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タイトルとかつけられない
しおりを挟む幼稚園のとき、ある男の子と約束をした。
「ゆーちゃん。大人になったらゆーちゃんに会いに行くね」
「うん、待ってる」
「だから必ず結婚しよう」
「わかった。しょーちゃん」
「だから、少しだけ、バイバイ」
ある男の子はしょーちゃんという。
幼稚園のときのことだから名前がしょーちゃんということしか覚えていなかった。
しょーちゃんはお父さんが仕事の都合で東京に行くという。お母さんとしょーちゃんはそれに着いて行き、東京で暮らすことにしたとしょーちゃんが転校した後にお母さんから聞いた。
私は未だにしょーちゃんとの約束を忘れられず、高校生にもなって彼氏が未だ1人もできていない。そんなの相手は忘れていると友人に言われても、しょーちゃんが迎えに来てくれると心のどこかで信じて待っていた。
出会いの季節。部屋から見える桜がまだ満開じゃないとき。新しい制服に包まれて、私は家から近い高校に入学でき、その式が行われる今日。私はドキドキで予定よりも30分早く起きてしまった。
「お母さんおはよー!」
「あら、早いわね。緊張してるの?」
「ちょっとしてる。だってしょーちゃんが会いに来てくれるかもしれないんだよ!」
「まだしょーちゃんとの約束覚えてるのね」
お母さんが苦笑いで私の顔を見た。
「信じてたらまた会える気がするの。それよりお腹空いたよ~」
「はいはい」
お母さんが焼きたてのパンとスクランブルエッグを出してくれた。
「いただきます」
お母さんの作るスクランブルエッグはフワフワしていて味も薄くもなく、濃くもなく、ちょうど良くて私の大好物だ。
「結莉。食べ終わったら新聞取りに行ってくれない?」
結莉(ゆうり)とは私の名前だ。亡くなったおじいちゃんがつけてくれたという。
「わかった!」
私は早起きをしたので機嫌が良いのをいいことに、お母さんは頼みごとをしてくるのだろう。でも、今の私には全然気にならない。むしろ、動きたい気分だ。ふと、テレビから聞こえた占い番組につられ、見ていると今日の運勢が蟹座のところが3位に入っていた。
「お母さん、『再会』だって…」
お母さんは食器を洗っていたため、聞こえていなかったようだ。でも、『再会』と聞くとしょーちゃんのことしか考えられなかった。
時間とか新聞とか全てなんでもよくなった。早く学校に着いて、しょーちゃんに会いたかった。
「お母さん行ってきます!」
「え、ちょっと…」
お母さんの声を全く聞かず、ご飯を急いで食べて、私は家を飛び出していた。
しょーちゃんに会える…
ずっと、ずっと会いたかった。
学校に着くと場所や何組なのかわからないはずなのに自然と自分のクラスにたどり着いた。結構早い時間なのに、1人だけ、学校に来ている人がいた。
「…しょーちゃん?」
私が呼んだ生徒は振り向いた。
「なんで俺の名前知ってんの?」
昔のしょーちゃんとは何かが違った。私の大好きなしょーちゃんではないと思った。
「ごめん、人違い。名前何?」
「俺は高野昇也(たかのしょうや)」
昇也は確かにしょーちゃんと呼んでもおかしくない。でも、違うと思ってしまった。悪い人ではなさそうだから私は普通に友達になりたいと思った。
「私は石田結莉。結莉でいいよ。」
「結莉って漢字どうやって書くの?」
「結ぶに、草冠に利益の利」
「どんな意味?」
「私は長女なんだけどね、『結』っていう漢字を最初の子供に付けるのはあまり世間には反対されちゃうらしいの。結ぶ、起承転結、これでおしまいっていう意味があって。」
昇也はうん、うんと言いながらとても真剣な目つきで私の話を聞いてくれている。
「でも結っていう漢字は結婚の結でもあるでしょ?」
「あ、確かに!」
昇也は目をキラキラさせながら同意してくれた。ちょっとそこが子供っぽくて可愛いなと思ってしまった。
「結婚は終わりじゃなくてスタートだって。そういう意味でひとつのことを結ぶのは、同時に新たなものを始めることだ。っていう意味で結にしたんだって。」
「莉は?」
「莉は根強い努力は自らを成長させ、周囲の問題解決にて自らに実りをもたらす。簡単に言えば周囲への援助という意味で使われるみたい。その2つの文字をくっつけて、結莉。」
「深い意味の名前だな。結莉のじいちゃんいいじいちゃんだな!」
私もおじいちゃんが大好きだった。だからおじいちゃんのことを褒めてもらえて、とても嬉しかった。
「うん。私もそう思う」
「莉ってさ、ジャスミンだよな」
「え?」
「ジャスミンって茉莉花って書くんだよ」
そう言って黒板に漢字を書き始めた。昇也の字は独特でありながらも、綺麗な字をしていた。
「俺、ジャスミンの花好きなんだ。だから、莉って付くとジャスミンを思い出す」
「そうなんだ」
「俺、好きだよ。結莉の名前」
私自身に好きと言った訳では無いのに不覚にもドキッとしてしまった。
「ありがとう」
照れを隠しながらだったからちょっと不自然だったかもしれない。ちょうどいいタイミングでクラスに人が入ってきたため、私は黒板の文字を消して、自分の席を確認して座った。
「あ、結莉!」
名前を呼ばれて振り返ると、小学校から一緒でずっと仲良かった平塚愛海(ひらつかまなみ)が声をかけてきた。
「また同じクラスなの!?」
「そうみたい!すごい嬉しい!」
「私も!また愛海と同じなら楽しいや!」
自分達だけの世界に入り込んで騒いでたため、浮いてたかもしれない。だけどそれを気にする以上に同じクラスというのが嬉しかった。
「結莉ちゃん?」
突然ある女の子が声をかけてきた。どこがで会ったこともあるような気がしたが、なかなか思い出せない。
「私、美優だよ!」
思い出した。小学校が同じだったんだけど中学校に入ったら美優は私立の中学校に行ったため、学校が別々になってしまったのだった。別々になる前まではクラスが一緒のことが多かったせいか、結構仲が良かった方だと思う。
「美優ちゃん久しぶりだね!元気そうでよかった」
美優ちゃんは可愛らしかったのに今では大人っぽくなっていて、男子からも注目を浴びていた。再会とはこのことだったのかもしれないと美優ちゃんと再会して、嬉しい反面しょーちゃんとではなかったという悲しい気持ちもあり、複雑になった。
「結莉の友達?」
昇也が男の子1人を連れてわたしの隣に来た。
「こいつ、俺と同じ中学だった友達」
と、隣にいた男の子を紹介してくれた。
「坂本です、よろしく」
坂本くんはごく普通の男の子だった。
目立つタイプでも、静かでもなく、しゃべってみると少し面白い人だった。
「よろしくね」
私たちはそれから女子3人、男子2人のグループができて、ほぼ毎日一緒に行動をしていた。
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