女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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VSソラル 圧勝!

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 “ドンッ”

「…ブッ! な、なんだ!?」

 近づいてくるウーゴ隊長に気が付いたアルバロとイザックが少し横に避けて自分たちの間に隙間を空けると、何を勘違いしたのかソラルが意気揚々と2人の間を通ろうとして、硬い壁に弾かれた。

「無礼者! そこを退…け…」

 無様に尻餅をついたソラルを領兵が助け起こしながらいきり立ったが、ソラルがぶつかった壁に気が付いて勢いをなくした。

「……ウーゴ殿?」

「招かれていない席に力尽くで押し入ろうとは、そちらこそ無礼ではないか」

 領兵たちはウーゴ隊長を見て驚きのあまり立ち尽くしているが、ソラルは“無礼者”扱いをされて頭に血が上ったらしい。

「子爵であるわしが平民の住む“小屋”にわざわざ足を運んでやっているんだ! 平伏して招きいれるのが当然であろうが!」

 ふんぞり返って訳のわからない理屈を吠え立てる。 とりあえず、ソラルはこの辺りの住人からの好感を根こそぎなくしたな。 こんな静かな夜に大声で喚くとどの辺りまで声がきこえるんだろうね~?

 ああ、お偉い“お貴族さま”には平民から寄せられる好感なんか必要ないのかな?  だったら、遠慮なく私も嫌っていいよね?

 私がソラルに対してどんどん負の感情を募らせている間も、ソラルは1人で勝手にしゃべり続けている。

「ここにいるアリスという女は子爵であるわしの役に立てる折角の機会を無駄にしたばかりか、何を勘違いしたのか “賠償金”などという物を払わせようとした愚かな女だが、まだ年若く、分別ふんべつがないのもしかたがない。
 慈悲深いわしは、反省と謝罪の機会を与えにわざわざ来てやったのだ! 感謝して平伏するのが当然であろう!」

 ……ソラルはこの部屋の中にいる人間から放たれる冷たい視線を感じられないらしく、得意げに顎を反らし鼻の穴を膨らませている。 呆れたみんなが黙っていることをどう受け止めたのか、

「わしにすがって謝罪をするなら、わしの伽をする栄誉を与えてやってもいいんだぞ!」

 と勘違い爆発な発言をしてくれた。

 アルバロとイザックがそれぞれの武器に手を添え、マルタとエミルが立ち上がり、従魔たちが私の腕から飛び出そうとしている緊迫した空気の中、モレーノ裁判官の穏やかにも聞こえる静かな声が響いた。

「ウーゴ、先ほどから豚語が聞こえているがどうしたことか? 
 こんな町中まちなかにオークの侵入を許すなど、あってはならぬことだ。 早く退治するがいい」

「ハッ! ただいま!」

 裁判官からの下知で、それまではアルバロとイザックの肩に手を置いて2人を止めていた隊長があっさりと剣を抜いた。

 抜き身の剣先を向けられたソラルの顔は一気に蒼白になりよろける様に後ろに身を引くが、必死に虚勢を張ることは忘れなかった。

「な、中の者は何者か!? ぶ、無礼ではないか…!」

 裁判所の法廷兵の分隊長に命令を出来る人はそんなに多くはないと思うけど、ソラルにはピンとこなかったらしい。

 ゆっくりと姿を見せたモレーノ裁判官を見て、ソラルは見事に泡を食った。

「モ、モ、モレーノさま!?  どうしてあなたがこんな所に…っ!?」

 アワアワしているソラルとは対照的に、とても穏やかな声で裁判官は返事を返す。

「そう言う子爵はなぜここに? 私はあなたにアリス殿への接近を禁じたはずですが?」

「そ、それは…!」

「子爵にとっては一裁判官と交わす誓約など、意味のないものでしたか」

「そ、そんなことは決して……っ!」

 裁判官はソラルへ私との接触を禁じてくれていたらしい。 お陰で今まで大人しかったのか。 

「そういえば、レイナルド殿がこの町へ到着し、明日が話し合いの日に決まりましたねぇ……。
 今日の内にアリスさんを脅して、己の失点をなかったことにするつもりでしたか?」

 裁判官は穏やかな口調のまま、ソラルを追い詰めていく。

「力ずくで押し入り大声で恫喝して賠償金の支払い要求をなかったことにさせようとした上に、身分を傘に着て少女に伽を強要しようなど、貴族籍に身を置く者のすることではないとは思いますが?」

「わしは決してそんなつもりでは……っ!」

「では、どういったつもりだったのか私に申し開きができると言うのかっ? 不愉快だ! 今すぐ帰りなさいっ!」

「………くっ」

 ソラルがくだらない言い訳をしようとしたが、そんな隙を与えることなく裁判官はソラルを追い返してくれた。 いつも穏やかな裁判官が怒ると結構な迫力で、ソラルが連れていた領兵たちも慌てて逃げ帰る。

 ……ああ、やっとわかった。 裁判官と隊長は、私を守る為にここへ泊まりに来てくれたんだ!

 ソラルがここに来るとは限らなかったのに、押し付けがましいことは何も言わずにただ「泊めて欲しい」とだけ言って。 

 2人が持ち込んだ書類の量を見ても、とても忙しいのに無理をしてくれたことがわかる。

 私が2人にお礼を言うと、護衛組も一緒にお礼を言ってくれた。 ハクとライムはそれぞれに裁判官と隊長の腕に飛び込んで、可愛いしぐさでお礼をしてくれている。

 私にできるお礼は……。

 とりあえず今夜は私の毛皮を2人の寝床に提供しようとしたが、2人ともちゃんと自分の布団と寝袋を持ち込んでいたので、寝る前に冷えたお水を出して、クリーンをかけて気持ちよくすっきりしてもらうことしか出来なかった。 

 明日は心を込めて、おいしいごはんでおもてなしをしよう!
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