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43.平穏とテスト
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「うーん、しばらく登校しないでおこうかな。ルーの看病あるし」
3日ぶりに戻ったルーの部屋で明日の予定を考える。
丈夫とは言え何だかんだ今日は無理しただろうし、せめて腫れが引くまで家にいてほしい。
そうなると家に残して1人登校するのもなー。
なんて悩んでつい言葉に出すと、後ろのソファで雑誌を読んでいたルーは不機嫌そうに眉を顰める。
「なんだ看病って。俺は病人じゃねえぞ」
「なんか、見てないとすぐ無理しそうで……」
「あん?お前が言える立場か?」
……それもそうだ。ごめん。
「それにもうすぐテストだろ。優希は人のこととやかく言えるくらい勉強理解できてんだろうな?」
「あっ」
あー完璧に忘れてましたね。はい。昨日アルトにも言われたなーそういや。
「うーん、今から普通に授業受けるよりもアルトの張ったヤマを中心に勉強する方が効率いいかも」
「……ほう。さすが幸運印だな」
ここ最近色々ありすぎて結局ほとんど授業受けてないし……自業自得かもだけど。
「ルーも一緒にアルトのとこで勉強する?」
「いや、俺はヤマ張らなくても覚えてるからいい」
なんて雑誌に目を落としながらこっちを見もせずに興味無さげに答えた。
はーん!出来る男なセリフだけど若干嫌味だぞ、それ!
ということで翌朝またもやアルトの部屋に伺う俺。ルーが見つかった報告もしないとだし!
なんかもう、ヤった相手と会うの全く恥ずかしがらなくなってきたな……。慣れとは恐ろしい。
チャイムを押してからしばらくして、今度は寝癖のないアルトがドアを開けた。
今日の服装は肩の開いたモコモコニットですか~。いいですねえ可愛いですねえ。
だが男である。
「優希おはよ~!あっ、ルー見つかったんだね!よかった!さすが僕の幸運!」
一目で見抜くとは。いや、嗅ぎ抜く?
「う、うん!昨日は本当にありがとうアルト!……あの、そんなに狼くさい?」
「あははは、部屋入っていいよ~」
はは、笑顔で流された。泣きそう。
「実は今日はアルト先生に勉強の範囲を教わりたくてですね」
相変わらずファンシーな部屋で朝からココアを飲みながら本題に入る。
「ふむ!よかろう!……新作のビスチェで手を打つ」
「び、びすちぇ?……お菓子?」
「あー、コルセットだよ。フリフリの。後ろでキュッと縛れるやつ!色違いで可愛いの買ったから優希にも着て欲しくてさ~着て見せてくれたらあげるから!」
いやいらないけど、それってまた女装しろってコトデスカァ……
まあテスト赤点か一度やった女装、どちらを取るかと言われたら女装なんですなあ。
渋々頷くとアルトは大喜びで手を打った。
「ビスチェ届いたら教えるから!」
とアルト先生のテンションが上がったところでお勉強開始。
持ってきた教科書を、アルトが適当な場所で「んー……ココ!とココ!あとここらへんと~」と印を付けていく。
全自動カンニング職人……。いや事前に勉強するからカンニングじゃないな。問題はその範囲をちゃんと理解して覚えられるかだしな!
範囲を教えてもらって、いざ勉強を開始すると問題点が発覚した。
アルトは「なんとなくこうしたらこうなる」という自分の思考で問題を解くので教えるのが壊滅的に下手だった。詳細な範囲を教わっただけでもありがたいんだけど、計算問題やら考える問題は自力で頑張れよということだ。
これがまあ意外と多いんですよね。
ということで、アルトの部屋では主にお互い暗記物を交互に出題したりして大いに勉強を楽しんだ。
楽しんで覚えると忘れにくいって言うし。たぶん。
日が暮れる頃にお礼を言ってルーの部屋に戻る。
「ただいま~」と扉を開けるとビーフシチューのいい香りが出迎えてくれる。
帰ったらご飯がある幸せ……!
