俺が侯爵令嬢として愛を知るまで

彼名

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第8章

65.お前ら美しくない

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「いくらライオス殿下であられようと、我らのリリス様を泣かせた罪は重いですよ!」

「そうだぞ。リリス様は一生懸命に勉学を頑張っておられる。何も知らないライオス殿下には分かりますまい。気になさらない方が良い」

「おいおい、お前ら美しくないな。実に美しくない」

口々にリリスを庇う男達の言葉に続いて聞こえてきた軽い口調の声は、ざわついたこの場所に良く通った。

良く見ると、取り巻きの一番後ろに白銀の長い髪を一つに束ねたひときわ顔の整った美少年が立っていた。

「リリス嬢が貴族のしきたりについて軽んじてきたのは確かに悪い。だが、そうやって慰めてできないことを無かったことにするのは違うと思うぜ?可愛いらしいリリス嬢を責めるのは心苦しいが、これも私の愛だと思ってくれ。愛しのリリス嬢」

軽やかな足取りでリリスに近づき、片膝をついてそっと右手を取って甲にキスを落とす姿は様になっていた。

「愛しいと言うなら、かばって欲しいわディーン。…でも、貴方らしいと言えば貴方らしいわね」

複雑な顔で溜め息を吐き、白銀の男を見るリリスの瞳は気心を許している者を見ている目のように見えた。

ディーンと言われた男は他の取り巻きたちとは明らかに違う雰囲気だ。漂う風格といい、佇まいも違う。

軍服のような濃紺の服には階級を表す肩章と胸には沢山の勲章が縫い付けられていて、彼が相当な上の官位を持っていることが分かる。

白銀の髪をした軍服を身に纏ったディーンと呼ばれる美少年…?まさか…

「まさか、ディーン・ウォーカー様?!海軍隊長殿のご子息である…」

「おぉ、これはユーナ嬢!私をご存知でしたか。そうですとも、私がディーン・ウォーカーでございます。海軍隊長を勤めるウォーカー伯爵は私の父です」

一つ一つの動作が少しオーバーリアクションをとる目の前の男ディーンは、信じたくはないが攻略対象キャラの一人のようだ。

思わぬところで新しい攻略キャラに出くわすとは心臓に悪い。事前に知らせておいて欲しい切実に。

「ディーン様。ご存知のようですが、私はユーナ・ヴァランドですわ。ディーン様はリリス様と仲が良いんですの?」

「ええ。主人であるレオンがリリス嬢と仲良くしているのでね、流れでよく一緒にいたりする。今日はレオンが学園に来れないから代わりにリリス嬢のそばにいるんだ」

「おい、それはユーナに対して失礼じゃないのかディーン?ユーナは兄上の婚約者なんだぞ。令嬢には優しくを信条にしてるくせに気がきかねぇな?」

レオンの婚約者であるユーナを放っておいて、レオンのいない間もリリスを傍で護っている。本人を目の前にしてそう言い放ったディーンをいかがなものかと密かに感じたことを、ライオスが代弁してくれた。

レオンと言い争った時も今も、ライオスはいつもユーナを一番に心配してくれる。目付きも悪くて粗暴な態度をしがちだけれど、ライオスが優しいのを俺は知っている。

格好良くて、優しくて、ちょっと俺様で。女のユーナよりもずっと背も高くて、思ったよりも大きく見える広い背中。

こんな素敵なひとが俺を好きだと言ってくれている。

なのに、どうして俺は彼を選べないのだろう?彼が男だから?

俺の心が男だから…?

それともーー…? 

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