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第五章 王都魔物侵攻編
第108話 ローガンスの目的
しおりを挟む道中にいたたくさんの王都へと向かって進行している魔物たちを蹴散らしながら最奥に構えているドラゴンゾンビ・イクシードとローガンスの元へと走っていた。
体力や魔力は温存しておきたいので出来る限り戦闘を避けつつ、最低限の力で魔物たちをグランドマスターと共に蹴散らしていく。出来れば目に見える範囲の魔物を全部倒して後方の冒険者や騎士団の人たちの負担を減らしておきたいとは思うが、自分の役割を全うするためにそれは出来ない。
後ろの人たちに申し訳ないと思いながらも彼らも実力者ぞろいであるため信じて託す。
みんなで王都を守るんだ、俺は一人じゃない。
そうしてついに俺とグランドマスターはドラゴンゾンビ・イクシードとローガンスがいるところに辿り着いた。そこには魔物が次々と湧き出している黒い沼のようなものとその前に構える巨大な腐竜の姿があった。
「おっ、ようやく来ましたか。お久しぶりですね、Sランク冒険者の少年」
「ローガンス...」
その腐竜の頭には例の男、ローガンスの姿があった。やつはのんびりとピクニックをしているかの如く腐竜の頭蓋骨の上でのんびりとあぐらをかいていた。
「この男が話に合った教団のローガンスか」
「おっと、そちらの方はお初にお目にかかりますが有名なお方ですね。私はマモン教大司教ローガンスと申します。以後お見知りおきを、冒険者ギルドのグランドマスターさん」
ローガンスはゆっくりと立ち上がると腐竜の頭上で綺麗なお辞儀をして見せた。どこか余裕のあるその振る舞いに少し不快感が募っていく。
「もう私のことを知っているのであれば挨拶はなしでもいいだろう?貴様の目的は何だ?」
「私の目的ですか、それは簡単なことですよ。これは試験、テストですよテスト」
「...テスト、だと?」
グランドマスターもそのように飄々と答えるローガンスに対して不快感を抱き始めたのか、少しずつ眉間にしわが寄っていっていた。
「私の生み出した実験体がどこまでの力を発揮できるのか、それを試すには王都を襲撃するのがちょうどいいじゃないですか?並みの相手では全くデータは取れませんからね。王都ならあなたがたのような実力者が多数いますし...それに私の生み出した実験体を2体も倒したことのあるあなたがいるではありませんか。あなたと戦わせればいいデータが取れるに違いないですからね」
やはりこの男は狂っている。
雪山でそのように感じていた俺の感覚は間違いではなかった。
おそらく隣で同じようにグランドマスターも思っているのであろう。
いつも温厚なグランドマスターの声色が徐々に低くなっていっていた。
「...なぜそこまでして実験をしようとする?最終的に何がしたいのだ?」
「最終的に...ですか。そんなの決まってますとも!我々マモン教団の悲願であるマモン様の再降臨ですよ!!私が完璧な超越種を生み出し制御する技術を完成させて、あの忌々しい勇者によって封印されてしまったマモン様を解き放つのですよ!!!」
「あの魔王をか...?完璧な超越種を生み出し制御する技術と魔王の復活に何のつながりがあるのだ?」
「はぁ、やはり1から10まで説明しないと理解できないか。まあいい、せっかく私の実験に付き合ってくれているのだから教えてあげようじゃないか!」
そう告げるとローガンスは腐竜の頭から地上へと降りて来た。
そうして俺たちの前に立つと嬉しそうに説明を始めた。
「現在のマモン様は勇者が神から授かった力ですべての能力が使えない、つまり封印されている。そのためにあのお方はこの世界の奥底で眠りにつかれているのだ。私たちマモン教団はどうにかマモン様を復活させることが出来ないかと密かに研究を進めていたのだが、十数年前にようやくあの勇者がマモン様に使用した能力の効果が判明したのだ。それが『対象者の全能力を使用不可能にし、ステータスを全て最低値に固定する』というものだった」
