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ミルコの勝利? いいえ、ハクとライムの勝利です
しおりを挟む初対面の印象はとっても強そうなおじいさん。
それが❝こうしないと妻に捨てられる!&殺される❞と言っては、何かにつけて大金を支払おうとする気前の良すぎるおじいさんに変わり、言葉の端々から奥さんが大好きなことがわかる可愛いおじいさんになった。
から揚げが絡むと大人の余裕をかなぐり捨てて従魔と真剣に交渉を始めるし、干し肉を大量購入しては子供のように無邪気に喜んだ。
最初の印象通りに強い人で、性分は兄貴肌。 ビジューに来たばかりで旅の常識に疎かった私をとても心配してくれた優しい人。
そんなオスカーさんが私の後見人に名乗りを上げてくれたことはとっても嬉しかったんだけど……。
<英雄>と呼ばれるほどの元・凄腕冒険者で、<元・王都の冒険者ギルドのマスター>だったなんて、聞いてないよぉ!?
蓋を開けてみれば随分と大物だったオスカーさんと、この国でも最高位に近いモレーノお父さまからの手紙は私が思っていた以上に大変なものだったようで、正気に戻ったギルマス達4人によってギルマスの部屋は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
2人との関係を根掘り葉掘り聞かれることになった私は2人からの手紙をギルマスに渡したことを、ほんの少しだけ、後悔した……。
「ガバン伯爵家が領地替え!?」
「そう。もうしばらくの間はここだけの話にしてね?」
私が2人からの手紙を突きながらお願いすると、4人は真剣な顔で頷いてくれる。 ……少しだけ焦りや怯えのようなものが見え隠れするのはきっと気のせいだよね? 気にしない!
「とある事情で、ジャスパーの冒険者たちはガバン伯爵家からの依頼を引き受けたがらないと思うから、話がラリマーのギルドに来る可能性があるかな?と思って」
引っ越しの護衛が自前の兵士たちだけですむなら問題ないんだけどね。 ラリマーの冒険者ギルドに依頼が来ても、私にさえ絡まなければそれでいい。
でも自分で言うのもなんだけど、私のインベントリの容量は引っ越し作業に大いに役立つと思うんだ。だから、もし、強制的に依頼を振られる可能性があるのならランクアップは断固拒否。 ランクアップしなくても、暗黙の了解ルールとかで依頼を強制される可能性があるのなら……、
「私が窓口でいる限り、アリスさんが嫌がる依頼を無理にお願いすることはありません!」
この街から出て行こう。そう心の中で固めた決意は、ディアーナの力強い宣言で無用の物になった。
「申し訳ないことなのですが、冒険者ギルドから冒険者の方が望まない依頼をお願いすることはあります。 ほとんどがギルマスや幹部から直接話が通るのでほぼ強制のようなものですが、断ることのペナルティはありません。せいぜいがギルマスからの心証が悪くなる程度のこと。
そんなものはアリスさんの実力を考えれば何のペナルティにもならないかと思いますし、冒険者に担当が付いている場合には、そういった話も全て担当を通すことになっています。
私は冒険者の方が❝気乗りしない❞依頼をお願いすることはありますが、❝嫌がる❞依頼をお願いすることはありませんので、ご安心ください」
ギルドのトップからの心証が悪くなるのは遠慮したいけど、私の場合は今更だしなぁ。 ディアーナが間に立って❝嫌な❞話を潰してくれるのなら、私の元へガバンの話が通ることはないだろう。
ディアーナの説明を聞いていた幹部たち、ギルドマスター、サブマスター、会計担当幹部の3人も黙って(苦笑しながら)頷いているしね。 でも、
「登録してからまだ1件も依頼を受けていないのにランクアップするのっておかしくない?」
そんなに簡単にランクアップできるなら、<冒険者ランク>が信用できないものになってしまう。
私の新たな疑問には、サブマスが満面の笑顔で答えてくれた。
ギルドからの依頼は一般からの依頼を受けるよりも大きな功績ポイントが付く上に、今回のランクアップは私が登録したての新人だからできること。 変則的なスキップ制度の適用らしい。
「【鑑定】は受けないわよ?」
「今回はギルドマスター2名の推薦と元ギルドマスター2名の推薦まであるから鑑定など必要ない。 その内の1人はあのオスカーせんせ…、オスカーさまだからな。
オスカーさま1人の推薦でCランクまでは何の制限もなく上げることが可能だぞ」
聞けば、王都のギルドはこの国に存在するギルドの本拠地になるようだ。 これは冒険者ギルドに限らず全てのギルドも同様で、王都のギルドマスターは<統括マスター>と呼ばれて尊敬を一身に集める、と。
そのオスカーさんが、手紙に「アリスが望むならCランクまでの推薦を与える」と明記してくれているので、私のランクアップに対してはどこからも横槍が入る心配はないらしい。
その上<ナイトバード便>を使った推薦状がジャスパーのギルドマスターであるベルトランと元ギルドマスターのコンラートの連名で届けられている為、本来ならオズヴァルド一人でも十分な推薦が過剰な状態になっているそうだ。
「これだけの期待を受けている新人なんて聞いたこともない! どうか、ランクアップしてもらえないか!? オスカーさまやジャスパーのギルドマスター、元ギルドマスターの推薦があることを知らず、私が取ってしまった非礼はお詫びする」
ミルコが頭を下げるのを困った気分で見ていると、ギルマスやサブマスまでもが頭を下げる。
ギルマス姉弟はオスカーさんが現役の冒険者だった頃に弟子入りしていた時期があるらしく、手紙を読んだ後は、❝アリスのランクアップは自分たちからオスカーさまに報告を!❞という訳の分からない熱に侵されてしまったようだ。
1人頭を上げたままのディアーナは「アリスさんの思うがままに」と言った後は我関せず、の姿勢で楽しそうにハク達の可愛らしさを目に焼き付けている。
どうしたものかなぁ……。
「ルーキー支援期間はどうなるの? ランクアップしても適用される?」
オスカーさんからの重要なアドバイス❝受けられる特典は受けておけ❞を思い出して聞いてみると、3人は途端に気まずそうな顔になる。
言いにくそうに口ごもる3人の視線を受けたディアーナが、
「❝ルーキー支援期間❞の適用はEランクまでの冒険者に限られています。 元々は、登録したての冒険者たちが食べるのに困って、実力に合わない依頼を受けないように支援するのが目的ですので」
気持ちがいいほどきっぱりと否定してくれた。
その上で、
「ですが、F・EランクとCランクでは受け取る報酬が段違いですので、アリスさんの不利益にはならないかと。
例えばオーク1頭を討伐しても、Eランクでは通常の討伐報酬や素材の売却金しか受け取れませんが、Cランク以上では依頼の報酬が付く場合が出てきます。当然、宿代の補助金などより高額になりますね」
と付け加えてくれたから、
(ランクアップするのにゃ!)
(らんくあっぷのほうがおとくだとおもう!)
お金大好き!の従魔たちが乗り気になってしまった。
(貰えるものは貰っておくのにゃ!)というハクの考えは、「受けられる特典は受けておけ」というオスカーさんのアドバイスと同じものだと思うし。
考えている間もみんなの期待に満ちた視線は私に突き刺さり続け……、
「……わかった。その話受ける」
私は冒険者登録6日目にして、Cランク冒険者にランクアップすることになった。
……余談だけど、従魔たちの連携❝ハクがかぷっ!ライムが血をキレイキレイ❞を見て喜んでいるディアーナは、私のランクアップよりもランクアップの手続きの方が嬉しかったみたいだ。
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↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
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