「お帰り。シチューはパンと米どっちがいい?」
「うーん……うーん……パンで!ルーはいいお嫁さんになれるよ」
キッキンで作業するいい男の後ろ姿を見て思わずにやけてしまう。俺のために作ってくれてるんだぜ、これ。
「はっ、なんだそりゃ」
見える、見えるぞ、照れて嬉しそうに動く尻尾が。今日は生えてないけど。
夕飯を食べながら世間話のつもりで勉強の報告をすると、分からないところは教えてくれることになった。
だけど俺はすっかり忘れてたんだよね。
ルーのS気質のことを。
「あ?どうしてこの公式を覚えないまま次に行こうとする?お前はバカか?」
「さっきやった所だろう、もう忘れたのか?」
「また間違えたな。10回書き取りしろ」
「まだ5ページも進んでないのにもうギブアップか?甘えてるんじゃねえのか?」
「うっうっ、もう、勘弁してください……」
ドSって、スパルタにもなり得るんだなあ。
ようやく解放してもらえたのは深夜近く。二度とルーには勉強を教わらないと心に決めた。
燃え尽きたぜ、真っ白にな……。
翌日、初心に返って分からない所は先生に聞こうと決めた。
ということでルーには結局自宅待機をお願いし、1人で学校に向かう。
登校途中で、相変わらず眠そうなベルクスとたまたま合流し、テストや勉強のことを聞くとあっさり「順調」とのこと。もしかしてテストで焦ってるの俺だけ……?
試しに「勉強教えてくれないか?」と聞いてみるも、
「はは、俺優希と密室に居るだけでムラムラしちゃうから無理かなぁ。たぶん1問ミスったらバイブ1段階上げるーってゲームするけど、それでもいいなら?」
とナチュラルに返答されたので丁重にお断りした。
登校中によくそんな涼しい顔でサラリと!インキュバスって怖いな!いやこれはベルクスの性格かもしれない。
「あ、トカゲ君は?確かめっちゃ頭いいんじゃなかったっけ?」
「トカゲ……?トカゲ……あっへスターのことか?」
「そうそう」
「へえ、へスターって頭いいんだ……ありがと!頼ってみるよ。うちの寮は優秀な人ばっかだな~」
「……鳥チャンは鳥頭だけどなぁ」
ボソッと何か呟いてたけど聞こえなかった。
俺の異世界初テスト、安泰でありますように~!
3日ぶりに戻ったルーの部屋で明日の予定を考える。
丈夫とは言え何だかんだ今日は無理しただろうし、せめて腫れが引くまで家にいてほしい。
そうなると家に残して1人登校するのもなー。
なんて悩んでつい言葉に出すと、後ろのソファで雑誌を読んでいたルーは不機嫌そうに眉を顰める。
「なんだ看病って。俺は病人じゃねえぞ」
「なんか、見てないとすぐ無理しそうで……」
「あん?お前が言える立場か?」
……それもそうだ。ごめん。
「それにもうすぐテストだろ。優希は人のこととやかく言えるくらい勉強理解できてんだろうな?」
「あっ」
あー完璧に忘れてましたね。はい。昨日アルトにも言われたなーそういや。
「うーん、今から普通に授業受けるよりもアルトの張ったヤマを中心に勉強する方が効率いいかも」
「……ほう。さすが幸運印だな」
ここ最近色々ありすぎて結局ほとんど授業受けてないし……自業自得かもだけど。
「ルーも一緒にアルトのとこで勉強する?」
「いや、俺はヤマ張らなくても覚えてるからいい」
なんて雑誌に目を落としながらこっちを見もせずに興味無さげに答えた。
はーん!出来る男なセリフだけど若干嫌味だぞ、それ!
ということで翌朝またもやアルトの部屋に伺う俺。ルーが見つかった報告もしないとだし!
なんかもう、ヤった相手と会うの全く恥ずかしがらなくなってきたな……。慣れとは恐ろしい。
チャイムを押してからしばらくして、今度は寝癖のないアルトがドアを開けた。
今日の服装は肩の開いたモコモコニットですか~。いいですねえ可愛いですねえ。
だが男である。
「優希おはよ~!あっ、ルー見つかったんだね!よかった!さすが僕の幸運!」
一目で見抜くとは。いや、嗅ぎ抜く?
