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44.平穏とテスト2
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「初心に返って分からない所は先生に聞こう!」
だなんて、
はは。
今朝の俺に言ってやりたい。
「そもそも1番最初の段階で分からないってことを先生に聞く勇気はあるのか?」
俺は授業を昼でギブアップし、食堂でカツ丼を食べた後寮への帰路についていた。
昨日のルーは呆れもせず徹底的に付き合ってくれて、相当スパルタだったけど優しかったのかもしれない。いやまあ根っこは優しいんだよな~。俺の心は折れかけたけど。
ということで目指すは寮の最上階。
俺はイージーモードを選択!へスターに優しく教えてもらう!
「お邪魔しまーす」
温室のステンドグラスの扉をそっと開いて中に入る。
レンガ道を辿り、テラスの机に寝そべるへスターを見つける。
「あっ……寝てるかな、どうしよう」
そっと向かいの椅子に座り、静かに呼吸をしているへスターの顔にかかった前髪を払ってやる。
「んっ……」
擽ったかったのかピクリと反応し、ゆっくり頭を持ち上げた。
「……優希?」
寝起きのぼーっとした表情が可愛い。いつもあんまり表情変わらないけど。
「おはようへスター。ちょっと勉強教わりたくて来ちゃった」
「うん……」
ぬるうっと背伸びをし、軽くあくびをしてから、「いいよ」とへスターは笑って答えた。
「優希……それは、こっちの……公式」
「ん?ああ!こういうこと?」
「そう……図に書いたら……分かりやすい」
「おおー!!本当だ!すげえ!」
へスターの教え方は本当に丁寧で優しくて、俺が躓くと「どうして躓いたのか」から分かりやすく教えてくれた。
こ、これが「教えるのが上手い」ということ……!
日が傾く頃には頭を悩ませていた部分の大半が終わっていた。
「へスター本当にありがとう!テスト赤点回避できそうで安心した!」
「そう……よかった……」
へスターはふふ、と微笑む。ちょっと頬っぺが赤くなってて可愛い。
「本当に助かった!なんかお礼したいんだけどやってほしいこととかない?」
アルトには女装の交換条件あるし、へスターにもここまでしてもらったからには何かお返ししないとな~。
「ん…………特に、ない……」
「えっ!何でもいいんだぞ?」
温室の清掃でも鉢の植え替えでも、前に頼まれたようなことでも!
「……なんでも?」
「うん!」
へスターは純情だから誰かみたいに変なこと言わないだろうしな!逆にお礼するよって言わないと頼みたいことすら頼めなそうだ。
「じゃあ…………」
たっぷり迷ったあと、
「テスト、終わったら……あの、部屋に……来て欲しい……」
「うん、分かった!」
部屋の掃除か何かだろうか。あの植物の管理も1人じゃ大変そうだしな。
へスターの顔が真っ赤に染まっていたのを、俺はその時全く気付いていなかった。
アルトのテスト範囲当てとルーのスパルタ授業、へスターの教えのお陰でどうにかテストはやり切った。なかなか手応えはあったと思う。
ただ、隣の席(に無理矢理移動した)イトナが終始こちらをじーっと見ていて少し気が散ったけど。
終了のチャイムが鳴り、達成感と開放感で脱力する。
「お、おわっ……た……」
「優希、お疲れ様~!頑張ってる横顔かっこよかったよ~」
イトナが横から強引に抱きしめて頬擦りしてくる。
「うぐっ、あ、ありがと?」
お前ちゃんと自分のテストした?
「今日久しぶりに僕の部屋来てよ~最近全然話してないよ~」
まあしばらくテスト勉強にかかりきりだったしなあ。
「そうだな~……あ、ダメだ。今日へスターの部屋行くんだった」
テストが終わったら、って言われてたんだった。
最終日のテストは昼で終わりなので頼まれごとをやる時間はたっぷりあるだろう。
「……へスターと僕とどっちが大事なの?」
イトナが若干イラついたような顔で聞いてくる。
本当に面倒くさい彼女だなまるで!彼女いたことないけど!
