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第四章 極寒山脈の凶龍編
第79話 ワイバーンに襲われた村
しおりを挟む飛行魔法で飛び始めてから約10分後、俺たちは北方山脈の近くにあったとある廃村に到着した。そこにはたくさんの家の跡らしき残骸がそこら中に散らばっており、焼け焦げた木片や地面に残った大きな爪痕などがこの場で起こった事の悲惨さを物語っていた。
「...酷いね、これ」
「うん、そうだね」
俺もセラピィも村のあちこちを見て上手く言葉を出せずにいた。
村のあちこちには服の残骸や調理器具、果てには少しだけ原型の留めていたぬいぐるみなどのこの村での生活を想起させるようなものたちも少しばかり散乱していたのだ。これらを見ているだけで俺たちはぎゅっと心を締め付けられる。
その当時、俺がその場にいれば...と何とも言えない感情が心の中に湧いてくる。
......いや、もしもなんて考えても意味はないか。
それよりも俺に出来ることはこれから同じような被害にあう人をなくすためにこの問題を究明して解決することだ。今、自分自身に出来ることだけを真剣に考えよう。
俺は瓦礫に手を合わせて犠牲になった人たちのご冥福を祈る。
「ギギャャャャアアアア!!!!!!!」
すると突然山の方から生物の大きな鳴き声が辺りに響き渡る。声のする方向へと急いで視線を向けると、そこには4体のワイバーンが一直線にこちらへと向かってきていた。
「早速お出ましか」
「気を付けてね!」
俺は隣にいるセラピィの頭を撫でて笑顔でうなずくとワイバーンの方へと飛び出す。
ワイバーンのステータスを鑑定して見てみると、やはりドラゴンの劣等種だとはいえやはりどの個体もあのゴブリンキングと同じかそれ以上の数値を誇っている。それにゴブリンとは違って空を飛んで炎のブレスを放ってくるという非常に危険な存在だ。
「さて、初めての飛行戦闘といきますか!」
俺はボルグさんに作ってもらった魔剣を構え、飛行魔法でさらに加速して目の前のワイバーンたちに向かって突撃する。すると俺に気づいたワイバーンたちが動きを止めてこちらに向かって口から火球を放ってきた。
「はああああぁぁぁぁ!」
俺は向かってくる火球を次々と切り裂いていき、そのまま先頭にいたワイバーンの片翼を一瞬にして切り落とした。片翼を切られたワイバーンは体勢を崩して唸り声を上げながら地上へと落ちていった。
「一匹残らず討伐させてもらうぞ!」
俺は地上に落ちたワイバーンに向けて風魔法で止めを刺して残った3体に向かって剣を構える。一瞬で仲間の一体がやられたことで俺を危険だと判断したのか3体揃って一気に突撃してきた。
「「「ギギャャアア!!!!!!!」」」
物凄いスピードで突撃してくるワイバーンたちが迫ってくる。
十中八九あの攻撃を直接受けてしまうとかなりのダメージだろう。
だがしかし、当たればの話だけどね。
俺は手に持った魔剣へと一気に魔力を込める。俺の魔力が魔剣全体を包み込むように纏い始めた。そしてワイバーンたちが10mほどの目前に迫ったその瞬間、俺はまだ剣の間合いには入っていなかったのにも関わらずワイバーンたちに向かって斬撃を繰り出す。
空を切ったかに思ったその斬撃は魔剣に纏っていた魔力の刃としてそのまま前方にいるワイバーンたちに向かって目にも止まらぬ速さで飛んでいったのだ。
「?!」
その魔力刃が直撃したワイバーンたちはその体を真っ二つに切断されて呆気なく地面へと落ちていった。そうして計4体のワイバーンたちはおよそ20秒ほどで全滅する結果となった。
「ふぅ~、空中戦闘も何とかなったな」
初めての空中戦闘に確かな手ごたえを感じた俺はこの依頼に対して大きな自信を持つことが出来るようになった。実を言うと今回の主な相手となるであろうワイバーンや謎の飛行生物との戦闘はまだ慣れていない飛行魔法を行使したままの戦闘が多くなるだろうと考えており、少しばかり不安ではあったのだ。
これでその謎の飛行生物ともある程度戦えるであろう見込みが立った。
俺は地上へと降りて倒したワイバーンたちの元へと向かった。
するとそこには死体を眺めるセラピィの姿があった。
「セラピィ、どうしたんだ?」
「う~んとね、何かこのワイバーンだけちょっと変な感じするんだよ」
「...変な感じ?」
セラピィはじっとたしか俺が一番最初に倒した個体を見つめている。俺はその個体をじっくりと確かめてみる。しかしながらセラピィが言うように違和感などは全く感じなかった。セラピィは一体このワイバーンの何が変に感じているのだろうか?
「う~ん、何かこのワイバーンから本当にちょっとだけ変な感じがする...」
「何が変なのか具体的に分かる?」
「ん......気のせいかもしれないけど、ちょっと不気味な感じかな」
それはワイバーン自体が狂暴だから...っていう話ではなさそうだよな。う~ん、俺には全く分からないけれど精霊であるセラピィにしか感じられない何かがもしかしたらあるのかもしれない。
俺はとりあえず倒したワイバーンたちを全てインベントリに収納しておく。ワイバーンの肉は貴重でとても美味らしいからしっかりと回収しておかないとな。それにこのまま置いておけばワイバーンの肉につられて他の魔物がこの周辺に大勢やってくるかもしれないからな。
「よしっと、これで最後だな」
俺は最後のワイバーンをインベントリに収納し終えると山の方へと視線を向ける。山の中腹ぐらいから真っ白な雪で覆われているこの雪山のどこかではやはり何か異変が起こっているのは間違いないのだろう。
「...他のところも見てみようか」
俺はセラピィにそう告げると再び上空へと飛行魔法で飛び立つ。飛び上がってから改めて上空から村の跡を目にすると再び何とも言えない気持ちが込み上げてくる。なので少しだけ目を閉じて黙とうをしてから次の場所へと向かっていくことにした。
そうして山の方へと近付いていく中で他にも先ほどの村のようにワイバーンたちにやられたであろう村の跡をいくつか見つけたが、どれもこれも酷いものであった。
また道中に何度かワイバーンの集団にも遭遇したが、何度も戦っていく中で徐々に空中戦闘にも慣れたおかげで全く苦労することなく一瞬で討伐出来るようになっていた。やはりというか、山に近づいていくにつれて次第にワイバーンに遭遇する回数も増えてきていた。
ニーベルン村の人たちの話によるとワイバーンはもともと北方山脈のかなり高いところを縄張りとしていたらしく、ここまで降りてきているということは問題の原因は山頂付近にあるのだろう。
俺は飛びながら前方の山々へと視線を向ける。
5つの山のどれも天高くそびえ立っており、山頂付近は雲に隠れて見えない。
あのどこかでワイバーンほどの魔物にすら影響を及ぼすほどの問題が発生しているのだろう。となればここから先、予想外の何かが起こってもおかしくはない。
改めて気を引き締めて目的地へと向かうのであった。
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