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第一章

王太子と罰

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孤児院に着くと、いつものように施設長に挨拶をしようとしたが、今日は施設長が電話中だ。


「立ち退き…? 2週間後ってどういうことですか…?」


施設長の部屋を目前に引き返そうとしたが、去り際に施設長が話している内容を耳にしてしまった。


「身寄りのない子供たちが住んでいる場所と言うことをわかって、そんなことを言っているんですか?!」


施設長の声はどんどん大きくなっていき、内容が鮮明になっていく。


「一体なぜそんなことになったんですか。え…王室がこの土地を買収…?」


私は、王室と言う言葉に心臓を射抜かれた。


昨日、花屋の社長が銀行に呼び出されたのも、孤児院の突然の土地の買収も、すべて王室が仕組んだことだ。


非力な私が起こした身勝手な行動で王室を敵に回し、王室は名誉にかけて、私の大切な人たちの人生を狂わせるつもりなんだ。


そんなこと、許されないのに。


王室には、国民を愛する精神など存在しないのだと、改めて思い知らされた。


私は、その日1日、フラワーアレンジメントを行う子供達の屈託のない笑顔に触れた。この活動も、花屋の協力がなければ出来なかったものだ。


何者でもない私を信頼し、やりがいのある仕事を任せてくれている。


孤児院と花屋は私にとって、かけがえのない心の拠り所だ。その二つの場所は、絶対に守りたい。そのためにできることは、一つしかない。





私は、アパートで待機する王室の職員に、王室に戻ることを伝えた。



「迎えに来たよ。小春ちゃん」


「瑛斗王子…。あの私、今からまた王室に戻ろうとしていました。実は私、珀斗王太子と…」


「うん、兄貴から聞いたよ。でも、小春ちゃんは結婚したくないんでしょ?」


「え…」


瑛斗王子は、すべてのことを知っているようだった。


知った上で、なぜ私に会いに来てくれたのか。私は理由がわからなかった。


「兄貴の結婚を阻止するためには、僕と結婚するしかないでしょ?」


「いえ、あなたと結婚するつもりはありませんが…」



「兄貴と対等に戦えるのは僕だけだよ」



「そうかもしれませんが、もう決めたんです。珀斗王太子と結婚します。」

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