女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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初めての馬車旅 5

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 今夜のごはんはハンバーグ。もちろんイザックのリクエストだ。

 それにポテトサラダとご飯と野菜たっぷりのスープ、フローズンヨーグルトを出したんだけど…、

「他にも何か食べる?」

 今日はお昼ごはんを出さずにおやつだけだったから、おやつと晩ごはんの1食だけで5,000メレも貰うことになってしまう。 あまりにも暴利だと思ってイザックに聞いてみたけど、

「そうだな、スープとは別に水も欲しい」

 リクエストされたのは水だった。

 ……イザック。私が持っている水は湖や川で汲んだものだから、元は無料ただなんだよ。もう少し値の張るものを言って欲しい。そんな思いを込めてイザックを見つめると、イザックも私の言いたいことに気がついて苦笑を漏らした。

「夕食はこれで十分だろう。その代わり夜食に何か出してくれよ。 ああ、眠気覚ましのコーヒー、いやカフェオレがいいな」

「そっか。夜番の時間は長いもんね。 うん、わかった!」

 今無理にたくさん出さなくても大丈夫だと気が付いて、ほっとする。

 ……どうやら昼間サルに言われた「連れの男を相手にぼったくり」が、心に引っかかっているらしい。

 少し悔しくて思わずサルを睨みつけてしまうと、

「あいつが昼に言ったことが気になるのか? アリスの作る飯なら1食5,000メレでも文句はないぞ? それにおかわり自由なんだろう? 俺はチーズ入りハンバーグも食いたい」

 私の視線を遮ってイザックが笑う。

「ほら、ハクとライムが待ちくたびれちまうぞ!」
「んにゃ~~」
「ぷぅきゅ~~」

 イザックの言葉に慌てて従魔たちを見てみると、並んだごはんを前に、切なそうに❝待て❞をしている状態だった。

 準備は整っているのに、私のことを待ってくれているらしい。

「待たせてごめんね! 食べようか!」

 急いで座り直してから、両手を合わせる。

「「いただきます!」」
((いただきます)にゃ!)

 いつの間にかイザックも「いただきます」と言うようになっていて、従魔たちと目を合わせて笑ってしまった。 なんとなく、嬉しい♪



 今夜の晩ごはんも好評で、イザックは宣言通りにチーズ入りハンバーグとご飯とフローズンヨーグルトをおかわりして、ハクとライムはチーズ入りハンバーグとポテトサラダとフローズンヨーグルトをおかわりした。

 こちらを興味深そうに見ていた御者親子が、ハクとライムの食べっぷりを見て驚愕の目で見ていたことは気が付かないふりをする。 説明が面倒だったからね。

 でも、気持ちはわかるよ! ライムはともかく、ハクの食べる量は絶対におかしいよね!? 



 他の乗客たちも食事を終えて、私たちの様子をちらちらとうかがいながら寛いでいる様子が見える。

 私がちょっと❝伸び❞をしようと立ち上がると、みんなが❝ビクッ❞としてこちらを見たので、イザックが、

「大丈夫だ! 危険が迫っていると判断したら声をかけるから、それまではゆっくりしていろ」

 と苦笑しながら声をかける。 それだけでみんなに笑顔が戻るんだから、Bランク様様だね。

 面倒な依頼が増えるくらいなら低ランクのままで稼ごうと思っていたけど、冒険者ランクを上げるのは大切なことなんだと認識を改めた。

 私たちが寛いでいるだけでみんなが安心するなら、とのんびりとお茶を飲みながら話をしていると、魔力感知に反応が出た。 少し遅れてイザックも反応をしたので、視線を合わせてみる。

「種類はわかるか?」

「うん、ハウンドドッグ」

「じゃあ、俺が」

「私が行く! イザックはお留守番!」

「…なんでだよ? 一緒に行くぞ」

「たかが犬3匹にBランク様が出張る必要はないでしょ? ここでのんびりとしていて、みんなを安心させてあげて?」

 インベントリから<鴉>を取り出しながら小声できっぱりと言い切ると、イザックが不服そうな顔をしながらも私の意図を理解してくれた。

「……大丈夫なのか?」

「うん! 心配だったら、ここで戦闘準備をして待機していて? 取りこぼしが出てもイザックがいてくれると安心だし」

「そっちの心配じゃねえよ! アリスは……、いや、愚問だな。  ……雑魚だからって油断するなよ?」

 何かを言いかけたイザックは、私の顔を見て一度ため息を吐くとゆっくりと頷いた。

「わかった! いってきま~す♪」

 何か諦め顔になっているイザックのことが気になったけど、ハウンドドッグがどんどんと近づいて来ているので、さっさと迎撃に出ることにした。

 繁みを越えてみんなの姿が見えなくなったところでライムをハウスに避難させて、ハクと一緒に走り出す。

「どうせならオークが良かったのにゃ!」

「あはは! 犬はおいしくないもんね?」

「仕方がないからさっさと片付けて、ライムを外に出してあげるのにゃ~」

 ハウンドドッグを討伐することに抵抗を感じていない自分を少しだけ❝怖い❞と思いながらも、❝この世界に馴染んでいる❞と感じるのは、元々私が冷たい人間だったからだろうか。

「アリス! 集中するにゃ!!」

「っ!! うん、ごめん!」

 ハクの叱責を受けて慌てて意識を集中させる。 今から、私たちを襲おうとしている魔物の命を奪いに行くんだ。 油断していると、奪われるのは私の命。

 立ち止まり、<鴉>を鞘から抜いて大きく深呼吸を1つ。 

 縦に並んで走ってきたハウンドドッグの先頭の個体に<ウインドカッター>を1発撃ち込むと、ウインドカッターは先頭の個体の頭から胴体まで真っ二つに割り、次を走っていた個体にまで届いた。 痛みに怯んだ個体が「ギャンッッ」という鳴き声と共に横に逸れて、3頭目の個体が姿を見せる。

「ガルルルルっ!!」

 1頭目の死体を踏み台にして私に飛びかかってきた3頭目は、その勢いを受ける形で<鴉>で串刺しにした。

「っ! 重っ!!」

 軽い抵抗だけで<鴉>の刀身はハウンドドッグの体に埋まり、串刺しになったハウンドドッグの重みが私の両手にかかる。 急いで剣を抜こうとしたら、そのままハウンドドッグの体を切り裂いてしまった。

「相変わらずすごい切れ味だけど…… 毛皮を無駄に切っちゃった」

 ハクが怒るかな? と2頭目の個体にとどめを刺してくれていたハクを恐る恐る振り返ると、

「よくやったにゃ! けがもなくて偉いのにゃ!」

 予想に反して、ハクは嬉しそうに私の胸に飛び込んできた。

「いいの? 毛皮の価値が下がっちゃったよ?」

「犬は練習用にゃ! ボアやオークは上手く仕留めるにゃ!」

「ん。了解!」

 ハウンドドッグのことは、高く売れる魔物を綺麗に仕留めるための練習台として考えてくれるらしい。 旅の初期の頃とはスタンスが変わってきたな。ほんの少しだけ余裕ができた気がする。 

 でも、高く売れる魔物で失敗したらやっぱり怒られるだろうから、少しだけ緩んだ気持ちを引き締めなおした。

 ハウンドドッグをインベントリに収納しながらマップを確認すると、マップにぎりぎり入る距離に複数の人の反応があった。 ポイントが赤くなっているから❝害意あり❞。野盗かな?

 ここまではまだ距離があるし、遅くなるとイザックが心配するだろうからとりあえずはみんなの所に戻ることにしよう。

 戻ったら、イザックと取り分の相談もしないとね!
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