文字の大きさ
大
中
小
56 / 122
第三章 王都誘拐事件編
第48話 バトルメイド
建国祭の準備期間で盛り上がりを見せている王都セントラル。
しかし、その賑わいから少し離れたこの薄暗い路地裏では今にも戦いが起ころうとしていた。
俺の目の前には黒ローブの男が一人。探知スキルで確認してみて周囲に隠れ潜んでいる仲間がいないことを確認する。
もしかしたら気配を消して隠れている可能性もあるので、微かな反応や違和感も漏らさず探してみる。しかしやはり周囲には誰もいなさそうである。
ということは目の前のこいつ一人さえ倒せばいいということだ。それに連れ去られた女性も気になるし、一刻も早く目の前のこいつを片付けて向かわないと。
「...死ねっ!」
すると目の前の黒ローブの男が一瞬にして3mほどあった距離を詰めてきた。その次の瞬間には奴の懐から取り出された短剣が俺の喉元付近まで迫っていた。
「おっ!?」
俺は何とか紙一重でその攻撃を避けるとバックステップで距離を取る。こいつ思った以上に対人戦が上手いようだ。
俺の一瞬の気のゆるみを察知し、かつ一撃で確実に殺すために的確に急所を狙ってきやがった。
「ほぅ、今のを避けますか。今ので大人しく死んでいればいいものを...余計に苦しむことになりますよ」
こいつはステータスは俺より低いが、何より対人においての経験が俺よりも大幅に上であるようだ。なるほどね、戦いっていうのはステータスの数値だけでは測れないものなのだな。これは勉強になった。
「確かに強いな。おかげで勉強になったよ」
「よく分かりませんがそれは良かったですね。では勉強代はあなたの命ということで」
そう告げると黒ローブの男は再び俺へと迫ってきた。
今度も的確に急所である心臓を狙って短剣を突き出す。
しかし今度は相手の攻撃を完全に見切り、剣先が俺へと届く前に剣の軌道から避けた。そして逆に飛び込んできた相手の懐へと潜り込み、みぞおちへと強烈な一撃を放った。
「ぐふっ!?!?」
黒ローブの男はうめき声を上げながら後方へと大きく吹き飛んでいった。そのまま地面へと倒れ込み、しばらく苦しそうな声を上げた後に気を失った。
「あっ、ちょっとやり過ぎたかな...?」
おそらく俺の攻撃によって一時的に呼吸が出来なくなってしまい、酸素不足によって意識が飛んでしまったようだ。まさか一撃で終わるとは思っていなかったけれど、まあ早く片付けられたから良しとしたい...
けれど、気絶されてしまったので相手から何も情報を得られなくなったしまったのはちょっと問題だな。
とりあえず終わってしまったことは仕方ないので、俺は奴の所持品から何か情報を引き出せないかと黒ローブを剥いで物色を始めた。
今のこの状況を傍から見たら確実に俺が怪しい人物になってしまっているな...
出来るだけ早く済ませようっと。
俺は急いで何か情報が得られないかと漁ってみるが特にこれといった情報を得ることは出来なかった。対人戦の経験と言い、情報を渡さないようにしている点と言い、こいつらはただの誘拐犯ではなさそうだな。
すると突然背後から強烈な殺気が近づいてくるのを感じた。
咄嗟に後ろを振り返るとすぐ目の前にナイフのようなものが飛んできていた。
「うわっ?!?!!?」
これもまた紙一重で避けることに成功はしたが、ほんの少しだけ髪が切られてしまった。幸い全く髪型には影響がない程度だったので良かったけれどもしこれで前髪パッツンにでもなっていたら少し落ち込んでいただろう。
しかし次から次へと誰だ一体?
黒ローブの奴の仲間か?
