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第二章

16.神とスライム

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えっ…………。

ボク、神様……?

だって念じれば何でもできて、二ノ神にのかみって名前で、神々の遊びで……。

「……ニイム?」

『あ、フェ……フェリ……』

 不安そうな顔をしたフェリに抱き上げられた。
 ボクがいきなり固まっちゃったから、心配してくれたんだろうな。

「どうしたの? 進化で……疲れた?」

『う、うん……そう、かも。そうみたい……』

「じゃあ……ぼくが運ぶ、ね? もうダンジョンは終わりだから、もうちょっと……ガマン、してて?」

『ありがとう、フェリ……』

 フェリの優しさに甘えたい気分だ。
 温かい腕の中でなら、この衝撃も上手く消化できそう……。

「疲れたら言え。俺が持ってやる」

「あ、ありがとうございます、アインさん。でもぼく、平気です……からっ!」

「そうか」

 そうだ、アインだ。

 あの会話の感じ。
 一ノ神いちのかみって、アインじゃないの?

『あ、フェリ! 君も疲れてるだろうから、今日はアインに運んでもらうよ!』

 抱えてもらえば、こっそり話せる。
 アインは護衛としてクリス達から少し距離を取って歩くから、丁度良いかもしれない。
 フェリの温もりは惜しいけど、このチャンスを活かそう。

「え、でも……良いの? ぼくなら平気、だよ?」

『全然だいじょーぶ! もうアインとも仲良しになったからね。守ってくれてありがと、フェリ!』

「そう……それなら……アインさん、お願いします」

『よろしくね~』
 
「ああ」

 そっと受け渡されるボク。

 みんなと少し距離が開いたところで……よし、これでナイショ話もやり放題だ。

『ねぇねぇアイン! ちょっとナイショで話したいことがあるんだけどっ』

「何だ」

『ボク、さっきの進化でいっぱい思い出したんだ。アインのことも、たぶん……』

 アインの指がピクリと動いた。

『アインって、一ノ神……だよね?』

「そうだ」

 即答だね!
 そっか、やっぱりそうなんだ……。
 ってことはボクは二ノ神……神の一人だ。
 名前の一部を思い出した時に『にの――』って聞こえたのは、これのことだったんだぁ……。

『ボク、自分が元・神だとは思わなかった……』

「正確には今もだ。今は一時的に受肉じゅにくしているに過ぎない」

『そっか……』

 じゃあ、望んだスキルが手に入ったり進化できたりするのも、神の力の影響なのかな。
 モンスターにだって元々そういう特性があるけど、ちょっと都合良すぎたもん……ね。

『あ、リーリオも知ってるよね? アインも話せる?』

「俺からは呼び出せない。あれはお前の天使だからな」

『そっか、そうだよね……』

 そう、リーリオはボクの天使。
 神だった時に作り出した、ボクの使いだ。

「ただ、感知はできる。目の前で通信しているなら見聞きできるし、離れている場合でも通信していること自体は感じられる」

『おお、さすがはイチだね!』

 イチは前のボクの呼び方だ。一ノ神だからイチ、二ノ神だからニノ。
 お前とか君とかって呼ぶことが多かったけどね。基本的に二人だけだったしさ。

『そいじゃあリーリオ、かもーん!』

 すっと静かに画面が浮き上がってきた。
 登場時に静かなリーリオ、珍しい!

『お久しぶりです、一ノ神様。ニイムさん……いえ、二ノ神様も、御無事に記憶を取り戻されたようで、何よりです』

『そんなかしこまった猫かぶんなくていいよー。あと、ボクに対しても今まで通りでヨロシクね! 今はスライムのニイムだもんっ♪』

『……はい!』

 そういえば、リーリオって前はあんなハジけた感じじゃなかったよねぇ。
 ボクが転生して居なくなったから変わったかな。
 スライムのボクが可愛すぎて、愛の実がハジけちゃった系?
 可愛さは罪だねっ!

「それで。これからどうするつもりだ?」

『このままフェリ達と一緒にいるかーってこと?』

「そうだ。お前は以前、人間達と深く関わるのは良くないと言っていただろう」

『うん、ボクのせいで何か影響が出たらヤだなーって思ってさ……』

 何でもかんでも神様のせい、神様のおかげ~っていうのはちょっと……ねぇ?

『私は地上に降りられた以上、ニイムさんのお好きにされたら良いと思うんですけどねぇ。何か影響が出ても、それはそれ、ということで……』

『まぁね、元・神っていっても今はスライムだもん。大したことは出来ないし、影響が出たとしてもものすっごくちょびっとだと思うよ~』

「なら、このままパーティーに居続けるのか?」

 ……難しい問題、だなぁ。

『……アインは? 君こそどうするの?』

「俺はお前についていくさ。このパーティーの奴らも、嫌いじゃないがな」

 んもー、ボクに丸投げだね?!
 いやまぁ、最初に誘ったのはボクなんだけどさっ!

『私はどんな選択でもニイムさんを応援しますからっ! 例え魔王を目指すことになったとしても!』

 いやいやいや、何で魔王を目指すのッ?!
 言いたいことは分かるけど、おかしいよね?!

「まあ、今すぐに決めなくても良いだろう」

『そう、だね……ちゃんと考えるよ』

 フェリのこと、クリス達のこと、ボクのこと。
 ……ホントに、ちゃんと考えなくちゃね。
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