14 / 14
ハナコの鼻は
しおりを挟む
*** コパンのうどん ***
お昼どきに、コパンの作るうどんのいい匂いに誘われて黒豚のハナコがお店に入ってきました。
「こ、こんにちはなのね。ブッ、いい匂いなのね。こ、これはうどんね。私にも食べさせてほしいのね、ブッ」
店主もコパンもうどん屋と勘違いされたたようで驚きました。
「ホッホッホッ、残念ながら当店はうどん屋ではございません。おめがね屋です。ご希望に合わせて、おめがねにかなったピッタリのメガネをお作りいたします」
店主がそう言ってもハナコはメガネに興味がないようです。
「ブッ、メガネは食べられないのね。歩き回ってとってもおなかが空いているのね。もう、うどんを食べないと動けないのね」
どうやらうどんを食べるまでハナコは帰らないようです。店主はコパンに、私の分を半分にして彼女に出してあげるよう言いました。
「あ、ありがとうね」
ハナコはちゃっかりと椅子に座り、うどんが出てくると一口で食べてしまいました。
「う、うまいのね。こ、こんなうまいうどんは初めてなのね」
コパンはほめられて嬉しそうです。食べて落ち着いたハナコは話し始めました。
「これはどうも失礼しました、ブッ。わたしはハナコというのね。このあたりの山にトリュフを探しに来たのね。でもいい匂いがして、たどって来たらこのうどん屋だったのね」
「ホッホッホッ、うどん屋ではございません。おめがね屋です。それに、この山は竹林が多くトリュフは採れませんよ」
少し食べてお腹が落ち着いたハナコはうなずきながら、何かひらめいたようです。
「そ、そうなのね。わたし最近鼻が利かなくなって困っているのね。トリュフは埋まっていて鼻が利かないとだめなのね。でも、見ただけで埋まっているトリュフが見えるメガネがあればいいのね。ブヒヒヒヒ」
ハナコは冗談のつもりで言ったようですが、店主は彼女の希望だと思いました。コパンは、遠くからここのうどんの匂いがわかったのだから充分鼻が利く、と思っています。
「ホッホッホッ、もしもご希望であれば、トリュフを見つけられるメガネをお作りすることもできますが、いかがでしょう。ただしとても難しいご注文になりますので、お高くはなりますが」
ハナコはしばらく考えて答えました。
「そうね、お金があれば作って欲しいのね。でも全然ないのね。それにこの辺りにはトリュフはなさそうだし。でも、トリュフの代わりにいいものを見つけたのね。ここのうどんはとってもおいしいのね。ぜひ作り方を教えてほしいのね」
彼女はそう言って椅子から降りると、床に手をついて頭を下げ、お願いしました。額はつけられませんが土下座のようです。店主は困りました。なにせうどんを作っているのはコパンですし、うどんは粉をこねる練習で作らせているだけです。コパンのほうを見ると、ほめられてうれしいからニコニコしています。店主は教えるまで彼女は帰らないだろうと思いました。
「ホッホッホッ、ここはうどん屋ではありませんが、どうやらうどんがあなたのおめがねにかなったようです。わかりました、教えましょう。ただしうどんを作るのは私ではなく、弟子のコパンです。ええ、今日はもう店じまいをしますので、奥でゆっくりと教わっていってください。材料も自由に使っていいですよ」
誰かに教えることもコパンの練習になると店主は考えたのです。ハナコは喜びました。コパンも大喜びです。
店主はお店を閉め、夕食用の笹を取りに出かけました。いないほうがコパンも教えやすいと思いましたから。コパンは初めて誰かに教えるので緊張したようですが、うどん作りに自信を持ち始めていましたので、だんだん面白くなったようです。ハナコもまじめにコパンの言うことを聞き、うどんをこね、汁を作りました。
夕方に笹を担いで店主が帰ってくると、ハナコはもういませんでした。コパンは疲れたのか、テーブルのところで寝ていました。二人が一生懸命だったことはテーブルにあるうどんの山でわかります。店主はコパンを起こさないように抱いてベッドに寝かせました。
ロッキングチェアに座り、ゆらゆら揺れながら、店主は一人で夕食の笹を食べました。この店を作ってから初めての一人夕食でした。ハナコの鼻はうどんを作るには充分だと思っています。彼女ならおいしいうどんが作れるはずです。店主はゆっくりと笹を食べながら、そろそろコパンにメガネを作ってあげようと思いました。
お昼どきに、コパンの作るうどんのいい匂いに誘われて黒豚のハナコがお店に入ってきました。
「こ、こんにちはなのね。ブッ、いい匂いなのね。こ、これはうどんね。私にも食べさせてほしいのね、ブッ」
店主もコパンもうどん屋と勘違いされたたようで驚きました。
