女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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初めての馬車旅 16

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「サル。もしもお前たちが逃げている間に魔物や盗賊を倒したとして、その獲物の価値のある部位を俺たちに分けてくれたのか?」

 ビビアナに笑顔が戻り、放心状態から抜けたサルにイザックが聞いた。

「あ? ああ。そんなこと……、当然だろ?」

 始めは「こいつ、何を言っているんだ?」とでも言いそうな顔をしていたサルは、取り繕うように肯定の返事を返す。

 でも、

「当然、渡さない。 私たちは違うパーティーなんだから、お互いが離れた所で得たものを後から分けてやる義理なんかないでしょ? 少なくとも、今までそんな状況で獲物を譲ったことなんてないよ」

 ビビアナがあっさりとサルの言葉を否定してしまった。

「……だったら、俺たちがお前たちに分けてやる必要もないんじゃないか?」

 イザックが低い声で言うと、私と従魔だけでなく、話を聞いていた乗客たちも頷く。 気まずそうに視線を逸らしたサルは、自分が嘘つきだという自覚があるらしい。 

「それに、こいつらを倒した俺たちに一言の断りもなく勝手に戦利品に手を付けたり、まだ何頭いるかもわからない馬をきっちりと2頭も要求した上に、先に良い馬を選ばせろとは礼儀知らずで図々しいにも程がある。 
 そんな奴にくれてやる分け前なんてない!」

「………。 わかった。だったら、あんたたちが先に選んだらいい。 どうせ全部は持てないだろ? 残った物から俺たちの分を選ぶ」

「そういう条件なら全部私たちの物ね。私1人でも持てるから」

 イザックが何に怒っているのかを、わかっているのかいないのか。 サルが一言も謝らないまま自分たちの分け前を要求するので、ついつい口を出してしまった。

「は!? こいつらの持ち物が全部おまえのアイテムボックスに入るって言うのか?」

 サルが驚いたように大声で聞き返してくるけど、これ以上は時間がもったいないと思って放置する。

 イザックに向き直ると、面白そうな顔をして私を見ていたのでこの対応で問題はないらしい。 さっさと行動を開始する。

 まずはディエゴと乗客たちに、「これから盗賊たちの持ち物を戦利品としてもらい受けるので、少し時間を欲しい」とお願いした。

 乗客たちが「あんたたちの当然の権利だ。 怪我一つなく守られた俺たちに異論はない」と快諾してくれたので、さっそく盗賊たちの死体へと歩き始めると、

「これだけの人数のはぎ取りにどれだけ時間がかかるか理解しているのか? ぐずぐずしてたら夜になっちまうぞ!」

 サルが嫌味っぽい口調で言った。 サルの思惑はともあれ、言っている内容は正論だから少し考えてしまう。

 イザックとの共通認識は、❝ビビアナはともかく、サルにオイシイ思いをさせるのはイヤ❞でまとまっているので、後はどう時間を短縮するか……。 

 耳打ちでイザックにいくつかの確認をしてから、一つの提案をしてみる。 イザックが感心したように笑顔で頷いたので説明はイザックに任せて、私は一番近くの盗賊の装備を外しに向かう。 

 …追いはぎのようで気分のいいものじゃないけど、大事な戦利品だから無駄にはしない。

「このまま長くあんた達を待たせるのは心苦しい。 そこで相談なんだが、御者と乗客の中で血を見るのが平気だってヤツがいれば、手伝ってくれないか? この後は盗賊たちの乗っていた馬を捕獲しに行くから、少しでも早くこの作業を終わらせたいんだ。
 バイト代として1人1万メレ支払うぞ! 手伝うことで汚した体と服は、クリーン魔法できれいにすると約束しよう!」

 私の提案は、アルバイトを雇うこと。 

 盗賊たちの身に付けている装備は、どんなに低く見積もっても1人1万メレ以上はするらしいので、アルバイト代を支払っても私たちに損はない。 乗客たちもただ待つよりは、少しでも収入がある方がいいかなぁ?と思った私の提案は、思った以上の歓声と共に受け入れられた。

 参加希望はディエゴぎょしゃ親子に禿頭のおじさんとお腹の出たおじさん。それに、ペーター君のお父さんだ。お母さんはペーター君を見ていなくてはならないからと残念そうに辞退した。

 歓声に驚いて振り返った私に、旅の途中に臨時収入を得るチャンスは貴重なんだとディエゴが教えてくれる。 

 仕事内容と報酬に文句はないのかと聞くと、「どんなに丁寧にしても2~3時間もかからない仕事で1万メレなら十分にオイシイ仕事だ」と嬉しそうに笑った。  ……死体から装備を脱がせる仕事なのに、みんなたくましいなぁ。 

 感心しながら盗賊の装備に手を掛けようとすると、イザックに止められる。

「アリス、魔法で穴を掘ることはできるか?」

「穴?」

「ああ。盗賊たちの死体を全部埋められるくらいの穴が欲しいんだ」

「お墓を作って弔ってあげるの?」

 自分たちを襲ってきた盗賊たちなのに、なんて優しいんだろうと感動していると、イザックは苦笑しながら首を横に振る。

「こんな数の死体をそのまま放置していると、魔物が集まって来たり疫病が発生したりするからな。 焼くか埋めるかの処理をしないといけないんだ。今回は焼いている時間が惜しいから、穴を掘って埋めてしまいたい」

「ああ。そういうこと?  ……商業ギルドのミゲルからもらった魔法の実験を兼ねてやってみる」

 穴を掘るなら土魔法かな? もらった魔法は【アースウォール】と【アースシェイク】。 【アースシェイク】は地震を起こす魔法だから、使えそうなのは【アースウォール】かな。

【アースウォール】は土を盛り上げて壁を作る魔法だ。 盛り上げる土をどこから使うかを意識しながら魔法を発動させると、思った通りに、壁の手前に溝ができた。

 土の壁をどかして、同じ手順で穴を深くしてみようかな。 壁をどこにどかすか……。 とりあえずはインベントリでいいか。

「なんで俺たちを外すんだよ!」

 私が穴を掘る作業に集中しかけると、サルの不服そうな声が響く。 イザックが説明をするのかと思っていたら、

「お前たちは昼の護衛担当だろうが…。 ちゃんと周りを警戒していてくれよ?」 

 ディエゴがあっさりといなしてしまった。 

 本当は、サルにアルバイト代を支払うのが嫌だったからなんだけど……。

 ディエゴが言った理由の方が正論だから、私は黙っておこう♪
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