せめて可愛く拗ねる程度であってくれよ!
「うーん、先約がある方かな」
「……じゃあ明日は僕ね」
「う、ぐ、う、うん。分かった」
イトナの部屋行くんの怖いんだよな~また毒盛られなきゃいいな~、と遠い目になる。
「安請け合いするんじゃねえよ。ほら帰るぞ」
後ろの席からルーが迎えに来る。
「一緒に住んでるからって偉そうに……」
「ハンッ、お前は初日に逃げられたもんな」
「こっ、んの……」
「もー喧嘩すんなってー!置いてくからな!バイバイ!」
「あっ優希ー!待ってよー」
「チッ」
二人とも私のために争わないでー!みたいな少女漫画的展開だと思ったら大間違いだ。実際愛が重い二人に挟まれるとただただ鬱陶しい。すぐ喧嘩するし。二人とも俺よりでかいから頭上でバチバチされるの怖いし。
イトナに明日の予定を念を押されてから分かれ、ルーの部屋でご飯と着替えを済ませる。
実はネットショッピングで揃えた服が多くなり、俺用の衣装ケースを買ってもらったりした。時々「あ、これルーの趣味だろうな」って服が勝手に入ってるのでたまに着てあげたりする。……狼の着ぐるみパジャマとか。
体動かすお願いごとかな、と検討を付けていたので動きやすそうな服をチョイスしてへスターの部屋に向かう。
へスターの教えは本当に助かったから存分にこの体を使うといい!
と、思っていたけど。
思ってたのと体の使い方が、ちょっと違ったかもしれない。
「優希……ようこそ、上がって……」
そう言ってくれたへスターの顔はなんだか上気していて、もしかして熱でもあるのか?と心配になる。
「それで、俺は何をしたらいいんだ?」
前回と違ってリビングではなくへスターの部屋に通された。
へスターの部屋は爽やかな緑色でまとまっていて、ほのかに土の香りがして心地良い。
「優希……優希が、優希が…………いい、なら」
「うん?なんだ?何でも言ってくれ」
浅く呼吸を繰り返し、
「交尾を……して欲しい」
だなんて、
はは。
今朝の俺に言ってやりたい。
「そもそも1番最初の段階で分からないってことを先生に聞く勇気はあるのか?」
俺は授業を昼でギブアップし、食堂でカツ丼を食べた後寮への帰路についていた。
昨日のルーは呆れもせず徹底的に付き合ってくれて、相当スパルタだったけど優しかったのかもしれない。いやまあ根っこは優しいんだよな~。俺の心は折れかけたけど。
ということで目指すは寮の最上階。
俺はイージーモードを選択!へスターに優しく教えてもらう!
「お邪魔しまーす」
温室のステンドグラスの扉をそっと開いて中に入る。
レンガ道を辿り、テラスの机に寝そべるへスターを見つける。
「あっ……寝てるかな、どうしよう」
そっと向かいの椅子に座り、静かに呼吸をしているへスターの顔にかかった前髪を払ってやる。
「んっ……」
擽ったかったのかピクリと反応し、ゆっくり頭を持ち上げた。
「……優希?」
寝起きのぼーっとした表情が可愛い。いつもあんまり表情変わらないけど。
「おはようへスター。ちょっと勉強教わりたくて来ちゃった」
「うん……」
ぬるうっと背伸びをし、軽くあくびをしてから、「いいよ」とへスターは笑って答えた。
「優希……それは、こっちの……公式」
「ん?ああ!こういうこと?」
「そう……図に書いたら……分かりやすい」
「おおー!!本当だ!すげえ!」
へスターの教え方は本当に丁寧で優しくて、俺が躓くと「どうして躓いたのか」から分かりやすく教えてくれた。
こ、これが「教えるのが上手い」ということ……!
