俺が侯爵令嬢として愛を知るまで

彼名

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第8章

64.貴族としての

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いろんな思いが頭の中に駆け巡っていくユーナを他所に、さらにリリスはライオスに語りかける。

「それにユーナ様はライオス殿下の叔父君であるクルス公爵様とも仲が宜しいとか。婚約者が振り向いてくれないからと、同情を誘ってレオン様に近しい方ばかりに近づいているのです。そんな、節操の無いひとと一緒にいるのはライオス殿下のためにもなりませんわ!」

ユーナの肩を抱いたまま黙っていたライオスの手に、ギュッと力が入ったのが肩越しに伝わってきた。

あんなことを言われれば、誰しも心情は良くないだろう。せっかく、仲良くなったライオスに誤解をしてほしくない。焦るような気持ちでライオスを見上げるも、身長差がありすぎてこの角度では表情を見ることはできなかった。

どうしよう…。焦燥感に駆られる思いでライオスの黒い上着をグイッと引っ張ると、ようやくライオスの顔を見ることができた。

いつもよりもつり上がった眉の間に深いシワが刻まれていて、今にもリリスに殴りかかりそうな剣幕だった。

ユーナと目が合うと、ゆっくりとこらえるように一つ息を吐いた後はいつもの表情に戻っていた。

「心配しなくても、ユーナのことは嫌いにならない。クラウザーの言うことなど鵜呑みにはしない、俺を信用しろ」

「ありがとう、ライオス。私は…」

「ちょっと!ライオス殿下はユーナ様の言うことを信じられるのですか?私はライオス殿下のことを心配して言っているのですよ!」

紡ごうとした言葉を無理やり金切かなきり声が遮った。上手に仮面を被り直していただろうに、僅かにまた外れかかっていることにリリスは気づいているのだろうか。

「クラウザー嬢。あなたと言葉を交わすことははじめましてだったかと記憶しているが、違うだろうか」

「…ッ!そうですわ。それが、どうかしましたの」

「よく知らないヤツよりも、友を信じるのは当たり前だろう?ついでにクラウザー嬢、初対面の場合、貴族の間では家格が下の者から格上の者に許可もなく話しかけてはならないという暗黙の決まりを知らないのか?」

「それは…知りませんでしたわ」

「ほぉ。貴族の一員であるのに貴族社会を知らないとなると、クラウザー男爵家も堕ちたものだな。ましてや、王族である俺に対して礼を尽くさないのだからな。このような無礼を働いた罰、どうするか?」

顎に手を当てて、考える素振りをするライオスの姿はまるで審判を下す魔王であるかのような恐ろしさが漂っていた。

いつもとは違う雰囲気を醸し出すライオスに、鋭い眼孔で見据えられてもリリスは怯まなかった。

「だって、クラウザー男爵家の養子になったのは今年に入ってからですのよ?それまで私は平民として育ったの。知らなくても無理はないと思いませんか?」

「俺はそうは思わないな。養子に入ってもう半年以上は経つ。その間にクラウザー嬢、あなたは何をしてきた?十分に貴族の令嬢として教養を受ける時間はあったはずだ。それをしなかったのはクラウザー嬢、あなたの落ち度で同情の余地はない。貴族の仲間入りをした時点で、平民とは違うたくさんの責任が問われる。知らないと言えば罰が逃れると思うな」

「そんな、酷いッ…!私は私なりに早く貴族社会に慣れようと、今日まで勉強をしてきました。どうして、殿下はそんなにも私に冷たいのです…!」

大きな瞳からこぼれるように大粒の涙が流れ落ち、シクシクと泣きじゃくるその姿はこちらがいぢめているかのように思わせる。

そして、泣き出してしまったリリスに、取り巻きたちや見ていた子息たちが必死に慰めはじめた。
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