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紫外線はきついよ
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*** ペンギンズグラス ***
ある冬の日、昨夜からちらちらと雪が降りだして、朝には山がうっすらと白く染まっていました。
ズルッ、ズルッ、ズルッ。
低く響く音を立てながら、傘をさしたペンギンがおめがね屋に近づいて来ました。南極に住むペピイです。南極は夏ですから今は子育てのない時期で、団体旅行にまじってこの国へ来たようです。けれどペピイの目的はバカンスではなく、おめがね屋がお目当てでした。
南極では毎年オゾンホールができて、紫外線の強くなる時期があります。そうでなくても、年々日差しが強くなってきているとペピイは感じていました。その紫外線を防ぐためにサングラスが欲しいと考えていたのです。日よけの傘は持っていますが、傘は海に潜るときに使えません。サングラスも普通ならはずれてしまいます。そんな時にペピイは、南極旅行に来ていたカワウソからおめがね屋の話を聞いたのです。カワウソは、おめがね屋なら希望にピッタリのメガネを作ってくれるし、水の中へ入っても絶対にはずれないメガネだよと、自分のメガネをさすりながら自慢げに話していました。ペピイはこれはいいことを聞いたと思い、すぐに友達のパピイとポピイに相談しました。けれども、三人のお金を集めても一人分の旅費しか出せませんでした。それでペピイは代表として一人で買いに来たというわけです。今日はその旅行の最終日で自由行動の日でしたから、雪にもかかわらず目黒山にやってきました。といっても、彼は雪道に慣れていますから平気ですが。
「ホッホッホッ、これはまた遠い国からようこそいらっしゃいました」
店主は珍しいお客が来たのでごきげんです。
「ご希望はよくわかりました。お任せください。当店はおめがね屋です。あなたのご希望にピッタリのメガネをお作りいたしましょう。ただし三本作りますので、お時間は三倍かかります。どうぞ椅子に掛けてお待ちください」
そう言って店主が椅子をすすめたのですが、残念なことにペピイは座ることができません。それでコパンに硬めのクッションを出してもらい、それを股の間に入れて挟むようにして腰を下ろしてもらうことにしました。
店主はさっそくメガネ作りに取り掛かりました。ペピイの南極での話を聞きながら、エプロンのポケットに手を入れてメガネ粉をこねます。ところがペピイの話は店主の想像以上で、南極の冬は厳しくペンギン達の子育ても大変なものでした。これはかなり丈夫ではずれにくいものにしないといけません。店主はいつもより念入りにこねました。そして十分ほどこねたあとポケットからパンダネを取り出すと、いつものように言いました。
「当店はメガネ屋ではございません。おめがね屋です。どんなご注文にもお応えいたします。このパンダネをオーブンに入れたら三分お待ちください。あなたのおめがねにかなったメガネの出来上がりです」
ペピイは丸っこいパンダネを見てそれがメガネになるとは思えませんでした。さらにオーブンに入れて焼いたら、どう見てもパンです。彼は三分間じっとオーブンを見ていましたが、中で膨らむ様子もなく、パンの焼けている匂いもありません。ところがチンと音がして店主が取り出すと、まぎれもなく黒くピカピカとしたサングラスが現れました。それもペピイにピッタリで、首をブルブルと振ってもずれません。
「こりゃあ驚いた。ピッタリでしかもかっこいい」
店主はすぐに次のメガネを作り始めました。希望はペピイと同じですから、同じように作ります。それでも個性がありますので、友達の特徴や性格を聞きながらもう二つ作りました。パピイとポピイはペピイが子供のころからの仲良しです。ですから店主はペピイの話を聞いてピッタリのメガネをイメージできました。そのためにペピイのメガネとは少しずつ形が変わっています。
ペピイは鼻歌を歌いながら出来上がりを待ちました。そして一本できるたびに確認しましたが、どちらもイメージにピッタリで気に入ったようです。
「うん、これならパピイもポピイも絶対に気に入るよ。よかった」
二本のメガネは壊れないように箱に入れ、さらにバッグに入れて落とさないように傘の柄にくくりつけました。
「ああ、帰りの飛行機に間に合うように行かなくちゃ」
ペピイはサングラスを掛けたまま、傘をさして帰っていきました。
「友達もあのサングラスを気に入ってくれるといいね」
コパンが少し気になってそう言うと、店主は自信を持って言いました。
「ホッホッホッ、もちろん気に入りますよ。ここには来ていませんが充分にイメージできましたから。それに、何といっても仲のいいことが伝わってきましたからね」
しばらくして南極から郵便が届きました。もちろんペピイからで、中には写真が一枚だけ入っていました。ペピイが友達と一緒に並んで写っています。手紙はありませんが、その写真からサングラスがピッタリで気に入ってもらえたことがコパンにも伝わってきました。
