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ココネのおねがい
プレゼントの相談
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「ハカセさんにプレゼント?」
帰宅してさっそく詳しく聞くと、ココネは悩ましげに話してくれた。
「うん。ハカセ、なんだか元気がなくなってるように見えてね。もしかしたら、勝手に森から出ていったこと、まだ怒ってるんじゃないかって思って」
私の机に腰を落ち着けてため息。心配そうな言葉には影が落ちていた。
お母さんとお父さんは祭の準備にでかけている。なので、いまは二人で安心して会話することができるのだけど。
「そう? あのとき見た感じだと、もう許してるような気がしてたけど」
ハカセさんの感情はわかりづらい。
でも、別れ際は穏やかに私とウィルを見送ってくれていた。それは間違いないはずだ。
「ココネは森からでかけることをハカセさんに許されてるのよね? だったら、怒ってるわけじゃないと思うけど」
「でも、羽を治してくれたあたりから、なんだか受け答えが前よりも鈍くなってるような感じで……だから」
「花のプレゼントを贈って元気になってもらおう、か」
それで花畑にいたとき、花を一本もらう、と言ってたのね。
「でも、せっかくだから自分で育ててみようと思うわ。あそこから摘み取るのもなんだか気が引けちゃうし。高価なものも混じってるんでしょう? だったら、チカに花を選んでもらって、そのお世話の仕方も教えてもらおうかなって」
「え、私?」
指名されて頬がにやける。花のお世話を教えてほしいなんて、そんなの──
「ウィルからも聞いてるわ。チカって、お花のこと詳しいんでしょ?」
「ええもちろん! 任せて! 精一杯お手伝いしてあげるわ! 一緒にキレイで立派な花を咲かせましょう!」
すっごく楽しいに決まってるじゃない! 花に関することならクラスのみんなより自信がある。安心させる意味をこめて胸をドンと叩いた。
「な、なんだかチカ、目の色が急に変わったわね」
「そう? そんなことよりココネはどんな花を育てたいの? 一年草? 多年草? どの国のお花に興味あるかしら? オススメは環境に慣れてるハルの国の花が一番良いと思うけど。あ、そうだ。種から育てるか苗から育てるか希望はある? 球根から手をつけるっていうのもあるけど。でも、一番お手軽なのは、お店で鉢ごと買うことだけど、こっちはお金がかかっちゃうかな。どこで世話をするかにもよるわね。森の中は日当たりが悪そうだし、でもハカセさんの家だったら日の当たるところもあるし気にしなくても」
「チカ……ストップ、ストーップ! わかんない、全然わかんないよ!」
「ハッ」
飛び回るココネに制止されて我に返る。勢いがとまらなさすぎた。
「ごめん、ちょっと興奮しちゃって」
「……チカとお花の話をするときは要注意ね。ビックリしちゃったわ」
「エヘヘ」
頭をかいてちょっと反省する。
気を取り直し、改めてココネに希望を聞いてみた。
「どんな花をプレゼントしたいの?」
「えっと、日頃の感謝が伝わるような花がほしい、かな」
感謝、か。真っ先に思い浮かんだのはカンパニュラの花。花言葉も「感謝」という意味が込められているけど、あれは二年草だ。開花させるとなると成育で一年以上もかかる。
他には、ダリア、キキョウ、カスミソウが思い浮かぶ。このなかだとカスミソウが一番良いかもしれない。ダリアはココネより大きくなってお世話が大変そうだし、キキョウはナツの国の花だ。初心者には難しいかも。
と、そこまで考えてふと思いつく。
どんな花をプレゼントしたいかなんて聞いておいて矛盾するのだけど。
「だったら、ココネが気に入った花を贈れば充分だと思うわ。花のプレゼント自体感謝の意味がこもってるし、まごころ込めればきっとハカセさんも喜んでくれるわよ」
「そ、そうかな」
ネガティブな意味のある花を選ぼうとしたら、もちろんアドバイスはするつもり。なんだって良いとは思う。ハカセさんだってココネを大切に想っているだろうし、どんな花を受け取っても喜ぶだろう。
大事なのはその行為にある、と思うから。
大雑把に言ってしまうなら、ネガティブな意味合いの花でも良い。
育つ花、咲く花、それぞれに意味を勝手に着けたのは私たち人間。
そこに生きる植物にとっては、何ら関係のないこと。
「よ、よし。なら、頑張ってみようかしら」
「その意気よ。私も手伝うから、何かわからないことがあったら遠慮なく聞いてね」
言いつつ、部屋からお父さんに買ってもらった花の図鑑を引っ張り出してくる。
とても分厚くて花がたくさん載っていて、挿絵入りでわかりやすいものだ。ココネはそこに降りたって、ページをめくってはその上をトテトテと行ったり来たり吟味していく。
「そういえば、森の家の近くに花畑があったけど、あれはココネが世話してたわけじゃなかったの?」
「ううん、世話はしたことないわ。私の食事も兼ねてるのだけど、研究用の花畑でもあるからあまりさわらないようにって、ハカセに言われてたの」
研究用かあ。それなら仕方がないかな。
なんでも、おなかが減ってるとき以外は近づかないようにと言われてるらしい。普通の花畑だったし、ココネも野生の花と変わらないと言っていた。
