心の花の国

いりえ。

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ココネのおねがい

花の生育に大切なこと

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「あ、私この花がいい!」

 そういって、とある花のイラストをココネはペシペシと叩く。

「アイリス、か。良いわね。ハルの国の花でお世話もそんなに大変じゃないし、森の中なら最適よ」
「……? どうして森の中なら良いの?」

 疑問符を浮かべてココネは首をかしげる。
 よくぞ聞いてくれましたとばかりに私は鼻をならした。さっきみたいに興奮しすぎないよう、丁寧に説明していく。

「お世話をしてみたい花を決めたら、まず一番に調べなきゃいけないことがあるの。それがなにだかわかる?」
「え、なにかしら? 水をやる量? それとも日当たり?」

 二つの答えに指でバッテンを作る。水やりも日当たりも大切ではあるけれど。

「正解は土よ。どんな土で育つのか、それを知っておかなきゃいくらこまめにお世話をしても、元気に育ってくれないわ」
「へ~、なるほどねえ」
「アイリスの場合は湿った土が良いわ。森は湿った腐葉土がたくさんあると思うし、日光もちょうど良いくらいにさえぎってくれる。だから最適って言ったの」

 花のお世話をする上で環境は一番大事。どの花にも言える重要なことだ。

 例えば、ナツの国で育つ向日葵がフユの国で咲くことはできるか、と考えれば簡単だ。向日葵にはきっと辛い思いをさせるだろうし、魔法でもなければ元気に咲くことはできない。それと同じ。

「善は急げね。さっそく森の土を調べに行くわ」

 パタンと図鑑をとじて立ち上がる。

「悪いわ。森に入るのはいけないことでしょう?」
「今日も大人たちは忙しいから平気よ。それに、直接この目で森の土をふれてみたいの」

 軍手と、軽く掘り起こすようの小さいスコップを用意する。土を見にいくだけだから、日が落ちる前には家に戻れるだろう。

「ありがとう、チカ」
「気にしないで。私も、ハカセさんには元気になってほしいから」

 まだ一度しか会ったことないけれど、あの人の身に起きていることは私とウィルに似ていて、どこか気になってしまうのだ。
 心珠を咲かせていない……そんな共通点が私たちにはある。

 そのうえハカセさんの場合は心珠がなく、感情も消えてしまっている。どうしてそうなってしまったのかはわからないけど。

 ──環境が悪いのかしら。

 玄関で靴を履き替えながらふと思う。
 花は環境が悪いと咲いてくれない。それどころか枯れて腐ってしまう。

 ハカセさんが置かれている状況は、もしかしたらそれと同じなのかもしれない。
 環境になじめないから、森からでないのだ。環境に適応するため、心珠を作る研究をしている。

 だけど、そこまで気にしなくても良いんじゃないかと思う。なぜかというと、心珠が咲いていなくても仲良くなれた友達がいるから。
 ココネとウィル。それに、リリさん。
 心珠が咲いていなくたって、みんな優しくしてくれる。お母さんやお父さんもそうだ。ハカセさんは悪い人じゃない。きっと、私と同じようにみんな親切に接してくれる。

「なんだか、ココネがハカセさんを外に連れ出したい気持ちがわかったかも」

 胸に隠れる準備をするココネが、きょとんとして顔をあげる。

「そう? だったらチカも説得してくれないかしら。私は最近言いづらくて……」

 家出したことを引け目に感じているのだろう。ココネはぐったりと襟によりかかった。
 その仕草にクスクスと笑って、扉に手をかけるのだった。



「……そんなこと。言うために。……わざわざ。ここへ?」
「あ……はい」

 妖精の森。

 ココネの家に出向いた私は、さっそくハカセさんに森の外へ出てみないかと提案した。本当は森の土を調べにきたのだけど、プレゼントのことは内緒にしておいてほしいと頼まれているので、ハカセさんにとっては「わざわざ」なことになる。

 ハカセさんは遠い目をしていた。その雰囲気だけで、説得は失敗しているとわかる。
 どうして外に出たがらないのだろう。

 私は、さっきリリさんと友達になれたことを話した。ウィルも、最近は仲良くやれているような気がしてる。……給食のデザートを渡さなければいけない毎日だけれども。

 それにココネ。心珠のない妖精と一緒に過ごせているのが良い証拠だと思ったのに。
 ハカセさんの顔色に変化は見られなかった。

「ボクのことは。……気にかけないで」

 それに、しゃべり方が以前会ったときよりも遅い。
 元気がないように感じると言っていたのはこのことだろう。
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