【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第168話 同志

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~ぼっち組・渡辺視点~

 今日は日曜日、僕が箱推ししているブルメンのカンナとパウラちゃんの配信が13時くらいに始まる。本当だったら家でリアタイしているのだが、僕は模擬店でチュロスをカリカリにする作業にいそしんでいた。 

 森氏も隣でスポーツ系の部活に入っている男達から受け取った生クリームをプラスチックのコップに塗りたくっている。

 チュロスを熱している最中にスマホを覗き込む。

 ──あれ?パウラちゃんとカンナ、2人とも配信してない?

 2人とも配信をお休みしているのは珍しいことだ。

 ──夜にやるのかな?

 僕からしたら毎日配信してくれて嬉しい限りだが、中の人の身体が心配だ。一体いつ休んでいるのだろうかと僕は心配になる。2人のツブヤイターを開こうとするとTLには高速道路の事故についての情報が流れてきた。タンクローリーと馬運車ばうんしゃの事故のようでそこそこ大変な現場となっているようだ。しかし僕が見たい情報はブルメンの活動情報だ。

 TLをスクロールすると伊手野いでのエミルの配信が今日の22時からすることしか確認ができなかった。

 僕はエミール推しの森氏を見る。彼は今日この配信を観るために、今せっせと生クリームを塗りたくっているのだ。そして僕は彼の着ているクラスTシャツを見て驚愕した。僕らは今ターコイズブルーのクラスTシャツを着ている。しかし森氏の胸辺りに推しのエミールの缶バッチがつけてあるのだ。

 ──君って奴は…本当に尊敬できる戦友だ……

 こんなところで恥ずかしげもなく、しかも胸につけているなんて、オタクの鏡そのものだ。僕も推しのカンナとパウラちゃんの缶バッチをつけておけば良かった。

 僕がそう悔いていると着ているファッションがちぐはぐな女性集団が入ってきた。仲の良い集団になればなるほど、似たようなファッションになるものだが、この集団はそうではない。制服の女の子もいれば小学生みたいなファッションの人もいる。しかし彼女達は特別仲が悪いというような印象は受けない。それどころか皆かなり仲が良いように見える。

 するとその集団の地雷系ファッションの女性が僕らの作るタピ焼きを人数分注文する。8人分の注文の為、僕らは急いで準備をした。女性達は教室内のイートインスペースに座り、できるまでの時間、談笑をしていた。

 8つのタピ焼きができあがり、ホール担当の女子だけでは8つを一辺に持っていくことができないため森氏が手伝うこととなった。僕は嫌な予感がした。森氏は3つのタピ焼きを女性集団に持っていくと、その1人が森氏の胸にある缶バッチを指差して、何やら笑っているようだった。

 ──はぁ、嫌な予感は当たるんだよな……

 しかし森氏はどうどうとその缶バッチを見せ付けるように胸を張っている。

 ──あぁ、彼のその勇気に今スパチャしたい……

 しかしどうやら僕の思っているような会話がなされているわけではなさそうだった。女性集団の内の1人が自分のカバンを見せ付けたのだ。僕は目を凝こらして彼女のカバンを見るとそこにはブルメン達の缶バッチがたくさん取り付けられていた。痛バッグとはまた違って、ところどころにブルメン達がそのカバンを彩るようにさりげなくつけてある。

 彼女達と森氏は拍手をしたり、各々を讃えあっているような感じで会話をしていた。女性集団の1人はなんだか涙ぐんでいるように見えるが、ここからではどういった会話がなされているのかわからない。

 森氏がこっちに戻ってくると、僕は訊いた。

「どうしたの!?」 

 森氏は胸の缶バッチに触れながら喋った。

「フフフ、まさか同志が見付かるとは思わなかったでござる。それもこれもこのエミールのおかげでござる」

 まさかこんなところにもブルーナイツ箱推しの、しかも女性のファンと出会うとは思わなかった。午前中には新界先生とルブタンが来てたっていうし。

 今度から僕も缶バッチをつけようと心に決めた。

──────────────────────────────────────────────────

~ルブタン視点~

 女性の視聴者も増えた。Vチューバーやストリーマー、この前なんかは新界さんが男性アイドルなんかともコラボしたこともあって多くの人が俺らのことを知っていた。

「新界先生~!」
「キャー!!」
「し、新界さん写真とってもらっても良いですか?」

 俺はJKや男子生徒のスマホを構えながらシャッターをきる。

 ──にしても俺のファン全っ然おらんやんけ!!

「ありがとうございますぅ」
「キャーー!!」
「嬉しいです!」

 新界さんは手を振りながらファンの子達と別れた。そんな時、どこかで聞いたことのある声が聞こえた。

「写真撮ってもらっ──」

 ──きたか!!?

 俺は声のする方を見た。

「──もらってもいいですか?新界さん」

 また新界さんかい!!

 俺はその女性ファン──キリカと同じくらいの年齢──のスマホを受け取ろうとすると、そのファンは言った。

「あ、ルブタンさんも一緒に」

 耳を疑った。喜びで昇天しそうだった。するとその女性ファンはもう1人を呼ぶ。

「ほら、エミルも」

 ──エミル?

 するとエミルと呼ばれた女性がやって来て、キョロキョロと辺りを見回してから俺に小声で話しかけてきた。

「田中カナタ杯ではお世話になりました」

 その女性はぺこりとお辞儀をする。 

「え!?エミール?」

 小声で訊いた。ブルーナイツの伊出野エミルなのか俺は訊ねると彼女は頷いた。

「マッジで!?」

 すると新界さんと写真を撮ろうとしていた女性も名乗った。

「私は、霧声麻未です」

 俺と新界さんは驚いた。そして、俺らは近くにいた──俺らの会話を聞いていない──キリカと零夏にも挨拶するように伝えた。

 2人はエミールと霧声麻未の正体を知り、自分達も名乗った。

 なんだかブルーナイツの2人はやっぱりと言った感じでそんなにキリカと零夏の正体には驚いていないようだった。

 すると、周囲にいた生徒達の声が聞こえる。

「え!?ヤバッ!!?」
「マジで!?」

 俺はこの会話を聞かれてしまったのではないかと、一瞬焦ったが、彼等はスマホに意識を集中していた。どうやら先程起きた高速道路での事故について反応をしただけのようだ。

 俺らは近くにいたその学生達に声をかけて写真を撮ってもらうことにした。
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