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従魔登録 3
しおりを挟む従魔たちにも冒険者同様にランクがあって、うちの仔たちはみんな揃って<Bランク>登録となった。 一応主人の私はFランクなのに、従魔たちの方がランクが高いなんて、ちょっと面白いね。
弱い魔物の<スライム>のライムもBランクなのかと驚いてしまったんだけど、このランクは従魔の強さよりもテイマーに対する従順さを重視するらしく、ライムのお利口さを考えると納得の結果だった。
セラフィーノが言うには、うちの仔たちはみんなAランクでもおかしくないとのこと。ハクに至ってはSランクでもおかしくないとのことだったんだけど、Aランク以上の登録になるとギルドマスター立ち合いの試験があるそうなので、今はBランクの登録となったらしい。
感心する私の肩の上で(当然なのにゃ♪)と真っ白な毛並みを見せつけるように胸を張っているハクがとっても可愛くて、ついつい頬が緩んでしまう。
一応みんなのご主人さまとしては、何かお祝いをしないとね。
「みんな偉いね~っ! Bランク登録のお祝いに、今夜はおいしいものを食べに行こうか! 何が良い?」
(アリスの作った肉料理が良いのにゃ!)
(ありすのおみずと、ありすのつくったちーず!)
(スフェーンの森の桃を、主さまにお料理していただきたいですわ)
(我は主の作られた、野菜のスープが良いですなぁ)
今夜はお金に糸目をつけないぞ!と思ってリクエストを聞いたのに、従魔たちの返事は❝私の作った料理❞。
……こんなに可愛いことを言われたら、もう、張り切っちゃうよね! ディアーナさんには申し訳ないけど、今夜も私の作ったごはんで夕食にしよう。 ディアーナさんががっかりしちゃった時には、日を改めてどこかのお店で仕切り直せばいいしね!
従魔登録をした従魔たちにはそれぞれのランクを彫り込んだプレートを支給されるらしく、プレートの大きさも従魔たちに合わせてもらえるので、みんなは楽しそうに大人しくセラフィーノの採寸を受けていた。
「こんなに採寸に協力的な奴らも珍しいな……。 ピッタリの物を用意してやるからな!」
とやる気満々なセラフィーノなんだけど、ぷるぷるボディを変形させるスライムのライムにどんなプレートを装着させるつもりなのか。 出来上がったものによっては、きっちりと拒絶&従魔登録の取り消しをする覚悟をこっそりと決めておく。
解体や査定、従魔たちの登録プレートの準備には少し時間がかかるようなので、空いた時間を使って、スレイとニールの馬具を見に行くことにした。
2匹とも意思の疎通ができる上にとってもお利口なので、そのままの状態でも乗ることはできるんだけど、やっぱり鞍がある方が私の安定が違うだろうし、2匹に掛かる負担も減るだろうしね。
ちょうどいいからセラフィーノにどこかいい店を知らないかと聞いてみると、しばらく考え込んだ後に1軒の店を紹介してくれた。
教えてくれるまでに、ちょっとだけ躊躇していたみたいなんだけど気のせいかなぁ?
「鞍の両側には宝石で模様を! 白い毛並みの雄の鐙は金で、黒い毛並みの雌の鐙は銀で作ると映えるな! シャドーロールには金糸と銀糸をふんだんに使って刺繍を施し、バンテージにも揃いの意匠で刺繍を! 蹄鉄の前方にも鞍と同じ宝石を飾ろう!」
「バカ野郎! 金糸や銀糸をふんだんに使ったらどれだけの重さになると思っていやがるんだ! 金と銀の鐙だ? 強度はどうする! 鞍や蹄鉄に宝石だぁ? そんなもんに何の意味があるってんだ!?
大体そんなもんを作ったら、どんだけ金がかかると思っていやがる! 少し冷静になりやがれ!」
「親方、俺は冷静です! スレイプニルにふさわしい馬具を作るんです。多少の重さが何ですか!? 金がかかる? そんなもん、飼い主が全財産をはたいて足りなければ、借金してでも用意するべきです!
なんて言ってもこんなに賢いスレイプニルを2頭も所持しているんだ。 それくらいの金を惜しむわけがない!!」
「……ッ! この馬鹿野郎! てめぇは少し黙ってろ!!」
❝バキッ!❞と凄い音がして若い方の職人さんが頭を抱えて床に倒れ込むと、やっと静かな空間になった。
私がスレイに乗ってこの店にやって来て、いつものようにスレイが身をかがめて私を下ろしてくれる様子を見てから、この若い方の職人さんはずっと興奮状態だったのだ。
親方がいくら落ち着かせようとしても興奮は冷めず、一方的にスレイとニールに似合うであろう馬具を提案してくれる。
うちの仔たちは戦闘をするから軽くて丈夫な馬具を求めに来たんだけど、彼の提案するのは、2頭を❝飾る❞ものばかり。 紹介してくれたセラフィーノには悪いけど、店を変えるしかないと思った私の判断は間違っていないハズ。
力づくで彼を黙らせた親方のお陰で、踵を返さず、話を続けることになったけどね。
……うちのスレイとニールを飾り立てたい気持ちはわかるけど、一方的な提案をして費用を考えてくれない彼は、商売をするつもりはあるのかなぁ? どうか、このまま大人しくしていてくれますように!
痛そうに頭を抱えてうずくまる彼を心配するよりも、彼が回復してしまうことを心配してしまう私は……、ちょっと冷たいかもしれないけど、仕方ないよね~?
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