女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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責任者交代

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「……ほう」
「これは……」
「………どうして? どうしておいしいの!? どうしてこれでお腹が痛くならないっていうの!? ウソよ! こんなのずるい!!」

 ミルクの味を確かめるなりまた泣き出してしまったロレナちゃんの代わりに、おじいさんが事情を説明してくれた。

 この国ではミルクは搾り立てをそのまま流通させるのが普通だが、ミルクが傷みやすいのと、お年寄りがお腹を壊しやすいのが問題だった。 

 これまでは、ミルクとはそういう物だと諦めていたが、熱を加えると少しだけお年寄りがお腹を壊しにくいという事にたまたまロレナちゃんが気が付いて、この牧場では加熱処理を始めたらしい。 

 その結果、お客さんの中にもお腹を壊さずに牛乳を飲めるようになった人もいて、もう少し情報がまとまったら<商業ギルド>で<情報登録>する予定だった。

 そこに私がやってきて「加熱処理しない方がおいしい」と言い、「クリーン1発で問題解決」をやらかした、と。

 ……うん、泣くよね。 それは悔しいよ。  

「ねえ、お嬢ちゃん。 クリーンを多用できるのは、アリスの魔力が桁違いに多いからよ? この牧場のミルクの全てにクリーンを掛けられる人は滅多にいないわ」
「この牧場の方法で腹を下すヤツが減るなら、十分に<情報登録>の価値があるんじゃないか」

 護衛組のフォローで泣き止みかけたロレナちゃんは、しばらく考えてまた泣き出した。

「だって、この人、うちのミルクを沸かしてるって知ってた! もう、<登録>してるんだ! せっかくのアタシの発見だったのにぃ!!」

(アリス、何とかするにゃ! 子供の泣き声は頭に響くにゃ……)

 ロレナちゃんの鳴き声が一段と大きくなると、それまで大人しく成り行きを見ていたハクが私の足に体当たりをして訴えてきた。

(ありすぅ)

 ライムは心配そうに、足元にすりすりしてくる。  

 おじいさんは何を考えているかわからない顔で、おばあさんは困った顔で見てるだけ、か。 …仕方がないなぁ。

「ねえ、そうやって泣いていたら、私がこの<情報>をあなたに譲るとでも思っているの?」

 自分が思っていた以上に、低く冷たい声が出た……!  護衛組がびっくりした顔で私を見ているけど、もう路線変更は無理だし…。

「大声で泣き続けていたら、誰かが問題を解決してくれるとでも思っているの?  それでここの責任者だって名乗っていたの?  泣けば問題解決なんて、子供って良いね~。 羨ましいよ」

((………))

 う~ん、なんかイヤミだ。従魔たちも呆れている感じ? でも、この子はここの責任者だって言うんだもん。仕方がないよね?

「な、なによ! ひっく……、ア、アンタなんかにアタシの頑張りがわかるもんかっ! 発見したのはアタシなんだからっ」

「ええ。わからない。 私の国では多くの人間が知ってることだもの。 酪農をしていなくてもミルクが好きな人なら、この牧場の今のやり方よりおいしくする方法を知ってる人だって珍しくないわよ。もちろん、私もね。
 でも、この国では知られていないことなのねぇ。 ふぅん?」

 さぁ、どうするかな? 今すぐ<商業ギルド>に走れば、<自分の情報>に出来る可能性があるって気が付くかな~?

「そんな……。 みんなが知ってるなんて……。 うわぁあああん!」

 あ、また泣き出した……。う~ん…。 これで最後かな?

「ミルクはもう要らないわ。 私、の。あなたはここでずぅぅっと、泣いていなさい。 じゃあね」

 音を立てて椅子から立ち上がってみても、ロレナちゃんは泣き続けている。  

 ダメだ、もう、何を言っていいかわからない…。  噛み殺せなかったため息がこぼれたときだった。

「お嬢さん、すまないねぇ。 うちの孫は、まだまだ幼くて…。
 わしがこの牧場の主のヘラルドです。
 ロレナ、いい加減に泣き止んで、わしとお嬢さんの話をよ~く聞いておきなさい」

 おじいさんに言われたとおりに、しゃくり上げながらも顔を上げたロレナちゃんは、必死に泣き止もうとしているせいでちょっと面白い顔になってしまっている。 

 笑いそうになるのを隠すために顔を背けた先には、興味津々な護衛組の顔が…。 どこを向いたらいいんだか……。









「お嬢さん、この後の予定は?」

「7時30分には裁判所に着いている予定ですので、時間はあまり取れません」

「そうか……。
 お嬢さんはミルクを沸かすと腐りにくくなることと腹を壊しにくくなることを、<商業ギルド>へ登録するつもりはありますか?」

 時間がないと伝えたせいか、ヘラルドさんは直球で切り込んできた。

「ミルクの加熱処理は当たり前のことすぎて、今まで考えたこともなかったですね」

「お嬢さんには、当たり前のことですか?」

「ええ」

「でしたら、お嬢さんの知識をわしらに売ってもらえませんか? 代金は<情報使用料>の半分で。 わしらと共同で<商業ギルド>に<情報登録>をしてください」

「………」

「お、おじいちゃん!? そんな人と共同なんて!」

「ロレナ! おまえは黙っていなさい!」

 いきなりの提案にロレナちゃんだけじゃなくて、私も驚いている。 私に登録の意思はないんだから、ヘラルドさん一家が独占すればいいのに。

「わしらはまだ、ミルクを沸かしておくと腹を壊しにくくなることと、ほんの少しだけ腐りにくくなることしかわかっていない。 <情報登録>をするにはまだまだわからないことが多すぎるんだ。 
 時間をかけて色々と調べ、検証をしてからギルドへ行きたかったんだが、ロレナの心がそれまで持ちそうになくて…」

 それだけわかっていれば、十分に登録の価値があると思うんだけど?  それにロレナちゃんの心が持たないって、どういう事だろう?

「<情報登録>が出来たら<情報使用料>が入ることになる。 そのことは知っていますか?」

 うん。マルゴさんが教えてくれた。 地球の“特許使用料”みたいなものが入るんだよね?

 私が頷いたのを見て、ヘラルドさんが話を続ける。

「うちのミルクは“腹を壊しにくい”って話は、もう、町に広がり始めていてなぁ。 同業者はもちろん、利に聡い者も興味を持ち始めた……。 
 うちの従業員は元々住み込みだから、お客との接触を一切させないことで秘密を守っているが、従業員の家族から従業員に“ミルクの秘密を教えろ”という手紙が届くようにもなった。 
 おかげでロレナが過敏になっちまって、少しでも怪しいと思ったらお嬢さんにしたように……」

 ああ、激昂して追い出されかけたな。 うん、子供の情操には良くない環境になってるね。

「だから、頼みます。お嬢さん! お嬢さんの持っている知識とをわしらの情報を共同で<情報登録>してください!」

 ヘラルドさんが頭を下げているのを見ながら、どうしたものかと思っていると、それまで黙って話を聞いていたエミルが、

「共同にする必要はなく、アリスが1人で<情報登録>できるんじゃないのか?」

 と言ってしまった。 やっぱり気が付いたかぁ……。
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