何か違いがあるのだろうか。
帰宅してさっそく詳しく聞くと、ココネは悩ましげに話してくれた。
「うん。ハカセ、なんだか元気がなくなってるように見えてね。もしかしたら、勝手に森から出ていったこと、まだ怒ってるんじゃないかって思って」
私の机に腰を落ち着けてため息。心配そうな言葉には影が落ちていた。
お母さんとお父さんは祭の準備にでかけている。なので、いまは二人で安心して会話することができるのだけど。
「そう? あのとき見た感じだと、もう許してるような気がしてたけど」
ハカセさんの感情はわかりづらい。
でも、別れ際は穏やかに私とウィルを見送ってくれていた。それは間違いないはずだ。
「ココネは森からでかけることをハカセさんに許されてるのよね? だったら、怒ってるわけじゃないと思うけど」
「でも、羽を治してくれたあたりから、なんだか受け答えが前よりも鈍くなってるような感じで……だから」
「花のプレゼントを贈って元気になってもらおう、か」
それで花畑にいたとき、花を一本もらう、と言ってたのね。
「でも、せっかくだから自分で育ててみようと思うわ。あそこから摘み取るのもなんだか気が引けちゃうし。高価なものも混じってるんでしょう? だったら、チカに花を選んでもらって、そのお世話の仕方も教えてもらおうかなって」
「え、私?」
指名されて頬がにやける。花のお世話を教えてほしいなんて、そんなの──
「ウィルからも聞いてるわ。チカって、お花のこと詳しいんでしょ?」
「ええもちろん! 任せて! 精一杯お手伝いしてあげるわ! 一緒にキレイで立派な花を咲かせましょう!」
すっごく楽しいに決まってるじゃない! 花に関することならクラスのみんなより自信がある。安心させる意味をこめて胸をドンと叩いた。
「な、なんだかチカ、目の色が急に変わったわね」
「そう? そんなことよりココネはどんな花を育てたいの? 一年草? 多年草? どの国のお花に興味あるかしら? オススメは環境に慣れてるハルの国の花が一番良いと思うけど。あ、そうだ。種から育てるか苗から育てるか希望はある? 球根から手をつけるっていうのもあるけど。でも、一番お手軽なのは、お店で鉢ごと買うことだけど、こっちはお金がかかっちゃうかな。どこで世話をするかにもよるわね。森の中は日当たりが悪そうだし、でもハカセさんの家だったら日の当たるところもあるし気にしなくても」
「チカ……ストップ、ストーップ! わかんない、全然わかんないよ!」
「ハッ」
飛び回るココネに制止されて我に返る。勢いがとまらなさすぎた。
「ごめん、ちょっと興奮しちゃって」
「……チカとお花の話をするときは要注意ね。ビックリしちゃったわ」
「エヘヘ」
頭をかいてちょっと反省する。
気を取り直し、改めてココネに希望を聞いてみた。
「どんな花をプレゼントしたいの?」
「えっと、日頃の感謝が伝わるような花がほしい、かな」
感謝、か。真っ先に思い浮かんだのはカンパニュラの花。花言葉も「感謝」という意味が込められているけど、あれは二年草だ。開花させるとなると成育で一年以上もかかる。
他には、ダリア、キキョウ、カスミソウが思い浮かぶ。このなかだとカスミソウが一番良いかもしれない。ダリアはココネより大きくなってお世話が大変そうだし、キキョウはナツの国の花だ。初心者には難しいかも。
と、そこまで考えてふと思いつく。
どんな花をプレゼントしたいかなんて聞いておいて矛盾するのだけど。
「だったら、ココネが気に入った花を贈れば充分だと思うわ。花のプレゼント自体感謝の意味がこもってるし、まごころ込めればきっとハカセさんも喜んでくれるわよ」
「そ、そうかな」
ネガティブな意味のある花を選ぼうとしたら、もちろんアドバイスはするつもり。なんだって良いとは思う。ハカセさんだってココネを大切に想っているだろうし、どんな花を受け取っても喜ぶだろう。
大事なのはその行為にある、と思うから。
大雑把に言ってしまうなら、ネガティブな意味合いの花でも良い。
育つ花、咲く花、それぞれに意味を勝手に着けたのは私たち人間。
そこに生きる植物にとっては、何ら関係のないこと。
「よ、よし。なら、頑張ってみようかしら」
「その意気よ。私も手伝うから、何かわからないことがあったら遠慮なく聞いてね」
言いつつ、部屋からお父さんに買ってもらった花の図鑑を引っ張り出してくる。
とても分厚くて花がたくさん載っていて、挿絵入りでわかりやすいものだ。ココネはそこに降りたって、ページをめくってはその上をトテトテと行ったり来たり吟味していく。
「そういえば、森の家の近くに花畑があったけど、あれはココネが世話してたわけじゃなかったの?」
「ううん、世話はしたことないわ。私の食事も兼ねてるのだけど、研究用の花畑でもあるからあまりさわらないようにって、ハカセに言われてたの」
研究用かあ。それなら仕方がないかな。
なんでも、おなかが減ってるとき以外は近づかないようにと言われてるらしい。普通の花畑だったし、ココネも野生の花と変わらないと言っていた。
何か違いがあるのだろうか。
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