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第一章
支配者と札束
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翌日から一週間、王太子は不在となった。
広い宮殿にひとり取り残された私は、日中の講義を淡々とこなしていた。
王太子と私の部屋は、同じ建物の中にある。建物は、4階建で、コの字の構造になっていて、部屋数は大小合わせて30以上あるそうだ。
王太子と私の部屋の位置関係は、私が3階西側の奥で、王太子は4階南側の広い部屋だ。
ここに住むのは、王族の中でも王位継承権を持つ人物とその正妻されており、今は珀斗王太子が住む場所となっている。
私の部屋からは王太子の部屋を見ることは出来ないが、出入りする車列や庭の様子が見える場所だ。
車列が多く並ぶのは、王太子が出入りするときで、現在は他国との関係悪化により、開戦も噂されており軍としての仕事が多いと聞いたことがある。
1人、屋内で過ごしていると、担当官から、突然の伝言をもらった。
「国王の命令で、嬉野様に新たな警備をつけることになったと連絡がありました。本日、時間をとってご挨拶させます。」
「はい、警備の方が増えるということですね?」
これまでも5名程度の警備をつけてもらっていたが、話す機会もなかなかないので、挨拶にきてもらったことはなかった。
しかも、国王の命令と聞き、まだ国王に会っていない状況で、結婚を承認したということなのかと、不安に感じた。
しばらくすると、応接室に連れられ、待機するよう指示が出された。
まだ現時点で私のことを知らない人に対し、どのように接するべきなのか考えながら、新しい警備担当者を待った。
「失礼します。新しい警備担当者をお連れしました」
「恭平?!」
「小春…」
何も聞かされていなかった私は、幼馴染の登場にただただ驚いた。
対して、恭平は落ち着いていて、少し疲れている印象すらあった。
担当官も一時退室すると、私たちは応接室に2人きりになった。
「小春…。小春の生い立ちも結婚の話も全部聞いた。何も知らなくてごめん」
「謝らないでいいよ。私もこんなことになるなんて…」
私は幼馴染との久しぶりの会話に感極まってしまい、うまく言葉が出なかった。
恭平に心配をかけまいと、涙が出ないように必死に感情を抑えた。
「俺、急に王族の警護の部署に異動命令が出て、一昨日ここに来たら、国王から直接任務を聞かされたんだ。幼馴染だから、相談役としても適任だろうって…」
「そうだったんだ。ごめんね私のせいで部署異動なんて…」
「小春のせいじゃない。それより、瑛斗王子からも色々と指示されてることがあるんだ。」
「瑛斗王子が?」
「小春の働いていた花屋と俺たちが育った施設には、もう圧力はかかっていない。みんな元気にしてる。」
「よかった…」
一番気にしていた王室から花屋と施設への圧力がなくなっていたと聞き、安堵した。
きっと瑛斗王太子が、協力してくれたのだろう。
「それと、これ。スマホを渡して欲しいって言われた。俺の連絡先も入れてるし、花屋と施設の番号も必要なら教えるからいつでも言ってくれ。」
「ありがとう」
「珀斗王太子には見つからないように、隠しておいてほしい」
「うん、そうするね」
スマホが手に入ったことで、外部との連絡ができるようになり、これで少しは外の世界が知れる。
「小春、珀斗王太子との結婚、無理矢理だったんじゃないのか?」
「ちゃんと自分で決めたよ」
「そんな顔で。嘘つくな」
私は恭平の前で嘘をつくことが多かった。
これまでは誤魔化せていたのに、今の自分の状況を思うと、隠し切れないほどに苦労が出てしまったようだ。
恭平は、私の横に座り、私を抱きしめて頭を撫でた。
「必ず助けてやるから、今は少し我慢してくれ」
私の耳元でそう言った恭平は、私からさっと離れた。
担当官が応接室に戻ると、恭平は退室し、私もスマホを隠しながら自室へと戻った。
広い宮殿にひとり取り残された私は、日中の講義を淡々とこなしていた。
王太子と私の部屋は、同じ建物の中にある。建物は、4階建で、コの字の構造になっていて、部屋数は大小合わせて30以上あるそうだ。
王太子と私の部屋の位置関係は、私が3階西側の奥で、王太子は4階南側の広い部屋だ。
ここに住むのは、王族の中でも王位継承権を持つ人物とその正妻されており、今は珀斗王太子が住む場所となっている。
私の部屋からは王太子の部屋を見ることは出来ないが、出入りする車列や庭の様子が見える場所だ。
車列が多く並ぶのは、王太子が出入りするときで、現在は他国との関係悪化により、開戦も噂されており軍としての仕事が多いと聞いたことがある。
1人、屋内で過ごしていると、担当官から、突然の伝言をもらった。
「国王の命令で、嬉野様に新たな警備をつけることになったと連絡がありました。本日、時間をとってご挨拶させます。」
「はい、警備の方が増えるということですね?」
これまでも5名程度の警備をつけてもらっていたが、話す機会もなかなかないので、挨拶にきてもらったことはなかった。
しかも、国王の命令と聞き、まだ国王に会っていない状況で、結婚を承認したということなのかと、不安に感じた。
しばらくすると、応接室に連れられ、待機するよう指示が出された。
まだ現時点で私のことを知らない人に対し、どのように接するべきなのか考えながら、新しい警備担当者を待った。
「失礼します。新しい警備担当者をお連れしました」
「恭平?!」
「小春…」
何も聞かされていなかった私は、幼馴染の登場にただただ驚いた。
対して、恭平は落ち着いていて、少し疲れている印象すらあった。
担当官も一時退室すると、私たちは応接室に2人きりになった。
「小春…。小春の生い立ちも結婚の話も全部聞いた。何も知らなくてごめん」
「謝らないでいいよ。私もこんなことになるなんて…」
私は幼馴染との久しぶりの会話に感極まってしまい、うまく言葉が出なかった。
恭平に心配をかけまいと、涙が出ないように必死に感情を抑えた。
「俺、急に王族の警護の部署に異動命令が出て、一昨日ここに来たら、国王から直接任務を聞かされたんだ。幼馴染だから、相談役としても適任だろうって…」
「そうだったんだ。ごめんね私のせいで部署異動なんて…」
「小春のせいじゃない。それより、瑛斗王子からも色々と指示されてることがあるんだ。」
「瑛斗王子が?」
「小春の働いていた花屋と俺たちが育った施設には、もう圧力はかかっていない。みんな元気にしてる。」
「よかった…」
一番気にしていた王室から花屋と施設への圧力がなくなっていたと聞き、安堵した。
きっと瑛斗王太子が、協力してくれたのだろう。
「それと、これ。スマホを渡して欲しいって言われた。俺の連絡先も入れてるし、花屋と施設の番号も必要なら教えるからいつでも言ってくれ。」
「ありがとう」
「珀斗王太子には見つからないように、隠しておいてほしい」
「うん、そうするね」
スマホが手に入ったことで、外部との連絡ができるようになり、これで少しは外の世界が知れる。
「小春、珀斗王太子との結婚、無理矢理だったんじゃないのか?」
「ちゃんと自分で決めたよ」
「そんな顔で。嘘つくな」
私は恭平の前で嘘をつくことが多かった。
これまでは誤魔化せていたのに、今の自分の状況を思うと、隠し切れないほどに苦労が出てしまったようだ。
恭平は、私の横に座り、私を抱きしめて頭を撫でた。
「必ず助けてやるから、今は少し我慢してくれ」
私の耳元でそう言った恭平は、私からさっと離れた。
担当官が応接室に戻ると、恭平は退室し、私もスマホを隠しながら自室へと戻った。
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