「なっ、そんな能力が...?!」
俺は勇者が神から授かったというその能力の内容に驚きを隠せなかった。流石は勇者、やはり物語の定番化のようなそんなチートスキルを所持していたのか。おそらく勇者が貰ったスキルはそれだけじゃなさそうだし...俺が貰ったものもそこそこチートだと思っていたがそれ以上だったな。
「そう、そんな忌々しい神の呪いのようなスキルがマモン様には使用されていた。どうにかして私はこのスキルの効果を打ち消せないかと長年考えてきたのだが、最近ようやく一つの仮説が思い浮かんだのだよ。それが『マモン様を別の依り代を元として復活させる』ということだ!」
「別の依り代...なるほどそういうことか」
グランドマスターと俺はローガンスの言いたいことが何となく分かってきた。だがもしそれで本当に勇者が封印した魔王を復活できるのであればここで俺たちが失敗すれば相当マズい展開になってしまう。
「さすがにあなた方でもそろそろ分かってきましたか。そうです、勇者が使用したのは指定した対象者に対して効果を発揮するスキル。ならば別の対象にマモン様の全てのお力を移すことが出来ればスキルの効果範囲外となる可能性があると!」
「だからこそ私はマモン様のお力にも耐えうるその依り代を生み出すべく超越種を生み出す実験をしているのですよ。それに加えてマモン様のお力を別の器に移すためにはある程度の制御技術がなければ実現しません。それに関しては以前、私の部下にマモン様の全てのお力を制御できるかもしれない魔眼をもつ存在の回収をお願いしておいたのですがあれ以来音沙汰なし...どうやら失敗に終わったようなので私自身が地道に制御技術を研究するしかないという訳ですよ」
マモンの力を制御できるかもしれない魔眼...
それって十中八九セレナの真性の魔眼のことか!!
つまりあの時のジェラという男はローガンスの部下で、あの誘拐はこいつの差し金だったというわけか。こいつのせいでセレナが危険な目に...そしてこのまま放っておけばまたセレナの魔眼を狙うかもしれない。
どうやら俺は絶対にこの男をこのままにしてはいけない理由がまた増えたようだ。
「あっ、そういえば言い忘れていましたがすでに5体の実験体のデータ採取に付き合っていただきありがとうございます。いや~、Sランク冒険者ほどの実力者との戦闘データを取れる機会なんて希少なので非常にありがたいですよ。おかげで私の研究が着々と目標に近づいていることが実感できました」
「......」
ローガンスは何とも思っていないのだろうがやつの言葉はいちいち俺たちの怒りを刺激する。こんなにも相容れない人間とは初めて会ったものだ。
ローガンスの話を聞きながらギルドマスターも俺も静かな怒りの炎を心に燃やしている。
「...もう十分に分かった。貴様と私たちでは思想も正義も、何もかもが相容れない。私たちは全力でマモン教の、貴様の企みを阻止させてもらう!」
「ローガンス、前回のように逃がしはしない。必ず今回ですべてを終わらせてやる!!」
「...まあ、せいぜい頑張ってください。私はこの最高傑作とあなた方との戦闘データが取れればそれで十分ですので」
ローガンスはそう言い捨てると背を向けてドラゴンゾンビ・イクシードの後方へと下がっていった。俺は逃がすわけにはいかないと全力で地面を蹴り出してやつを追いかける。するとローガンスとの間に阻むかのようにドラゴンゾンビ・イクシードが立ち塞がった。
「私の愛しい最高傑作よ。彼らを殲滅せよ」
「ボガアアアアア!!!!!!!!!!!」
ローガンスの命令を聞いているのかドラゴンゾンビ・イクシードは俺たちに向かって強烈な風圧の咆哮を放つ。この状況、そしてドラゴンゾンビ・イクシード相手では無視してローガンスを追いかけることは難しそうである。
「ユウト君!先にドラゴンゾンビの方を片付けるぞ!!」
「はいっ!!!」
そうして俺とグランドマスターはこの腐竜を倒すべく戦闘態勢に入った。
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