俺はナイフが飛んできた方向に視線を向ける。
するとそこには黒ローブとは正反対の白い清潔な服に身を包んだ人物が立っていたのだ。
「えっ、め、メイド...?」
この薄暗い路地裏にメイド服を着た女性が立っていたのである。なんでメイド?黒ローブの仲間...ではなさそうだけど。
「貴様...!お嬢様をどこへやった!?!?」
そのメイド服の女性は俺に鋭い怒りの目を向けると返事を待たずして襲い掛かってきた。
お嬢様...?
ってもしかしてあのドレスの女性の事か。
「その女性なら、ってうぉっ!ちょっと!!!」
せっかく説明しようとしたのにそんなのお構いなしに目の前のメイドは手に持ったナイフで容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
俺は攻撃を避けながら何とか誤解を解こうと対話を試みるがこのメイドさんは全く聞く耳を持ってくれない。
おそらくこの人は俺を誘拐犯の仲間かなにかと勘違いしているのだろうが、完全に頭に血が昇っているな。
こうなったら仕方ない、何とか攻撃しないで無力化するしかないな。
俺は引き続きこのメイドの攻撃を防ぎ避けながら隙を伺う。それにしてもこの人、明らかにさっきの黒ローブの男よりも強いんだけどメイドが何でこんなに強いんだ?!
距離を取っても手に持ったナイフを投げつけて一切の隙を見せてくれない。それに太ももから一体何本あるんだというほどのナイフを取り出して攻撃をしてくる。異世界のメイドはこんなにも物騒なものなのか。
俺はこのままじゃ埒があかないと思い、仕方なく彼女に向けてストレートパンチを繰り出す。その攻撃を両腕で受けきったメイドだったが衝撃によって数メートル後ろへと飛ばされた。
俺はその隙に気配遮断を使って気配を消してメイドの背後を取る。そして彼女が投げたナイフを手にもって背後から彼女の首元へと据える。
「くっ、まさかこれほどの手練れだったとは...」
「あの、とりあえず僕の説明を聞いてもらえますか?」
「私が犯罪者の言葉に耳を貸すと思うか?」
「だから!それが誤解なんですって!!!」
俺は彼女にこれまであったことの一部始終を説明した。最初は半信半疑で聞き流していたであろうが、俺が冒険者カードを見せてからは見違える様に話を聴いてくれた。冒険者はランク昇格の度に犯罪歴をチェックされるのでDランクの俺にとって身の潔白を証明するのには最適なのである。
そうして説明をすべて聞き終えたメイドさんは頬を赤らめながらも頭を下げて俺に謝罪をしてきた。
「も、申し訳ありません!頭に血が上ってしまっており、誘拐犯と勘違いしてしまいました...」
「ま、まあ誤解が解けたのなら良かったです」
目の前のメイドは先ほどまでの冷たい睨みつけるような表情から一変して温かく優しそうな表情に戻っていた。こっちの方がやっぱりメイドさんって感じがして俺も何だか安心した。しかし怒ったメイドさんっておっかないんだな...
なんとかメイドさんの誤解も解くことができ一件落着...と言いたいのだが、これからが俺たちにとって本番となる事件が繰り広げられていくことをこの時はまだ知る由もなかった。
感想 24
あなたにおすすめの小説
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
転生幼女のチートな悠々自適生活 伝統魔法を使っていたら賢者になっちゃいました
犬社護この度、書籍化が決定しました!
イラスト担当は、えすけー様です。
5月13日刊行予定です。
あらすじ
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!
竜鳴躍気が付いたら転生していました。
でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。
何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。
王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。
僕は邪魔なんだよね。分かってる。
先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。
そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。
だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。
僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。
従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。
だけど、みんな知らなかったんだ。
僕がいなくなったら困るってこと…。
帰ってきてくれって言われても、今更無理です。
2026.03.30 内容紹介一部修正
2026.04.29 内容一部修正(序盤に書いたヒロインの髪色が違うため。)
2026.05.07 思いついてしまったので完了解除
ハッカの子に転生してしまった不遇の子の話
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています