【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第104話 ピースコントロール

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~ぼっち組・渡辺視点~

 小さな虫が自分の存在を示そうと、その身体からは想像もできないほど大きな音を響かせる。夏のうだるような暑さにこの虫達──主にセミやつくつくぼうし──の鳴き声が冷房のきいた部屋にも染み込んで聞こえてくる。この鳴き声を聞くと何故だか僕の体温が上昇していくような錯覚に陥ってしまう。その対処法としてイヤホンを両耳の奥まで突き刺して、動画投稿サイトを宛もなく眺めた。

 夏休みは必ず田舎のじいちゃんの家に両親と行く決まりになっていた。いちいち行くのが面倒臭いと言っても、バイトもしていなければ特に予定もないため、僕は仕方なく都会からはるばるじいちゃんに会いに足を運ぶ。

 田舎に来ても、いや田舎だからこそやることが何もない。こうやって一日中スマホをいじって、寝て過ごす。

 すると、見ていた動画が急に止まったかと思えば電話がかかってきた。

 学校の唯一の友である森氏からの電話だ。

 普段ラミンのメッセージでのやり取りしか、していないため、一体何事かと電話に出る前に邪推じゃすいしてしまう。何も思い付かないまま、電話に出ると、森氏は酷く慌てた様子だった。

「も、もしもし!?」

 僕が「もしもし」と言う前に森氏がそう言った。僕は一瞬、面食らうが冷静に尋ねた。

「どうしたの?」

「そっちにパソコンがあるでござるか!?あるなら今すぐユーチューブを見るでござる!!」

 林間学校で仲良くなってから森氏は僕に対してござる口調になったのだ。それに今の会話で、僕が田舎にいることを彼が覚えていてくれたのを少しだけ嬉しく思った。それがバレると恥ずかしいので、そう悟られないように僕はゆっくり間を置いてから言った。

「あるけど……そんなに慌ててどうしたの?」

 しばらく寝たままの体勢から起き上がった為に身体の軋む音がする。そして机の上にあるパソコンを開く。その間に森氏は捲し立てるようにして喋った。

「いいから早く!!今、高校生のeスポーツ大会が開かれてて──」

「あぁ、この前言ってたやつね」

「そこにヤバい人が出てるでごさる!!」

「かたりんでしょ?」

 現役アイドルにして俳優の音咲華多莉、今でも同じクラスにいるなんて信じられない。中学時代のこれまたたった1人の友達にはそれとなく自慢をしたものだ。しかしその高校生の大会、確か応援マネージャーとしてゲスト出演していると教えてくれたのは、森氏本人だ。

「ちがう!もう一人のアイドルでござるよ!!」

「あぁ、三枝ふみかのこと?」

「ちがうちがう!うちのクラスのもう一人のアイドル!!」

 僕はパソコンからユーチューブを開いて、高校生のeスポーツ大会のライブ配信を見た。

 フォートトゥナイトのプレイ画面が広がる。

「へぇ~、フォトトゥナの高校ナンバーワンを決めるわけね──」

「画面左下を見るでござる!!」

 僕は言われた通りに画面左下で現在プレイ中の選手を見た。

「え?女の子も出てんの?」

「よく見るでござる!!見覚えがあるでござろう?」

 見覚え?

 ──確かにどこかで見たことあるような……

 その時、僕の脳内に雷鳴が轟いたかのような衝撃が走る。

「ぅえっ!!?マナティー!!!?」

「そうでござるよ!!クラスのもう一人のアイドル!!一ノ瀬愛美殿でござる!!」

 よく似てる人なんじゃないかと思ったが、見れば見るほど確信に変わっていく。それにアカウント名がMANAMIだ。

『いっけぇ~!!愛美ちゃん!!』

 かたりんの応援の音声も聞こえてくる。

「本当にマナティーじゃん!もう3キルしてるし!うわぁ、すげぇ、信じらんねぇ!しかもめっちゃ上手いし!!頭も良くてゲームもできるっておかしいだろ!!」

 僕は木に集まる虫のように、パソコンにしがみついた。

──────────────────────────────────────────────────

~一ノ瀬愛美視点~

 おかしい。

 予選の時の震えるような緊張はしていない。にもかかわらず、思ったように弾が当たらない。それに心なしか建築もうまくいってない。

 オープニングゲームももう後半に差し掛かり、ストームボーダーも発動している。違和感を抱きながらもある程度ダメージ数を稼ぐことができたので、強制的にゲームオーバーにはならなかったのは不幸中の幸いだ。そんなおかしな状態にも拘わらず3キルできたのも大きい。

