63 / 76
第8章
60.嫉妬にかられた男
しおりを挟む「よお、ユーナ。久しぶりだな。見ないうちに随分とフェロモンを巻き散らかしてるな?令嬢たちが熱い視線を送ってるのにも気づいてないんじゃないか?」
クスクスと笑いながら話しかけて来たのは、心なしか顔が傷だらけになったライオスだった。
深い傷は無いように見えるが、顔中あちこちにある傷が痛ましい。
よく見ると手にも傷がいくつかあるのが伺えた。一体何をしたらこんなにも全身傷だらけになるのか。
「久しぶりですね、ライオス。気づいていないも何も、フェロモンなんて無いですよ。そう言うライオスはなんだかボロボロじゃないかな?」
顔にある切り傷にそっと触れると、痛むのかビクリと肩が揺れた。
「…これは、ちょっと叔父上と一戦やったというか…なんというか」
「…叔父様?ライオスの叔父様といえば誰だったかしら」
直ぐには思い出せずに考えるユーナに、ライオスが不機嫌そうに答えた。
「…クルス公爵のことだ」
「クルス公爵って…!シェスのことだったの、叔父様!そうか、そうよね陛下の弟君ですものね。ライオスの叔父様になるわよね。でもシェスと試合をしたの?彼、お兄様に勝てる程とても強かったわ。そんなにたくさん怪我もして、ライオスも無茶をするわね」
ライオスの口から出た意外な人物の名前にユーナは一瞬驚いたが、よくよく考えればシェスは陛下の弟だ。
シェスはまだ二十五歳と若く、大人の貫禄を持つ陛下とは十歳近く離れている。雰囲気も違う二人が兄弟という実感がイマイチ湧かないせいか、叔父というイメージが思い浮かばなかったのだ。
「譲れないことがあったんだよ。負けたけどな。ユーナ、ちょっと前に城に来たんだろ?」
一瞬、顔を歪ませたかと思うと次の瞬間には笑みを消した強い瞳でライオスがユーナに問いかけてきた。
普段は見せないその強い瞳に、視線に体が固まってしまったかのように上手く動かない。額から一滴の汗が流れ落ちた。
「えぇ、お兄様に…騎士団の見学をさせて貰ったの。それがどうかしたの…?」
緊張して上手く声が出せないせいか、たどたどしい話し方になってしまう。
恐る恐る視線を合わせると、瞳がゆらりと揺らいだ気がした。
「叔父上に…迫られたらしいじゃねぇか。いつ知り合ったんだよ?叔父上と接点なんて無さそうなのに。その上、叔父上のことを何で愛称で呼んでんだよ!」
どこか怖かった強い瞳は鳴りを潜め、悲痛な声で叫ぶライオスの顔は今にも泣きそうだった。
いつもとは明らかに様子の違うライオスにユーナは慌てる。
「待ってよ、急にどうしたのよライオス。どうしてライオスがシェスに迫られたことを知ってるんだ?!どうしてそんなにも俺のことを気にするんだよ?!」
例え、どこかで知り得たとしても、どうしてライオスがこんなにも取り乱すのかがユーナには分からなかった。
そして、気が動転し過ぎて素で男言葉が出ていることにもユーナは気がつかない。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる