺を負かしたアイツ。名前はイルハン。

 俺はイルハンの動画を検索した。

 アジア予選を突破し、そのまま世界大会でベスト8。流石だ。俺を倒したんだからそのくらいやって貰わなければ困る。

 奴のプレイ動画はまるで1.25倍速で再生されているのかってくらい速くて正確だ。こんな凄い人と一戦交えたことができたのだ。俺のモチベーションも良い具合に上がっている。

「ん?」

 俺はイルハンの関連動画で出てきたとあるサムネイルに目がいった。

『世界ベスト8のイルハンが瞬殺』

 迷わずその動画をクリックすると、イルハン視点で始まり、ショットガン系の武器によって彼が撃破される映像が流れた。

「…うっま……シロナガックスか……」

 同世代で気になる選手といえばRainではあるが、世代とか関係なしで注目している選手と訊かれればシロナガックスだ。最近まではアーペックスのストリーマー大会に出ていてフォートトゥナイトには低浮上だったシロナガックスだが、復活したようだ。

 配信等はしておらず、こうやって世界大会に出場した者達の配信に現れては次々と彼等を撃破している。次のフォートトゥナイトの開発会社、エポック社の開催する世界大会ではシロナガックスが注目されることは間違いないだろう。

 ──俺も負けちゃいられない。

 そう息込んで俺は練習を続けた。
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