 私は狭まったエリアの中、木材で作った建築の屋内でこの違和感と向き合う。そして悟った。

「あ、動作確認するの忘れてた……」

 しまったと思ったのも束の間、眼前の高い山の麓から鋭角に銃弾が飛んできた。私はジャンプをしながら敵の攻撃を避ける。避けるというよりは当てにくくした、が正解だろう。インパクトウェーブを使って遠くへ逃げるのも良いが、私は生き残るよりも、この不安定なキャラコンでは最後の戦いを生き抜くことはできないと悟り、敵の射程外ではなく、寧ろ敵のいる方向へ飛んだ。

 ──キル数を稼ごう!

 遠くのエイムが定まらないのなら、接近戦に持ち込めばなんとかなる。私はインパクトウェーブを使って私を狙う相手に接近した。ゲーム開始直後のような空中を滑空する体勢をとった私の操るキャラクターは着地の準備をするためにパラソルを開く。パルスと呼ばれる触るとダメージが入る青いバリア、アーペックスでいうところの炎のような役割の壁が迫っているのが見える。

 ──もう試合も後半戦……

 パラソルを開いたことにより幾分かスピードが落ちたのを相手は見逃さない。

 相手のいる山の麓付近で1発もらってしまった。着地と共に私は直ぐに鋼材で建築をして堅牢な部屋を造る。その間に回復アイテムを使って先程受けたダメージの回復を図るが、敵は私の方へと近寄ってくるのがわかった。

 回復には数秒を要するが、しかし私のこれは回復目的ではない。敵に来てもらうための陽動だ。

 私は堅牢な部屋の天井を編集──自分の造った建築物なら加工することができる──して穴を空けて更にその上に建築を施す。敵も私を狙いに同じ様に建築をしながら上を目指す私に付いてくる。しかし建築スピードは私の方が上だった。壁を編集して敵の更に奥に屋根付きの部屋を建築した。見事敵を閉じ込めることに成功する。

 その壁を編集し、窓を造ってそこからショットガンでズドン。

 外れた。すかさずもう一発。

 なんとか撃破することに成功する。

 ──まずいな……

 今の相手くらいの実力ならこのキャラコンでもなんとかなりそうだが、アジア大会に出場した選手とかとなると難しいかもしれない。

 オープニングゲームももう終盤、迫るパルスと他プレイヤーの造った迷路のような要塞がプレイ画面一杯に広がっていた。

──────────────────────────────────────────────────

~織原朔真視点~

 一ノ瀬さんが、何かおかしい。

 僕は会場に設けられてるスクリーンに写された映像を見て思った。薙鬼流もそれに気付いたのか僕の隣で呟く。

「いつもの愛美先輩じゃない……」

 僕はそれを肯定する。

「うん。エイムが定まってない…いつもならもう10キルは獲っててもおかしくないのに」

「自分の正体がバレないようにしてるんですかね?」

「ん~、その可能性もあるとは思うんだけど…それでももう少しキル数を稼ぐべきかも」

「あ!もしかして最初の試合マッチはあまり目立たないようにしてるとか?」

 それならあり得る。ソロのバトルロワイヤルゲームの大会は初めに目立つと次の試合、多くのプレイヤーから狙われてしまう。そうなれば一貫の終わりだ。それは避けたいところだろう。

 ──それにしてもわざと一発、弾を外す必要などないと思うんだが……

 画面には優勝候補のRain選手が巧みなピースコントロールにより次々とキルしていく映像が写る。

 そしてもう1人、Yummy選手もRain選手のような繊細なピースコントロールとは違ってその強気な攻撃で続々とキルを獲っていく。

 安地が狭まりいよいよ終盤、ストームボーダーも炸裂して選手達が否応なしにゲームオーバーにさせられる。

 そんな中、とうとう一ノ瀬さんと優勝候補のRain選手が相対した。
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