日が傾く頃には頭を悩ませていた部分の大半が終わっていた。
「へスター本当にありがとう!テスト赤点回避できそうで安心した!」
「そう……よかった……」
へスターはふふ、と微笑む。ちょっと頬っぺが赤くなってて可愛い。
「本当に助かった!なんかお礼したいんだけどやってほしいこととかない?」
アルトには女装の交換条件あるし、へスターにもここまでしてもらったからには何かお返ししないとな~。
「ん…………特に、ない……」
「えっ!何でもいいんだぞ?」
温室の清掃でも鉢の植え替えでも、前に頼まれたようなことでも!
「……なんでも?」
「うん!」
へスターは純情だから誰かみたいに変なこと言わないだろうしな!逆にお礼するよって言わないと頼みたいことすら頼めなそうだ。
「じゃあ…………」
たっぷり迷ったあと、
「テスト、終わったら……あの、部屋に……来て欲しい……」
「うん、分かった!」
部屋の掃除か何かだろうか。あの植物の管理も1人じゃ大変そうだしな。
へスターの顔が真っ赤に染まっていたのを、俺はその時全く気付いていなかった。
アルトのテスト範囲当てとルーのスパルタ授業、へスターの教えのお陰でどうにかテストはやり切った。なかなか手応えはあったと思う。
ただ、隣の席(に無理矢理移動した)イトナが終始こちらをじーっと見ていて少し気が散ったけど。
終了のチャイムが鳴り、達成感と開放感で脱力する。
「お、おわっ……た……」
「優希、お疲れ様~!頑張ってる横顔かっこよかったよ~」
イトナが横から強引に抱きしめて頬擦りしてくる。
「うぐっ、あ、ありがと?」
お前ちゃんと自分のテストした?
「今日久しぶりに僕の部屋来てよ~最近全然話してないよ~」
まあしばらくテスト勉強にかかりきりだったしなあ。
「そうだな~……あ、ダメだ。今日へスターの部屋行くんだった」
テストが終わったら、って言われてたんだった。
最終日のテストは昼で終わりなので頼まれごとをやる時間はたっぷりあるだろう。
「……へスターと僕とどっちが大事なの?」
イトナが若干イラついたような顔で聞いてくる。
本当に面倒くさい彼女だなまるで!彼女いたことないけど!
せめて可愛く拗ねる程度であってくれよ!
「うーん、先約がある方かな」
「……じゃあ明日は僕ね」
「う、ぐ、う、うん。分かった」
イトナの部屋行くんの怖いんだよな~また毒盛られなきゃいいな~、と遠い目になる。
「安請け合いするんじゃねえよ。ほら帰るぞ」
後ろの席からルーが迎えに来る。
「一緒に住んでるからって偉そうに……」
「ハンッ、お前は初日に逃げられたもんな」
「こっ、んの……」
「もー喧嘩すんなってー!置いてくからな!バイバイ!」
「あっ優希ー!待ってよー」
「チッ」
二人とも私のために争わないでー!みたいな少女漫画的展開だと思ったら大間違いだ。実際愛が重い二人に挟まれるとただただ鬱陶しい。すぐ喧嘩するし。二人とも俺よりでかいから頭上でバチバチされるの怖いし。
イトナに明日の予定を念を押されてから分かれ、ルーの部屋でご飯と着替えを済ませる。
実はネットショッピングで揃えた服が多くなり、俺用の衣装ケースを買ってもらったりした。時々「あ、これルーの趣味だろうな」って服が勝手に入ってるのでたまに着てあげたりする。……狼の着ぐるみパジャマとか。
体動かすお願いごとかな、と検討を付けていたので動きやすそうな服をチョイスしてへスターの部屋に向かう。
へスターの教えは本当に助かったから存分にこの体を使うといい!
と、思っていたけど。
思ってたのと体の使い方が、ちょっと違ったかもしれない。
「優希……ようこそ、上がって……」
そう言ってくれたへスターの顔はなんだか上気していて、もしかして熱でもあるのか?と心配になる。
「それで、俺は何をしたらいいんだ?」
前回と違ってリビングではなくへスターの部屋に通された。
へスターの部屋は爽やかな緑色でまとまっていて、ほのかに土の香りがして心地良い。
「優希……優希が、優希が…………いい、なら」
「うん?なんだ?何でも言ってくれ」
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