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第3章 少女は願う
11話 少年は何も知らない②
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その後も特に変なイベントもなく、放課後になった。
ホームルームは、始まった瞬間に紘一が「連絡事項はないな? じゃ、気を付けて帰れよ!」と言って秒で終わらせたため、他クラスの連中とはかなり早い時間に下校することができているようで、クラスメイト達はかなり喜んでいた。
そんな中、楓はというと、怜に勉強を教える約束をした記憶があったので、こうして律義に教室に残っている。
「えっと……あれ、怜は?」
「どうした?」
「修斗か……いや、怜に勉強を教える約束をしたんだけど、本人がいないんだよ」
「何か予定があるんじゃないか?」
「あいつのほうから誘ってきたんだが……」
怜はめったに約束を破らない。他はどうか知らないが、少なくとも楓との約束は反故にしたことはなかった。
「どうした?」
「中井。怜を知らないか?」
「琴城なら、さっき誰かに呼ばれて屋上行ったぞ」
「屋上? ……あそこって入れたっけ?」
確か、この学校の屋上に通じる扉の鍵は、安全上の問題から卒業アルバムの写真撮影のような限られた場合でないと貸し出されないはずだ。それだけの事情なのだろうか。
「新条、屋上の鍵はめったに貸し出されないが……それはあまり意味がないんだ」
「……というと?」
「屋上の扉、鍵自体が壊れているんだ」
「……はあ!?」
つまり、鍵の貸し出しが許可されることはめったにないが、そもそも鍵自体が壊れているので、実質誰でもいつでも入れる状態であるということか。
「何でそれ、先生が気づかないんだよ?」
「卒アルの撮影とかでクラス全体で屋上に行くことになったとき、先生の目の前で鍵を開けるやつがいかにも鍵が正常に動作しているかのように操作するから、先生が気づかないんだよ」
「俺、中学の頃はそんなの知らなかったんだけど」
楓は、鍵が壊れているなんて夢にも思わなかった。扉が古いなとは思っていたのだが、まさかそこまでとは思っていなかったのだ。
「で、怜は誰でも入れる屋上に行ったと」
「ああ」
「……困ったな」
「何が?」
「俺、怜に勉強を教えてくれって言われたんだよ」
「今日か?」
「今日だ」
楓がずっと待っていて怜が帰ってこなかったら、楓はただ時間を無駄にしただけになる。反対に楓がもし帰ったら、怜の約束を破ったと彼女に責められるかもしれない。
「これ、俺は待つべきなのか……?」
「琴城のそれがすぐ終わる用事なら、待ったほうがいいんじゃないか?」
「屋上って時点ですぐ終わる用事なわけがないんだよ」
年頃の男子高校生が女子を呼び出す。しかも屋上だ。こういう状況ですることは大体決まっている。
「告白だろうな」
「告白だろうね」
楓と修斗の言葉が被る。二人とも同じことを考えていたようだ。
「でも、楓はいいのか?」
「何が?」
「もしかしたら、琴城が誰かと付き合うかもしれないんだぞ」
「……何でそれを俺に言うんだよ」
「いや、お前は琴城が誰かと付き合うことに何も感じないのか?」
「何も感じないのかと言われても……まあ、怜との距離は見直さざるを得ないよな」
「というと?」
「怜と接する時間や距離感が遠くなると思う」
それは重々承知している。怜が誰かと付き合ったら、楓は今までのように近い距離で怜と関わることができなくなるということは、前から分かっていたことだ。
ひょっとしたら、関わることすらできなくなるかもしれない。
「お前はそれでもいいのか?」
「……別に、怜が自分から望んでやっている個人的な付き合いに俺が何かとやかく言うことはできない。せいぜい警告を飛ばすことくらいか」
「……そうか」
そう言うと、修斗は黙りこくって何かを考えるかのような仕草をしだした。
10秒ほど経つと、彼は何かを決心したかのような目で楓に向き直る。
「楓」
「……なんだよ」
「現場を見に行こう」
「は?」
楓は、修斗の言っていることがよくわからなかった。
