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第3章
17.ラブ・メモリアル愛2
しおりを挟むあれから申の刻を報せる鐘が鳴り響き、男は仕事があるようで城の中へ去って行った。
去り際に庭園で綺麗に咲いていた赤いアネモネを一輪、ユーナの髪に挿してくれた。
「また、会いましょうユーナ様。次に会える日を楽しみにしております。俺の名前は…シェスです」
右手を前に、軽く腰を折って紳士の挨拶をしたシェスは振り返らずに歩いて行ってしまった。
しばらく、茫然とその場に立ってシェスが消えて行った方向を見続けていたら、なかなか馬車に戻ってこないユーナを心配したマーサが迎えに来た。
ガタコトと揺れる帰りの馬車の中、髪から外したアネモネの花を風車のようにクルクルと回し、庭園でのことを思い出していた。
闇のような黒髪に、引き込むようなルビーの瞳。そして黒の眼帯をしたシェス。いくら乙女ゲームのことを思い出しても何も思い出せない。彼はもしかして、事故の日に発売された「メモリアル・愛2」の新キャラだったりするのだろうか?
そう、俺はまだ続編である第二期のゲームはしていない。もし、この世界が二期の話も含まれたものなら、俺が知らないシナリオがあることになる。
陛下が話していた政情も一期にはなかった。ただ、こんな裏設定があったのか程度にしか思っていなかったが、二期に出てくるのなら納得だ。
少しでも二期のシナリオが知りたいな。確かサブタイトルあったよな。二期のサブタイトルは…確か、闇…闇夜の君だったか。
マジで?本当にシェスが攻略キャラか?庭園での出会いは決まっていたのか?というか、殿下のヒロインと、二期のヒロイン…ヒロイン二人が俺の前に現れるのか?えー…一人でも面倒くさいのに、二人かよ!
いや、ちょっと待て?ユーナは殿下ルートの悪役令嬢だ。そして修道院に送られる。なら、二期ではユーナが出てくることはない。二期での悪役令嬢は別にいることになる。
ヒロイン二人も相手しなくて良いってことか。ちょっと安心。
「とりあえず、シェス様は殿下ルートには関係ないし、考えなくてもいいか。いや?攻略キャラになるほどだから上級貴族だったりするのかな?味方にして損はないか」
「…お嬢様。考えていることが漏れ出ていますよ。シェス様とはいったい誰です?」
考えごとをするあまり、声に出していたことに気づかなかった。攻略キャラとかマーサには分からない単語まで呟いていた気がする。聞かれたらどうしよう。と、焦って挙動不審になりながら更にアネモネをクルクル回す。
「庭園で出会ったのよ。よそ見していた私がぶつかってしまって、それがきっかけで少しお話もしたのよ。ねぇ、マーサ。二十代半ばくらいの方でシェスという人を知らないかしら?上級貴族だと思っているのだけど」
「上級貴族でシェス様ですか。子爵家の令嬢にいらしたと思いますが、上級貴族にはいらっしゃらなかったと思います」
「私が会ったのは男性でしたわ」
「お嬢様が、見知らぬ男性にご興味が!!」
マーサはユーナが男性に興味を持ったことが嬉しいようで、屋敷に着くまで質問攻めに合うこととなった。
女子って怖い…
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