勇者パーティーを追放された修道女は自分だけの勇者様を見つけました。 ~私がホンモノの聖女だったので戻ってきてほしい? 残念ですがお断りです~

みどり

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「オレは騙されてたんだよ、なあ本当はお前のことを愛しているんだ」
 

 街の大広場で若い男女二人に呼び止められて、往来を行く人が何事かとこちらをじろじろと見てきます。

 困惑しながら元々お仕えしていた勇者、私はシュン様に目をやります。髪は乱れ、衣服もくたびれていて、色濃い疲労の色がありました。一時はお慕いしていた方ですから、私は顔を曇らせます。
 私を陥れたはずのセリーヌ様も、もともとは勝ち気で自身に満ち溢れていた方でしたのに、今は見る影もありません。

「なあソレイユ、お前はいつだってオレに優しかっただろう? それはオレに惚れてたんじゃないのか?」

 この世界の子供たちは、寝物語に勇者の伝説を聞かされて育ちます。世界が災厄に包まれようとしているとき、異界から勇者が現れ世界に平和をもたらすのだ、と。ですから私も目の前にいる男にお仕えするようにと教会から下知を賜ったときは舞い上がりました。けれどもそれは過去の話。

「確かにあなたのことをお慕いしていしていたことはございます。けれどもそれは昔の話です。」

 きっぱりと断ってもかつての勇者様は身を引いてはくれませんでした。

「そもそもお前が聖女だなんて知らなかったから……、オレは騙されていたんだよ」

 聖女であるからこそ、私の力が必要だ。そう聞こえる言葉に深い嘆息を漏らします。私は私。その心根は、何も変わっておりません。それにも関わらず、私の立場が変わったからといって戻ってこいとおっしゃる方にどうして従わねばならぬのでしょう。けれども、それを私がいうのは酷なことかもしれません。かつての恋心も勇者への憧憬であったのかもしれませんから。

「シュン様、お引き取りください。私は何も変わってはおりませんよ。みなしごだった、ただのソレイユから」

「ちっ……、人が、せっかく下手に出てやってんのによ」

シュン様は私の腕を突然強く掴みます。痛みに顔をしかめていると、地を這うような低い声が聞こえてまいりました。

「おい、あんたソレイユに何してんだ? 事と場合によっちゃ、ただじゃすまさないぞ」
「ユ、ユウイチ……」

いつも優しい朗らかな彼が、怒りを隠そうともせずに腕を捻りあげます。苦痛に顔を歪める彼を突き飛ばし、私を背に隠します。

「てめえが自分が勇者だと吹聴してるガキか。ひひっ、せいぜいそのソレイユに騙されたんだろう。そいつは“勇者”には誰だって体を開くクソアマだ」

 あまりの言い様に、ユウイチの服の袖をぎゅっとつかみます。ユウイチはこちらを振り返り、私を安心させるように笑いました。そしてすぐにまた彼を睨みつけます。

「ソレイユを侮辱するな。彼女はおれの大切な人だ。ソレイユを侮辱するのはオレに対する侮辱と同じ」

 彼は懐から旅券を取り出して掲げます。それは先日魔物を退治した例にと、自由都市の盟主から頂いたものでした。その家紋を見たとたん、シュンさまはたじろぎます。けれどもより動揺しているのはセリーヌ様でした。貴族であるが故に、その威光は痛いほどご存じなのでしょう。

「ユウイチ、」

「大変だったねソレイユ」

その笑顔は彼らの侮辱を全く信じていないようで、私は人目をはばからずに抱き着いてしまいました。
「ど、どうしたの? ソレイユから抱き着いてくれるなんてラッキーだな」
茶化してくれる言葉すら優しくて泣いてしまいます。

優しく背中を撫でられます。その手つきがあまりにも優しかったので私は泣いてしまいました。
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