そんな彼に、修斗はもう一度、今度ははっきりと言う。
「告白の現場を見に、俺らも屋上に行ってみよう」
ホームルームは、始まった瞬間に紘一が「連絡事項はないな? じゃ、気を付けて帰れよ!」と言って秒で終わらせたため、他クラスの連中とはかなり早い時間に下校することができているようで、クラスメイト達はかなり喜んでいた。
そんな中、楓はというと、怜に勉強を教える約束をした記憶があったので、こうして律義に教室に残っている。
「えっと……あれ、怜は?」
「どうした?」
「修斗か……いや、怜に勉強を教える約束をしたんだけど、本人がいないんだよ」
「何か予定があるんじゃないか?」
「あいつのほうから誘ってきたんだが……」
怜はめったに約束を破らない。他はどうか知らないが、少なくとも楓との約束は反故にしたことはなかった。
「どうした?」
「中井。怜を知らないか?」
「琴城なら、さっき誰かに呼ばれて屋上行ったぞ」
「屋上? ……あそこって入れたっけ?」
確か、この学校の屋上に通じる扉の鍵は、安全上の問題から卒業アルバムの写真撮影のような限られた場合でないと貸し出されないはずだ。それだけの事情なのだろうか。
「新条、屋上の鍵はめったに貸し出されないが……それはあまり意味がないんだ」
「……というと?」
「屋上の扉、鍵自体が壊れているんだ」
「……はあ!?」
つまり、鍵の貸し出しが許可されることはめったにないが、そもそも鍵自体が壊れているので、実質誰でもいつでも入れる状態であるということか。
「何でそれ、先生が気づかないんだよ?」
「卒アルの撮影とかでクラス全体で屋上に行くことになったとき、先生の目の前で鍵を開けるやつがいかにも鍵が正常に動作しているかのように操作するから、先生が気づかないんだよ」
「俺、中学の頃はそんなの知らなかったんだけど」
楓は、鍵が壊れているなんて夢にも思わなかった。扉が古いなとは思っていたのだが、まさかそこまでとは思っていなかったのだ。
「で、怜は誰でも入れる屋上に行ったと」
「ああ」
「……困ったな」
「何が?」
「俺、怜に勉強を教えてくれって言われたんだよ」
「今日か?」
「今日だ」
楓がずっと待っていて怜が帰ってこなかったら、楓はただ時間を無駄にしただけになる。反対に楓がもし帰ったら、怜の約束を破ったと彼女に責められるかもしれない。
「これ、俺は待つべきなのか……?」
「琴城のそれがすぐ終わる用事なら、待ったほうがいいんじゃないか?」
「屋上って時点ですぐ終わる用事なわけがないんだよ」
年頃の男子高校生が女子を呼び出す。しかも屋上だ。こういう状況ですることは大体決まっている。
「告白だろうな」
「告白だろうね」
楓と修斗の言葉が被る。二人とも同じことを考えていたようだ。
「でも、楓はいいのか?」
「何が?」
「もしかしたら、琴城が誰かと付き合うかもしれないんだぞ」
「……何でそれを俺に言うんだよ」
「いや、お前は琴城が誰かと付き合うことに何も感じないのか?」
「何も感じないのかと言われても……まあ、怜との距離は見直さざるを得ないよな」
「というと?」
「怜と接する時間や距離感が遠くなると思う」
それは重々承知している。怜が誰かと付き合ったら、楓は今までのように近い距離で怜と関わることができなくなるということは、前から分かっていたことだ。
ひょっとしたら、関わることすらできなくなるかもしれない。
「お前はそれでもいいのか?」
「……別に、怜が自分から望んでやっている個人的な付き合いに俺が何かとやかく言うことはできない。せいぜい警告を飛ばすことくらいか」
「……そうか」
そう言うと、修斗は黙りこくって何かを考えるかのような仕草をしだした。
10秒ほど経つと、彼は何かを決心したかのような目で楓に向き直る。
「楓」
「……なんだよ」
「現場を見に行こう」
「は?」
楓は、修斗の言っていることがよくわからなかった。
そんな彼に、修斗はもう一度、今度ははっきりと言う。
「告白の現場を見に、俺らも屋上に行ってみよう」
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