「う、うん!昨日は本当にありがとうアルト!……あの、そんなに狼くさい?」
「あははは、部屋入っていいよ~」
はは、笑顔で流された。泣きそう。
「実は今日はアルト先生に勉強の範囲を教わりたくてですね」
相変わらずファンシーな部屋で朝からココアを飲みながら本題に入る。
「ふむ!よかろう!……新作のビスチェで手を打つ」
「び、びすちぇ?……お菓子?」
「あー、コルセットだよ。フリフリの。後ろでキュッと縛れるやつ!色違いで可愛いの買ったから優希にも着て欲しくてさ~着て見せてくれたらあげるから!」
いやいらないけど、それってまた女装しろってコトデスカァ……
まあテスト赤点か一度やった女装、どちらを取るかと言われたら女装なんですなあ。
渋々頷くとアルトは大喜びで手を打った。
「ビスチェ届いたら教えるから!」
とアルト先生のテンションが上がったところでお勉強開始。
持ってきた教科書を、アルトが適当な場所で「んー……ココ!とココ!あとここらへんと~」と印を付けていく。
全自動カンニング職人……。いや事前に勉強するからカンニングじゃないな。問題はその範囲をちゃんと理解して覚えられるかだしな!
範囲を教えてもらって、いざ勉強を開始すると問題点が発覚した。
アルトは「なんとなくこうしたらこうなる」という自分の思考で問題を解くので教えるのが壊滅的に下手だった。詳細な範囲を教わっただけでもありがたいんだけど、計算問題やら考える問題は自力で頑張れよということだ。
これがまあ意外と多いんですよね。
ということで、アルトの部屋では主にお互い暗記物を交互に出題したりして大いに勉強を楽しんだ。
楽しんで覚えると忘れにくいって言うし。たぶん。
日が暮れる頃にお礼を言ってルーの部屋に戻る。
「ただいま~」と扉を開けるとビーフシチューのいい香りが出迎えてくれる。
帰ったらご飯がある幸せ……!
「お帰り。シチューはパンと米どっちがいい?」
「うーん……うーん……パンで!ルーはいいお嫁さんになれるよ」
キッキンで作業するいい男の後ろ姿を見て思わずにやけてしまう。俺のために作ってくれてるんだぜ、これ。
「はっ、なんだそりゃ」
見える、見えるぞ、照れて嬉しそうに動く尻尾が。今日は生えてないけど。
夕飯を食べながら世間話のつもりで勉強の報告をすると、分からないところは教えてくれることになった。
だけど俺はすっかり忘れてたんだよね。
ルーのS気質のことを。
「あ?どうしてこの公式を覚えないまま次に行こうとする?お前はバカか?」
「さっきやった所だろう、もう忘れたのか?」
「また間違えたな。10回書き取りしろ」
「まだ5ページも進んでないのにもうギブアップか?甘えてるんじゃねえのか?」
「うっうっ、もう、勘弁してください……」
ドSって、スパルタにもなり得るんだなあ。
ようやく解放してもらえたのは深夜近く。二度とルーには勉強を教わらないと心に決めた。
燃え尽きたぜ、真っ白にな……。
翌日、初心に返って分からない所は先生に聞こうと決めた。
ということでルーには結局自宅待機をお願いし、1人で学校に向かう。
登校途中で、相変わらず眠そうなベルクスとたまたま合流し、テストや勉強のことを聞くとあっさり「順調」とのこと。もしかしてテストで焦ってるの俺だけ……?
試しに「勉強教えてくれないか?」と聞いてみるも、
「はは、俺優希と密室に居るだけでムラムラしちゃうから無理かなぁ。たぶん1問ミスったらバイブ1段階上げるーってゲームするけど、それでもいいなら?」
とナチュラルに返答されたので丁重にお断りした。
登校中によくそんな涼しい顔でサラリと!インキュバスって怖いな!いやこれはベルクスの性格かもしれない。
「あ、トカゲ君は?確かめっちゃ頭いいんじゃなかったっけ?」
「トカゲ……?トカゲ……あっへスターのことか?」
「そうそう」
「へえ、へスターって頭いいんだ……ありがと!頼ってみるよ。うちの寮は優秀な人ばっかだな~」
「……鳥チャンは鳥頭だけどなぁ」
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