上 下
57 / 58
第二章

20.涙のスライム

しおりを挟む
 次の日の朝。
 起きてきたフェリに、早々に別れを切り出した。

 フェリはある程度察していたのか、ボクが話している間、口を挟むことがなかった。
 ずっと口をへの字にしたまま、黙って聞いてくれた。

 ……怒って、る?
 いや、泣きそうなのをガマンしてるのかな……。

「やっぱり……行っちゃうんだ、ね……」

『うん。一人立ちする時が来たと思ったから、ね』

 フェリだけの話じゃない。
 ボクも、だ。

「……お父さんとお母さんも、同じこと……言ってた……」

『フェリのご両親?』

「これからは一人で、生きていかなきゃいけないって、言われた……お父さんもお母さんも、いないと思えって……」

 もう居ないって言ってたから亡くなってるのかと思ってたけど、そういう意味だったのか!
 それにしても、生きていくすべ持たない8歳の子供を一人で放り出すって……どうなんだ。
 竜人の風習だったりするのかなぁ。

 それにしても、二回もそんなこと言われたらショックだよね……。
 うぅ、なんだかとっても悪い事をしている気分……。

『フェ、フェリ……ボクも本当のご両親も、フェリがキライになったとか、一緒にいたくなくなったとか、そんなんじゃないんだよ?』

「うん……前はわからなかった、けど……今は……何となく、わかる」

『そ、そうなんだ?』

 フェリはコクリと頷くと、下がっていた眉を上げ直した。

「守られてばっかりは……終わり。これからは自分で自分を、守る。それから、ボクは……他の人も、守りたい!」

『フェ、フェリ……ッ!』

 まっすぐな瞳で言い放つフェリ。

 い、いつの間にかこんなに立派になって……!
 ボクは……お父さんは……感動だよっ!!

『フェリがそんな立派になってくれて、ボク嬉しい! きっと本当のご両親も、喜んでるに違いないよ~!』

「そうかな……? でも、まだ本当には、守る力がないから……」

『その志だけでも立派だよ! ……ううん、フェリなら実力も追いつくこと間違い無しだ。ボクが太鼓判押しちゃうっ!』

 ――ぽいんぽいーん、ぽいんっ!

「ありがと……」

 フェリは嬉しそうだ。
 離れるのはちょっと心配だったけど、これならバッチリ大丈夫そうだね!

「すぐ、行くの……?」

『そうだね……クリス達の都合もあるだろうけど、できるだけ早く、かな』

 ずるずる一緒にいたら、離れられなくなりそうだもんね。
 ぷにぷにの意思のニイムちゃんなのだ!

「ん、わかった……。ねぇ、ニイム」

『なぁに?』

 フェリは真剣な顔でボクを見つめた。

「今まで一緒にいてくれて、ありがとう」

 そして最後に、とびきりの笑顔を見せてくれる。


「……ずっとずっと、大好きだよ!」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

LOST-十六夜航路-

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,500pt お気に入り:4,744

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,396pt お気に入り:1,713

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:788pt お気に入り:1

2025年何かが起こる!?~予言/伝承/自動書記/社会問題等を取り上げ紹介~

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:27,902pt お気に入り:70

【完結】目覚めたら、疎まれ第三夫人として初夜を拒否されていました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:986pt お気に入り:3,044

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,698pt お気に入り:54

異世界で海賊始めました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:401

処理中です...