女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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味覚は正常です  2

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「【クリーン】! 【キュア・トリプル】! 【リカバー・ダブル】!!」

 回復の魔法は息子さんの全身を覆い隠すようにしばらく光り続け、ゆっくりと体に滲みこむ様に消えていった。

「リカバー!? <治癒士>だったのか…!?」

【診断】の結果は良好。ルシアンさんの時と同じ、貧血と空腹状態だけだ。

「怪我がない…。心臓も規則正しく動いているし、息もある。 ……治ったのか?」

 荷車の周りにいた男性たちが口を開けて呆けている中、マルゴさんの旦那さんは、恐る恐る、といった風に息子さんの様子を確かめている。

「……ん。 ……父さん?」

「オースティン!!」

 自分の体をぺたぺた触られて不快だったのか、機嫌が悪そうに目を開けた息子さんは、いきなり力いっぱいに抱きしめられて目を白黒させていた。

「いっ、痛い! 父さん、痛いっ! 離してくれっ!!」

「オースティン! お前、よく、よく……!」

 マルゴさんの旦那さんは印象どおりに力が強いらしい。息子さんが痛がっていることにも気が付かずに、力いっぱいに息子さんを抱きしめて、……泣いていた。

「おやっさん! オースティンが痛がってるぞ!」

「そうだよ、おやっさん! 少し力を抜いてやれ!」

 荷車を囲んでいた男性たちが説得していたが、男泣きしている旦那さんには聞こえていないようだ。

 貰い泣きをしている人もいる。

 しばらく放っておいた方が良さそうなので、かまどを出してごはんの仕度を始めた。

(マルゴの息子、治ってよかったにゃ~)

(うん。マルゴさんを悲しませたくないもんね。本当によかったよ)

 みんな、ろくに食べていなかったようだから、胃に優しいおかゆさんからかな。 まずは芋粥で様子を見よう。 昨夜茹でた残りがあるから時短にもなるし。

 かまどに鍋を置き、炊いているご飯を入れたところで話しかけられた。

「嬢ちゃんは治癒士だったのか! 息子を治してくれてありがとう!!」

 振り返って見てみると、マルゴさんの旦那さんがまた土下座をしている。  感謝してくれてるのはわかるけど、何で土下座?

「いえいえ、頭を上げてください。ほら、立って!」

 土下座をやめさせる為に腕を引っ張って、無理やり立たせた。

「ありがとう! 治療費は今これだけしか持っていないんだが…」

 そう言いながら差し出されたのは、金貨が1枚と大銀貨が5枚。 それに硬貨が入っていると思われる膨らんだ皮袋。

 1500万メレ以上!?  

「すまないが、足りない分は村まで取りに来て欲しいんだが…」

 これでまだ足りないと思うの!?  金銭感覚が崩壊してると思う!!

「息子さんの治療費は、お母さま…、マルゴさんからいただいているので大丈夫です。必要ありません」

「なっ…?」

 旦那さんは一瞬だけ絶句したが、すぐに質問を投げかけてきた。

「妻を知っているのか? 治療費を支払い済みってどういうことだ?」

 息子さんを含めて周りの男性たちも黙って話を聞いている。

「先日までネフ村でマルゴさんやルベンさん達のお世話になっていたんです。息子さんのお部屋をお借りしていました。滞在中は何かとお世話になり、餞別までたくさんいただきましたので、治療費は“お礼”ということで」

 話しながらも、手は休めずに芋粥の仕度をしている。皆さん、随分と疲れているようなので、もう少し塩を効かせてみよう。

「マルゴが何をしたのかは知らないが、これだけの治療に見合うものなのか? 唱えていたのは普通のリカバーじゃなかっただろう? それにリカバー以外の呪文も唱えていただろう?」

「ただのリカバーですよ? リカバーが2回分とキュアが3回分」

 返事をしながらマルゴさんの旦那さん、息子さん、村の男性たち、と順番に【クリーン】を掛けていく。

 随分と埃っぽかったのが、少しすっきりとしたようだ。クリーンで “ひげ”まではどうしようもないから、多少むさ苦しいのは諦めよう。

「うわっ!?」
「すげぇ! さっぱりしてる!」
「なんだ!?」
「リカバーが2回にキュアが3回!?」
「気持ちいいな~」

 皆がそれぞれにクリーンを堪能している間に、芋粥が完成し、

 “ぐぅぅぅぅぅぅ…”

 同時に息子さんの腹の虫が鳴いた。 あれだけの大怪我の後だ、お腹も空くよ~。

「これは【増血薬】。失った血液を増やす薬です。全部飲んだらごはんにしましょうね」

 恥ずかしそうに笑っている息子さんに【増血薬】を渡した。

「ぐいっ!っと一息にどうぞ?」

 じゃないと、みんながごはんをお預けになるよー?

「他の方は食器をお持ちですか? 器とスプーン、コップ等があれば出してください」

 声を掛けたけど、皆戸惑っているようでなかなか動かない。

「こんな人数に、旅の途中の貴重な食料を分けてくれるつもりなのか!?」

 旦那さんがびっくりした顔で聞いてきた。

「芋粥です。ちなみに、最後に出すりんごまでがマルゴさんとルベンさんへのおつりです。 皆さんは遠慮なく、どうぞ?」

「マルゴ姐さんとルベンの…?」

「ええ。マルゴさんとルベンさんの。皆さんもお腹が空いてるでしょう? 食べませんか?」

 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた男性達は、マルゴさんとルベンさんの名前を聞いて安心したのか、動き始めた。

「この敷物の上にどうぞ」
 
 ボアの敷物を広げて促すと、敷物の上に食器を置く。

「あの、飲んだけど…」

 息子さんが普通に【増血薬】を飲み切ったのを見て、旦那さんが辛そうな顔になった。

「お前、命と引き換えに味覚が…」
「狂ってませんから! 改良して飲みやすくなってるだけですから、大丈夫ですよ!」

 旦那さんはマルゴさんと同じ心配をしている。 似た者夫婦か…。

「そうなのか? そんなに貴重なものだったのか! 嬢ちゃんは若いのに、随分と優秀な<治癒士>なんだな!」

 ああ、誤解を解くのを忘れていた。

「私は<治癒士>ではないですよ。 あ、空ビンは返してください」

「「「「<治癒士>じゃないだってーっ!?」」」」

 …息子さん以外の人の声が揃った。 あまりの大声にびっくりして、空ビンを落としかける。貴重な空ビン!!

「ええ、違います。 ほら、旦那さんも息子さんも、早く食器を出してくださいね?」

 再度促して、やっと敷物の上に食器が出揃った。

 出揃ったが……、

(洗ってないにゃね…)

(そうだね。旅先だし仕方がなかったのかな…)

 微妙に汚れた食器を順番にクリーンしてから水を注ぎ、芋粥をよそった。
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