俺が侯爵令嬢として愛を知るまで

彼名

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第7章

52.ロマノール伯爵邸へ

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良く晴れた雲一つ無い晴天。ユーナは黒い燕尾服の下に深紅のシャツを着込んで、マーサと一緒に馬車に揺られていた。

今日はメノウと約束をした休日。あの日、王城から帰宅してから約束していたデザインが出来ていないことを思い出した俺は、それから今日まで夜な夜なマーサ達に見つからないように隠れながらデザインを描いていた。 

だが、いざ作るための服を描くとなると、イラストを描いていた時には思わなかった難しさがあって、デザインは難航した。

それでもメノウに見せることが出来る出来栄えのモノを数枚、今日は大事に鞄に入れてきている。早くメノウに見て貰いたい。

ロマノール伯爵邸は貴族街でも北の方の地区にあり、ヴァランド侯爵家から馬車で半刻かかる場所にある。

マーサと他愛ない話をしているとあっという間で、馬車がガコンと大きく揺れたかと思うと白亜の屋敷の前に静かに止まった。

門の両脇には見上げるほどの女神の彫刻が鎮座しており、とても迫力のある入り口が出迎えてくれた。

彫刻に目を奪われていると足音が後ろから聞こえてきた。振り返るとクリーム色の生地に白い刺繍とレースがたくさん施された可愛らしいドレスを身に纏ったメノウが走り寄って来てくれた。

「ユーナ様!今日は私のお屋敷に来て下さりありがとうございます。わたし今日という日が楽しみで楽しみで仕方ありませんでしたの。針を持つ手が止まらなくてお洋服を作り過ぎてしまったくらいですもの!」

ドレスの裾を軽く摘まんでにこやかに会釈をするメノウの姿は相変わらず愛らしくて、ユーナも思わず顔が緩んでしまう。

「メノウ久しぶりですわ!私も今日を楽しみにしておりましたのよ。メノウがデザインを喜んで貰えるかドキドキしてしまうわね?」

ウフフと笑いながらメノウにウインクをすると、メノウも釣られて笑って返してくれた。

「ユーナ様が遊びに来て下さっただけで、天にも昇る思いですのに心配し過ぎですわ。さあ、部屋には珍しいお菓子なども用意してますの!行きましょう?」

早る気持ちを抑えられないとばかりに、メノウが小さな手でガシッとユーナの手を引いて部屋へと案内をしてくれた。

通り過ぎていく廊下には外国の土産であろう一風変わった品々が綺麗に飾られていた。

今までに外交を行った数多くの国の文化がそこにあるのだと思うと、感慨深いものがあった。

目移りしているうちに目的の部屋に着いたようで、立ち止まったメノウがニコニコとしながら振り返ってきた。

「着きましたわ、ユーナ様。部屋いっぱいにお洋服やドレスがあるんですけど、驚かないで下さいね?」

「ええ、楽しみだわ。早く見せて?」

小さな子供が驚かそうとするように、ワクワクとした気持ちが抑えきれていないメノウの姿に、フフッと思わず笑いがこぼれる。

ユーナは気づかないフリをして、メノウと一緒に扉のノブを押す。

ギィィッと少し重みのある音を出して開いた扉の先にはピンクと白のメルヘンな世界に、ショールームのように所狭しとドレス達が並んでいた。

昔、従姉妹の花嫁ドレスを選ぶのに母が無理やり俺を引きずって行った時があるのだが、その時も確か今のように一面ドレスが並べられていた。

あの時の俺はこんなにもたくさんのドレスを今から従姉妹は試着を始めるのかとゲンナリした思い出がある。

だが今は、目の前のドレス達が全てメノウが作った作品だと俺は知っている。

何着あるのかも分からないほどのドレスを、あの小さな手で作られたのだと思うと感動で体が震える。

俺は思った以上に素晴らしいパートナーを見つけたのかもしれない。

手にしていた鞄に力が入る。

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