女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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思いがけないプレゼント

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(煮ボアはおいしいにゃ~♪)

 ハクがとろけそうな顔をしている。口に合って良かったよ^^

「ガレット、おいしいですね~! いつの間に作ってくれたんですか?」

 今日は私のほうが早起きだったと思ったのに。

「顔を洗いに行った時に、ルシィが持って来てくれたのさ」

「ルシィさんが? 」

(おいしいのにゃ! ライムも気に入っているのにゃ!)

(うん、おいしいね~^^)

「朝ごはんの礼だと言っていたよ」

「そうですか。嬉しいですね!」

 朝から手間だっただろうに。本当に嬉しいな♪

「アリスさんの作るものは美味しいからね。嬉しいのはアタシ達の方さ」

 好き勝手している私にマルゴさんは本当に寛容だ。 だからこそ、確認しておかないといけない。

「そう言って貰えて嬉しいです。 
 ……マルゴさんにお願いが1つと、相談が2つあるのですが」

「なんだい?」

「少量ずつでいいので、調味料を分けてもらえませんか? 支払いは肉でお願いしたいのですが…」

 本当に、少量ずつで良いから、是非! もう、調味料がないと旅立てない! 決死の覚悟で見つめていると、

「いいよ。いつが良い?」

 マルゴさんは拍子抜けするほど、あっさりと承諾してくれた。

(これで、旅先でも美味しいものが食べられるよ!)

 ハクと喜びを分かち合おうと話しかけると、悪い顔をして聞いてきた。

(マルゴの持っているものを複製しようとは考えないのかにゃ? その方がずっと多く手に入るにゃ)
 
(人の持ち物を勝手に複製するなんて、泥棒みたいでイヤだよ。 それより、複製は人の持ち物まで複製できるの? 万引きし放題になっちゃうよ!?)

(できるにゃ! 複製しても元の物は減らないから、問題ないにゃ~)

 ハクは悪い顔のまま笑って言う。そんな顔も可愛いんだけどね! でも、

(しないよ。私の良心が減るもん。 大問題だよ!)

 そんなことをしたら、恥ずかしくてビジューに顔向けできなくなる。

 守銭奴・ハクは怒るかな?と思って見てみると、意外にも笑っていた。

(そうにゃ! できることと、して良いことは別にゃ。アリスはわかってるにゃ~♪)

 …どうやら“保護者”モードで“お試し”されたらしい。

 今夜のごはん、減らしちゃおうかな……。 ひそかに意地悪を考えていて、マルゴさんへの返事を忘れていた。

「アリスさん? いつが良いんだい?」

「先に相談を終えてから、マルゴさんの手が空いたときにお願いします」
 
「2つあるんだったね。なんだい?」

「朝ごはんの事です。 ルベンさんの家の分も作っていますが、マルゴさんの家に迷惑を掛けているんじゃないかと…」

「これも調味料のことだね? ルベンの家とは家族ぐるみの付き合いだから、アリスさんさえ良いのなら、気にせずどんどん使っておくれ」

 マルゴさんはにっこりと笑いながら言ってくれた。

 良かった! 今夜も安心してごはんを作れる♪

「たくさん作ったほうが美味しいですから、マルゴさんにそう言ってもらえて安心です^^
 それと、昨日解体したお肉の件ですが、一旦、白紙に戻しませんか?」

 そう言うと、マルゴさんはびっくりした顔をした。

「村と店で買い取らせてもらった肉だね? どういうことだい?」

「さっき、アイテムボックスの整理をしていたら、思っていたよりもワイルドボアとオークと猪があったので、店にはオークとワイルドボアを、村には猪を買って貰った方がいいんじゃないかと思ったんです。 
 ハウンドドッグもコボルトも、食べるにはあまり向かないようなので……」

 十分にお肉を持っているとわかった以上、おいしくないお肉を売るのは心苦しい。

「ああ、そう言うことかい。 そうだねぇ………」

 マルゴさんはしばらく考え込んでから、おもむろに私を見て聞いた。

「アリスさんにとって肉はワイルドボアクラスが当たり前なんだね?」

 ワイルドボアを食べたのも初めてだったけど…。

「そうですね……。 
 実は、ハウンドドッグもコボルトも食べたことがないので、なんとも言い難いのですが…。
 肉質としては、ワイルドボアより美味しくない肉を食べたことはなかったと思います」

 日本で普通に売っているお肉は牛・豚・鶏。安いお肉を買っても普通に美味しかった。

 “不味い肉”を手に入れるほうが難しかったように思う。

「食べたことのないハウンドドッグやコボルトの肉が不味いと思う理由はなんだい?」

「それは【鑑定】の結果で…」

 “美味しくない”とか“味はイマイチ”と出たから。 そう答えると、マルゴさんは深く頷いた。

「アリスさんの【鑑定】スキルは優秀だねぇ。 でも、その結果に“食べられない”とは出ていなかっただろう?」

「はい。ゴブリンは“食べられない”って出ましたけど…」

「そう言うことだよ。ハウンドドッグもコボルトも“食べられる肉”ってことなのさ。
 こういった村では、ハウンドドッグもコボルトも、“身近な肉”で、街の孤児院じゃあ“安価でありがたい肉”になり、奴隷たちからすれば“ごちそう”になるんだ」

 ………。

「もしも、アリスさんが『自分が食べない不味い肉で金を受け取るのは申し訳ない』と思っているのなら、それは違う。 “需要”がある以上“供給”することは不誠実なことではないんだよ」

 不誠実ではない…。 需要がある…。

 なら、いい、のかな……?