「ホッホッホッ、残念ながら当店はうどん屋ではございません。おめがね屋です。ご希望に合わせて、おめがねにかなったピッタリのメガネをお作りいたします」
店主がそう言ってもハナコはメガネに興味がないようです。
「ブッ、メガネは食べられないのね。歩き回ってとってもおなかが空いているのね。もう、うどんを食べないと動けないのね」
どうやらうどんを食べるまでハナコは帰らないようです。店主はコパンに、私の分を半分にして彼女に出してあげるよう言いました。
「あ、ありがとうね」
ハナコはちゃっかりと椅子に座り、うどんが出てくると一口で食べてしまいました。
「う、うまいのね。こ、こんなうまいうどんは初めてなのね」
コパンはほめられて嬉しそうです。食べて落ち着いたハナコは話し始めました。
「これはどうも失礼しました、ブッ。わたしはハナコというのね。このあたりの山にトリュフを探しに来たのね。でもいい匂いがして、たどって来たらこのうどん屋だったのね」
「ホッホッホッ、うどん屋ではございません。おめがね屋です。それに、この山は竹林が多くトリュフは採れませんよ」
少し食べてお腹が落ち着いたハナコはうなずきながら、何かひらめいたようです。
「そ、そうなのね。わたし最近鼻が利かなくなって困っているのね。トリュフは埋まっていて鼻が利かないとだめなのね。でも、見ただけで埋まっているトリュフが見えるメガネがあればいいのね。ブヒヒヒヒ」
ハナコは冗談のつもりで言ったようですが、店主は彼女の希望だと思いました。コパンは、遠くからここのうどんの匂いがわかったのだから充分鼻が利く、と思っています。
「ホッホッホッ、もしもご希望であれば、トリュフを見つけられるメガネをお作りすることもできますが、いかがでしょう。ただしとても難しいご注文になりますので、お高くはなりますが」
ハナコはしばらく考えて答えました。
「そうね、お金があれば作って欲しいのね。でも全然ないのね。それにこの辺りにはトリュフはなさそうだし。でも、トリュフの代わりにいいものを見つけたのね。ここのうどんはとってもおいしいのね。ぜひ作り方を教えてほしいのね」
彼女はそう言って椅子から降りると、床に手をついて頭を下げ、お願いしました。額はつけられませんが土下座のようです。店主は困りました。なにせうどんを作っているのはコパンですし、うどんは粉をこねる練習で作らせているだけです。コパンのほうを見ると、ほめられてうれしいからニコニコしています。店主は教えるまで彼女は帰らないだろうと思いました。
「ホッホッホッ、ここはうどん屋ではありませんが、どうやらうどんがあなたのおめがねにかなったようです。わかりました、教えましょう。ただしうどんを作るのは私ではなく、弟子のコパンです。ええ、今日はもう店じまいをしますので、奥でゆっくりと教わっていってください。材料も自由に使っていいですよ」
誰かに教えることもコパンの練習になると店主は考えたのです。ハナコは喜びました。コパンも大喜びです。
店主はお店を閉め、夕食用の笹を取りに出かけました。いないほうがコパンも教えやすいと思いましたから。コパンは初めて誰かに教えるので緊張したようですが、うどん作りに自信を持ち始めていましたので、だんだん面白くなったようです。ハナコもまじめにコパンの言うことを聞き、うどんをこね、汁を作りました。
夕方に笹を担いで店主が帰ってくると、ハナコはもういませんでした。コパンは疲れたのか、テーブルのところで寝ていました。二人が一生懸命だったことはテーブルにあるうどんの山でわかります。店主はコパンを起こさないように抱いてベッドに寝かせました。
ロッキングチェアに座り、ゆらゆら揺れながら、店主は一人で夕食の笹を食べました。この店を作ってから初めての一人夕食でした。ハナコの鼻はうどんを作るには充分だと思っています。彼女ならおいしいうどんが作れるはずです。店主はゆっくりと笹を食べながら、そろそろコパンにメガネを作ってあげようと思いました。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
【完結】森の中の白雪姫
佐倉穂波
児童書・童話
城で暮らす美しいブランシュ姫。
ある日、ブランシュは、王妃さまが魔法の鏡に話しかけている姿を目にしました。
「この国で一番美しく可愛いのは誰?」
『この国で一番美しく可愛いのは、ブランシュ姫です』
身の危険を感じて森へと逃げたブランシュは、不思議な小人たちや狩人ライと出会い、楽しい日々を送ります。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる