67 / 76
第8章
64.貴族としての
しおりを挟むいろんな思いが頭の中に駆け巡っていくユーナを他所に、さらにリリスはライオスに語りかける。
「それにユーナ様はライオス殿下の叔父君であるクルス公爵様とも仲が宜しいとか。婚約者が振り向いてくれないからと、同情を誘ってレオン様に近しい方ばかりに近づいているのです。そんな、節操の無い女と一緒にいるのはライオス殿下のためにもなりませんわ!」
ユーナの肩を抱いたまま黙っていたライオスの手に、ギュッと力が入ったのが肩越しに伝わってきた。
あんなことを言われれば、誰しも心情は良くないだろう。せっかく、仲良くなったライオスに誤解をしてほしくない。焦るような気持ちでライオスを見上げるも、身長差がありすぎてこの角度では表情を見ることはできなかった。
どうしよう…。焦燥感に駆られる思いでライオスの黒い上着をグイッと引っ張ると、ようやくライオスの顔を見ることができた。
いつもよりもつり上がった眉の間に深いシワが刻まれていて、今にもリリスに殴りかかりそうな剣幕だった。
ユーナと目が合うと、ゆっくりと堪えるように一つ息を吐いた後はいつもの表情に戻っていた。
「心配しなくても、ユーナのことは嫌いにならない。クラウザーの言うことなど鵜呑みにはしない、俺を信用しろ」
「ありがとう、ライオス。私は…」
「ちょっと!ライオス殿下はユーナ様の言うことを信じられるのですか?私はライオス殿下のことを心配して言っているのですよ!」
紡ごうとした言葉を無理やり金切り声が遮った。上手に仮面を被り直していただろうに、僅かにまた外れかかっていることにリリスは気づいているのだろうか。
「クラウザー嬢。あなたと言葉を交わすことははじめましてだったかと記憶しているが、違うだろうか」
「…ッ!そうですわ。それが、どうかしましたの」
「よく知らないヤツよりも、友を信じるのは当たり前だろう?ついでにクラウザー嬢、初対面の場合、貴族の間では家格が下の者から格上の者に許可もなく話しかけてはならないという暗黙の決まりを知らないのか?」
「それは…知りませんでしたわ」
「ほぉ。貴族の一員であるのに貴族社会を知らないとなると、クラウザー男爵家も堕ちたものだな。ましてや、王族である俺に対して礼を尽くさないのだからな。このような無礼を働いた罰、どうするか?」
顎に手を当てて、考える素振りをするライオスの姿はまるで審判を下す魔王であるかのような恐ろしさが漂っていた。
いつもとは違う雰囲気を醸し出すライオスに、鋭い眼孔で見据えられてもリリスは怯まなかった。
「だって、クラウザー男爵家の養子になったのは今年に入ってからですのよ?それまで私は平民として育ったの。知らなくても無理はないと思いませんか?」
「俺はそうは思わないな。養子に入ってもう半年以上は経つ。その間にクラウザー嬢、あなたは何をしてきた?十分に貴族の令嬢として教養を受ける時間はあったはずだ。それをしなかったのはクラウザー嬢、あなたの落ち度で同情の余地はない。貴族の仲間入りをした時点で、平民とは違うたくさんの責任が問われる。知らないと言えば罰が逃れると思うな」
「そんな、酷いッ…!私は私なりに早く貴族社会に慣れようと、今日まで勉強をしてきました。どうして、殿下はそんなにも私に冷たいのです…!」
大きな瞳からこぼれるように大粒の涙が流れ落ち、シクシクと泣きじゃくるその姿はこちらがいぢめているかのように思わせる。
そして、泣き出してしまったリリスに、取り巻きたちや見ていた子息たちが必死に慰めはじめた。
0
あなたにおすすめの小説
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
面食い悪役令嬢はつい欲に負けて性悪クズ王子の手を取ってしまいました。
トウ子
恋愛
悪役令嬢に転生したことに気づいた私は、いつか自分は捨てられるのだろうと、平民落ち予定で人生設計を組んでいた。けれど。
「まぁ、とりあえず、僕と結婚してくれ」
なぜか断罪の代わりに王太子に求婚された。最低屑人間の王太子は、私も恋人も手に入れたいらしい。断りたかったけれど、断れなかった。だってこの人の顔が大好きなんだもの。寝台に押し倒されながらため息をつく。私も結局この人と離れたくなかったのよねぇ……、と。
ムーンライトノベルズでも公開。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました
小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。
幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。
ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる