【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

文字の大きさ
109 / 185

第109話 守りの人生

しおりを挟む
~Rain視点~

 シロナガックスだ。

 ステージからインタビューを終えて、彼女は多くの選手達の注目を浴びながら自分の席に着く。僕の隣だ。

 今最もホットなプレイヤーがここに、自分達と同じ空間にいるのだ。皆が彼女を見つめるのは当然のことである。

 僕の隣のブースだからわかる。多くの人が憧憬どうけいの念を抱きながら視線を送っている。

 その中で敵意剥き出しに睨み付ける者がいる。Yummy君だ。彼はセカンドゲーム、開始直後に殺られていた。僕も彼女に負けたくはないが、2試合目の終盤、1V1で完璧に殺られてしまっている。

 正直、1V1ではまるで勝てる気がしない。

 ──1V1では……だ。

 狙うは試合開始直後。

 彼女はインタビューで自分らしいプレイを心掛けると言っていた。だとしたら、2戦目と同じように攻めの姿勢を崩さない可能性が高い。

 ──2戦目はYummy君と接敵したのならば、エヴァンスインダストリーに降り立っていた可能性が高い……

 開始早々Yummy君が死んだことから推測できる。僕の成績は1戦目は2位、2戦目は9位、エリミネートポイントを足せば現在2位だ。

 シロナガックスがどこかで殺られるのを期待するか、それとも自分で優勝を手にするか。僕は選択を迫られる。

 アメリカ留学を決めた時もそうだが、そんな選択肢を出されたら選ぶのは決まっている。

 ラストゲーム。空中をバスが走る。

 僕は飛び降りた。いや、飛び込んだといっても過言ではない。

 エヴァンスインダストリーへ。

 ──今、僕はどんな顔をしている?

 ゲームばかりやっていてバカにされたこともある。引っ込み思案で思ったことをなかなか面と向かって言うことも出来なかった僕が、ゲームを通してどんどん変わっていく。

 降下中に周りを見渡した。

 多くの選手がエヴァンスインダストリーに降り立とうとしている。

 ──あっ!!?

 MANAMIさんのキャラクターとYummy君、そして龍人君が近くにいるのがわかった。

 みんな考えることは一緒だ。しょせんゲームだと言ってプロを諦める奴等がたくさんいた。暇潰しだ、と諦める自分を正当化するような言葉を吐く人もいた。

 ──しかし今ここに、同じ目標に向かって降下していく仲間達がいる。

 殺し合いを望む仲間達がいる。

 ──ここで、攻めなければ一体どこで攻めるというんだ?

 守りの人生なんてなにもしていないのと一緒だ。

 ──ここで彼女を倒す!!

──────────────────────────────────────────────────

~一ノ瀬母視点~

 電車内無差別殺傷事件の弁護をすることとなった。被告人は既に罪を認めており、これは社会への復讐であると発言していた。しかし話を聞いていくうちにそれはアピールであると供述した。

 何に対してのアピールなのか。

 ネット空間という最後の居場所を、荒らし行為によって破壊されたことによっていかに自分が苦しめられたかを、ネット住人に知らしめようとしたということだ。

 ──ネット空間、自分の居場所……

 そして何より、被告人は母親からの虐待や監禁状態に近かった少年時代を経験している。

 ──母親からの……

 ふと、自分はどうだろうかと考えてしまう。

 三者面談以降、愛美とは殆ど口をきいていない。

 ──ダメな母親……

 今日だって、あの子が手紙を置いて、自分の出る大会に来てほしいと言っていたのに、私は仕事をしている。私は自分のデスクの引き出しを引いた。その中には家族写真が上を向いてしまってある。天使のような笑顔の、今よりかは、少しだけ幼い愛美が私は見つめた。

 少し休憩をしよう。

 弁護士事務所の喫煙室となっている非常階段に出た。電子タバコを点けながら、階段の扉を開くと、そこには既に先客がいた。

 パラリーガル(弁護士助手)の保坂君だ。彼は、階段に座り込み画面の大きなスマホを横にして、動画を見ている。

 両耳にイヤホンをしているので、私のことに気付いていない。

 私は後ろから彼が何を見ているのかを盗み見ようとすると、そんな私の気配にようやく気が付いたのか、彼は驚きながら後ろを振り向く。

「ちょっ、ちょっと!先生!!趣味悪いですよ!!人の観てる動画を盗み見るなんて!!」

 彼はスマホを隠すように伏せた。

「見られちゃマズイ動画なの?」

「ち、違いますよ!ホラ!!」

 彼は印籠いんろうのようにスマホを見せつける。フォートトゥナイトの動画だった。愛美と言い合ったあの日から、少しだけゲームについて調べた。ゲームの種類によってその競技人口が違うことやプロゲーマーの生活なんかも調べた。

「貴方もゲームが好きなの?」

「まぁ、好きですけど……」

「ゲームの何が良いの?」

「何って、楽しいじゃないですか?」 

「生産性がないじゃない?」

「そんなこと言ったら殆どのことに生産性なんてなくないですか?それに僕らが相手してる人達は、生産性のない行為をした人達の代表格ですよ?」

 最もなことを言われてしまった。無論、偶然巻き込まれてしまった生産的な人もいることは今の議題には関係ない。そして次に彼の話す内容も私は察知することができた。

 ──つまり、生産性のない人達がいるおかげで……

「つまり、僕らの仕事は生産性のない人達がいるおかげで成り立っていると言っても過言ではないですよね?」

 ぐうの音も出なかった。

「それに見てくださいよこれ!!」

 彼がBluetoothを解除して、スマホ内蔵のスピーカーから動画の音声を流した。

『なんと!!ほぼ1V3!!優勝候補達が反旗を翻す!!ここで決着がつくのか!?』 

 先程はチラリとしか見ていなかった画面を凝視する。画面は1:3の割合で四分割されており、一番大きな画面にはプレイしている女の子の姿が写っている。

「これ、高校生のゲームの大会なんですけど!世界的に有名な、謎のプレイヤーの正体がこの女の子なんじゃないかって話題で持ちきりで、例えそうじゃなくても、優勝候補の選手達3人を1人で相手しようとしてるんですよ!?熱くないですか!?」

 もしや、と思った。女の子の顔は私の引き出しの中にあった天使のような可愛い笑顔ではなく、鬼気迫る、それでいて楽しそうな表情を浮かべていた。そのせいで一瞬誰だかわからなかった。

 ──愛美……

「ねぇ保坂君……」

「はい?」

「車出してもらえる?」

「え?今日ってどこか行く予定ありましたっけ?」

 私はスマホの画面を指差して、言った。

「ここに行きたいから車出して」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...