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6.談話室にて自己紹介
しおりを挟むルーから「小さくて入らなかった服だ」とパーカーをもらい(それでも幾分か大きかった)、メンバー全員に連絡を回してくれたらしく集合場所はこの寮の談話室ということになった。
1階の談話室に向かうと既にイトナがおり、羞恥と緊張と恐怖で固まる俺に構わず力強く抱きしめてきた。
「昨日どこに行ったの!起きたらいなくて驚いたんだよ!」
こいつ昨夜自分がやったことを忘れたのか!?
「おい離れろイトナ、優希はお前の花嫁に決定したわけじゃない」
ルーが呆れた顔で引き離してくれる。情けないが今はルーに頼るしかない。
拗ねたような顔で談話室の丸ソファーに座るイトナから少し離れて席に着く。
円卓会議でも始めるような大きな丸机には次第に人数が増えていく。緊張しっぱなしの俺の肩をポンと叩き、ルーが会議の開始を宣言した。
「梨花がいなくなって2週間経った。梨花の相手はイトナだったが、昨日梨花の弟の優希が花嫁としてこっちに来た。つまり梨花のこの世界での消失を意味する。と共に、花嫁の相手の決め直しをするってことになる」
はい!と手を挙げたのは、向かいに座るふわふわ金髪にヘーゼルアイの美少年だった。少し年下かもしれない……16歳くらいの見た目だけど、人外にも年齢って概念はちゃんとあるんだろうか?あるよな?
「ルーはすぐそうやって結論を急ぐけど、まず僕らをよく知ってもらわなきゃでしょ!自己紹介から始めようよ!」
それもそうだな、と面倒くさそうにルーが頷く。
「こんにちは優希!僕は幸運印の金毛羊のアルトだよ!僕の側にいたらラッキーなことがあるらしいから、仲良くしてほしいな!」
アルトはモコモコの金髪を揺らしながらにっこり笑って言った。可愛い。いや男にこんなこと言うの失礼かもだけど。可愛い。
「よ、よろしく」
「じゃあ僕の隣から!次へスターだよ」
「ん……」
へスターと呼ばれたのは白髪ショートの青年。ずっと目を閉じていたので寝ているのかと思ったけれど、理由が分かった。
目を開くとぎょろっとした爬虫類の細長い黒目が覗く。
「サラマンダーのへスター。……目は、閉じてても見えるから……趣味は日光浴……今度寮の温室に来てくれると、嬉しい……以上」
なんだか独特のテンポがある人らしい。寮に温室があるのか。植物を育ててるのかな?ちょっと興味あるかも。
「ありがとうございます。今度行きます」
「ん......」
へスターがまた目を閉じたところで隣に座っていた明るい茶髪で優しそうな顔つきの眼鏡をかけた青年に移る。
それにしても背中の大きな羽がとても目立つ。天使の人かな?いるのか?天使。
「次は私でしょうか。ハルピュイアのリイロと申します。人型になっても羽はちょっと仕舞えないんですけど、優希さんなら触ってもいいですよ。友達になってくれるなら羽ベッドもいいですよ」
「なります」
即答だった。考えるまでもなく即答だった。
「えっいいんですか!やったー!へへ」
リイロはわさわさと、髪と同じ明るい茶色の羽を揺らして嬉しそうに答えた。
「優希、僕は.......?」
ボソッと呟いたイトナを無視する。
「次は俺かあ。悪魔族の中でも下位って言われてる、インキュバスのベルクスだ。」
これまたルー並の色男。暗い銀髪は後ろを刈り上げたショートにしていて、盛り上がった胸筋は組んだ腕の中で存在を主張している。男の俺でもクラっとしそうなダダ盛れる色気。
くしゃっとした少し長めの前髪から覗く少し眠そうな垂れ目は、髪より明るい銀色に輝いている。
「俺は別に体の関係だけでもいいぜぇ。人種的に爛れた関係ってやつが普通なんでなあ。まあ、やらせてくれんなら天国連れてってやるよ」
そう言って悪魔は舌でチロっと唇を舐めてみせた。
思わず赤くなる俺。しっかりしろ俺。
「そ、そうか」
「そして僕だね。イトナです。アラクネです。梨花の相手でした。優希も僕の花嫁さんにしたいです!」
「ふざけんな」
はい次。
「最後は俺か。人狼族のルー・ガル。イトナが繁殖期近くてやらかしたんで今優希は俺の部屋に預かってる。俺の部屋にずっといてもいいし、色んなやつと過ごしてみてもいい。別に花嫁の相手は1人って決まってるわけじゃないんだ。全員の相手になることもあるし、梨花みたいに1人きりだけの場合もある」
イトナがやらかした、のあたりでみんな俺を見た気がしたけど気付かないふりで話を聞く。別に赤くなんかなってない。ないったらない。
「優希、どうする?別に今決めなくてもいいけどな」
ルーの言葉に迷い、心境を言葉にしてみる。
「俺は異世界から来たばかりで何もわからない。梨花を探してたんだけど、この世界にはもういないとか言われるし、代わりに花嫁になれとか言われるし。正直どうしたらいいのか分かんないよ。でもせめてどうして梨花がいなくなったのかは知りたい。今はそれしか考えられない。ごめん。」
せっかく集まってもらったところで、きちんとみんなには向き合えない。結局独りよがりで、自分のことしか考えられない。
気まずくて顔を上げられずにいると、隣のルーが頭をポンポンと撫でた。
「あのね、梨花はイトナの相手に決まったけど、僕はずっと仲良くしてたんだよ。だから梨花がどこに行っちゃったのかは僕も知りたい。できることなら協力するから、あんまり落ち込まないでね」
アルトが悲しそうな顔でそう言う。俺は頷くことしかできなかった。
決議として、俺は今のところルーの部屋で寝泊まりしながらメンバーの誰かと毎日行動を共にすることに決まった。1人でうろつくのは危険だと念を押された。
学校は日本と同じく週5日あるらしく、今日は土曜日。
一旦解散して、俺はこれから梨花と仲が良かったというアルトと一緒に、梨花が住んでいた部屋に向かうことにした。
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