ある冬の日、昨夜からちらちらと雪が降りだして、朝には山がうっすらと白く染まっていました。
ズルッ、ズルッ、ズルッ。
低く響く音を立てながら、傘をさしたペンギンがおめがね屋に近づいて来ました。南極に住むペピイです。南極は夏ですから今は子育てのない時期で、団体旅行にまじってこの国へ来たようです。けれどペピイの目的はバカンスではなく、おめがね屋がお目当てでした。
南極では毎年オゾンホールができて、紫外線の強くなる時期があります。そうでなくても、年々日差しが強くなってきているとペピイは感じていました。その紫外線を防ぐためにサングラスが欲しいと考えていたのです。日よけの傘は持っていますが、傘は海に潜るときに使えません。サングラスも普通ならはずれてしまいます。そんな時にペピイは、南極旅行に来ていたカワウソからおめがね屋の話を聞いたのです。カワウソは、おめがね屋なら希望にピッタリのメガネを作ってくれるし、水の中へ入っても絶対にはずれないメガネだよと、自分のメガネをさすりながら自慢げに話していました。ペピイはこれはいいことを聞いたと思い、すぐに友達のパピイとポピイに相談しました。けれども、三人のお金を集めても一人分の旅費しか出せませんでした。それでペピイは代表として一人で買いに来たというわけです。今日はその旅行の最終日で自由行動の日でしたから、雪にもかかわらず目黒山にやってきました。といっても、彼は雪道に慣れていますから平気ですが。
「ホッホッホッ、これはまた遠い国からようこそいらっしゃいました」
店主は珍しいお客が来たのでごきげんです。
「ご希望はよくわかりました。お任せください。当店はおめがね屋です。あなたのご希望にピッタリのメガネをお作りいたしましょう。ただし三本作りますので、お時間は三倍かかります。どうぞ椅子に掛けてお待ちください」
そう言って店主が椅子をすすめたのですが、残念なことにペピイは座ることができません。それでコパンに硬めのクッションを出してもらい、それを股の間に入れて挟むようにして腰を下ろしてもらうことにしました。
店主はさっそくメガネ作りに取り掛かりました。ペピイの南極での話を聞きながら、エプロンのポケットに手を入れてメガネ粉をこねます。ところがペピイの話は店主の想像以上で、南極の冬は厳しくペンギン達の子育ても大変なものでした。これはかなり丈夫ではずれにくいものにしないといけません。店主はいつもより念入りにこねました。そして十分ほどこねたあとポケットからパンダネを取り出すと、いつものように言いました。
「当店はメガネ屋ではございません。おめがね屋です。どんなご注文にもお応えいたします。このパンダネをオーブンに入れたら三分お待ちください。あなたのおめがねにかなったメガネの出来上がりです」
ペピイは丸っこいパンダネを見てそれがメガネになるとは思えませんでした。さらにオーブンに入れて焼いたら、どう見てもパンです。彼は三分間じっとオーブンを見ていましたが、中で膨らむ様子もなく、パンの焼けている匂いもありません。ところがチンと音がして店主が取り出すと、まぎれもなく黒くピカピカとしたサングラスが現れました。それもペピイにピッタリで、首をブルブルと振ってもずれません。
「こりゃあ驚いた。ピッタリでしかもかっこいい」
店主はすぐに次のメガネを作り始めました。希望はペピイと同じですから、同じように作ります。それでも個性がありますので、友達の特徴や性格を聞きながらもう二つ作りました。パピイとポピイはペピイが子供のころからの仲良しです。ですから店主はペピイの話を聞いてピッタリのメガネをイメージできました。そのためにペピイのメガネとは少しずつ形が変わっています。
ペピイは鼻歌を歌いながら出来上がりを待ちました。そして一本できるたびに確認しましたが、どちらもイメージにピッタリで気に入ったようです。
「うん、これならパピイもポピイも絶対に気に入るよ。よかった」
二本のメガネは壊れないように箱に入れ、さらにバッグに入れて落とさないように傘の柄にくくりつけました。
「ああ、帰りの飛行機に間に合うように行かなくちゃ」
ペピイはサングラスを掛けたまま、傘をさして帰っていきました。
「友達もあのサングラスを気に入ってくれるといいね」
コパンが少し気になってそう言うと、店主は自信を持って言いました。
「ホッホッホッ、もちろん気に入りますよ。ここには来ていませんが充分にイメージできましたから。それに、何といっても仲のいいことが伝わってきましたからね」
しばらくして南極から郵便が届きました。もちろんペピイからで、中には写真が一枚だけ入っていました。ペピイが友達と一緒に並んで写っています。手紙はありませんが、その写真からサングラスがピッタリで気に入ってもらえたことがコパンにも伝わってきました。
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