「だから、昨日の話はそのままで、昨夜のハウンドドッグ以外にも肉に余裕があるなら、追加で売ってくれると嬉しいんだけどねぇ」

 私の心の動きを読んでいるかのように、マルゴさんは話を進めてくる。

(ハク、確認してなかったけど売ってもいいでしょ?)

(僕たちが食べる分を残してくれるなら良いにゃ。足りなくなる前にまた狩れば良いにゃ♪)

 よし! 了承は取った。

「ホーンラビット3匹、猪2頭、ワイルドボア3頭、オーク2頭ほどなら余裕があります」

「いいねぇ! 村と店で全部貰いたい。後で解体をしながら値段を相談させておくれ」

「では、その時に調味料の値段もお願いします」

 切り良く食べ終わったので、席を立とうとすると、

「ルベンが迎えに来るまで時間がある。今のうちに調味料を分けてやるよ」

 マルゴさんはそう言いながら、台所の棚を開け始めた。

「今、家にあるのは、醤油、みりん、塩、胡椒、砂糖、唐辛子くらいかね」

 いいながら、どんどんとテーブルに置いていく。

「アリスさんは酒も使っていたね?」

「はい。できたらおいしくないお酒がいいんですが…」

 おいしいお酒はもったいなくて飲みたくなるから、おいしくないほうがいい。

「美味くない酒がいいのかい? アリスさんの注文は変わっているねぇ!」

 マルゴさんはお酒も出してくれながら笑って言った。

「さて、どれだけ欲しい?」

 どれだけ…。

 ほんの少量ずつでも複製で増やせるけど、少量過ぎるとおかしい気がするし、かと言って多いと、マルゴさんが困るだろう。どのラインが妥当なのか……。

「醤油、みりん、酒を100ccずつと、胡椒、砂糖、唐辛子を10gずつお願いできますか?」

 これくらいなら、そこまで困らせることもないかな?

「なんだい、それっぽっちじゃ足りないだろう?」

 もう少し多くても良かったらしい…。 でも、

「旅の間はまともに食事を作るのは難しいと思うので。せいぜい串に刺したものを焼いて味をつけるくらいなので、十分かな?と。 治療の対価でもらった塩もありますし」

 複製していっぱい増やすし……。

「本当にそれだけでいいなら、金はいらないから持っておいき」

「え?」

「家にある全て、って言うなら話は別だが、それっぽっちの量なら金なんていらないさ」

「いいえ。 調味料が貴重品だということは、わかったつもりです。 只でいただくなんて事できません」

 とってもありがたい申し出だったけど、丁重にお断りした。

 でも、マルゴさんは、

「いいんだよ。アリスさんはアタシ達が無理に留まって貰っている客人なんだ。本来ならこっちが最大限にもてなしをしないといけないのに、あんたは逆に、アタシやルベン達をもてなしちまう上に村に尽くしてくれている。
 昨夜のハウンドドッグ退治だってそうさ。 
 少量の調味料なんかで礼になるなんて思っちゃいないが、受け取っておくれ」

 そう言って、頭を下げる。

(素直に貰っておくにゃー)

 どうしようかと困っていると、ハクが話しかけてきた。

(マルゴは“まとも”な人間にゃ。一方的に多くを受け取るだけでは、心苦しいのにゃ)

 そう言いながらマルゴさんの肩に飛び乗り、頭でマルゴさんの顎を掬い上げるようにして、顔を上げさせてくれた。

(自覚はないだろうけど、アリスは与え過ぎなのにゃ~。円満な関係を築くには、お礼を受け取るのも大切なことにゃ!)

 0歳の赤ちゃん猫(虎)に諭されてしまった……。 でも、マルゴさんの負担になるなら、遠慮なく貰っておこう。

「ありがとうございます。 ありがたく、いただきます」

 お礼を言うと、マルゴさんはほっとした顔で笑って、

「ああ、そうしておくれ。 さて、何に入れようかねぇ」

 さっそく物色を始めた。

「では、これに」

 インベントリから小ビンを取り出してテーブルに置いたのだが、それを見たマルゴさんは首を横に振り、

「それは、ポーションや薬を入れるためのものなんだろう? ちょっと待っていておくれ。何かあるはずだ」

 そう言って、棚を開け閉めしている。

「これでいいだろう」

 そう言って出してくれたのは、500mlほど入りそうなミルクボトルだった。 

 ミルクボトルがいっぱいになるまで醤油、みりん、酒を。 半分強の量の胡椒、砂糖、唐辛子を入れて、

「受け取っておくれ」

 と差し出してくれた。お願いしていた量より何倍も多いので躊躇したが、ハクに頬を舐めて促されて、素直に受け取ることにした。

「マルゴさん、ありがとうございます! これだけあれば、旅の間も美味しいものを食べることができます!」

 お礼を言って受け取ると、

「アリスさんが旅先で何を作るのか、気になるねぇ」

 マルゴさんがいたずらに笑って言う。

「旅先ではかまども何もないので、大したものは作れませんよ~」

 私が仕方なさそうに笑って返すと、

「かまど、ねぇ…」

 マルゴさんは腕を組んで考え込んでしまった。

 いや、おねだりしてないですからね!?  調味料だけで十分以上に嬉しいから!
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