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街歩き3日目 2
しおりを挟む❝来客を部屋に案内するのは宿泊客の意向を確認してから。来客はロビーで待たせる❞
宿の対応に満足しながらロビーへ向かうと、なぜかイザックとディアーナが護衛よろしく付いて来た。…イザックはまだわかるけど、どうしてディアーナまで護衛の位置にいるんだろうね?
約束のない急な客は、商業ギルドの❝ラファエル❞と名乗ったらしい。まさかね?と思いながらロビーへ向かうと、
「ふふふっ! 来てしまいました♪」
「ラファエルさん……。どうしてあなたがこんなところまで!?」
三角形のモフモフお耳とふんわりとした大きな尻尾を持ったとっても美人な獣人男性。<商業ギルド・ジャスパー支部>のラファエルさんが満面の笑みを浮かべて立っていた。
「レシピ登録を完了させる為に、アリスさんの滞在先に職員がお邪魔すると約束したではありませんか」
笑顔のままでさも当たり前のように言っているけど、ラファエルさん? あなた、ジャスパーの食品&料理レシピ担当幹部だったよね? こんなところまで軽々しく出張してきてどうするの?
ラファエルさんのフットワークの軽さに驚いているのは私だけらしく、
「あんただったのか! ちょうどいい所に来てくれたよ。 アリス、一旦アリスの部屋に戻るぞ」
イザックはあっさりとラファエルさんの来訪を受け入れ、事情の分からないディアーナに彼を紹介しながらさっさと踵を返す。
イザックが私の不利になるようなことはしないと知っているからそのままついて行くけどね? 私の許可なく、私の部屋に他人を案内するのはどうなの? と心の中で呆れ半分に呟いたのを感じたのか、
「いいだろ?」
振り返って私に確認を取るんだけど……。私がダメって言うとは微塵も思っていないよね? もちろん「いいよ」って答えたけどさ。
部屋の前まで来て、
「じゃあ、私はロビーにいるわね」
と引き返そうとしたディアーナを引き留める。
イザックもラファエルさんも何も言わずに私を見ているので、私の独断でいいのだろうと判断してそのまま一緒に部屋の中へ入ると、ラファエルさんが突然アイテムボックスからバラの花を1輪取り出してディアーナに差し出した。
何!? 突然のロマンスなの!? もしかしなくても一目惚れ? ディアーナってば美人だもんね~♪ でも、ラファエルさんのアイテムボックスは時間が経過するタイプの物だよね? どうしてタイミングよくそんなものが? 獣人特有の❝恋の予感❞があったとか!? ディアーナはどうするの!?
突然の展開に、わくわくしながら2人を見守っていると、数舜だけラファエルさんと視線を合わせたディアーナが真剣な顔でバラの花を受け取った。
成就!? ディアーナもラファエルさんに一目惚れだったの!? ラファエルさんも美人(男性だけど)だもんね~♪
美男美女のカップル誕生!と1人脳内ではしゃいでいると、何を思ったのか、ディアーナは部屋をくるりと見渡すとせっかくもらったバラの花を部屋の中央のシャンデリアに吊るしてしまった。
それを見て満足そうなラファエルさんとイザック……。 告白のOK!にしてはなんだか奇妙な行動なので首を傾げていると、私の様子に気が付いたラファエルさんが口を開く。
「❝sub rosa❞ 薔薇の花が吊るされた部屋の中での会話を、我々は外部に漏らしません。その時がくるまでは」
そう言って微笑むラファエルさんと、頷くディアーナとイザック。
なんだか芝居がかっていて反応に困るんだけど……。まあ、気にしない方が良いのかな? ❝郷に入っては郷に従え❞って言うしね。
とりあえず、真剣な話をすることは理解できたので、部屋に防音結界を張ってもらうようハクにお願いをして、私はお茶の準備をすることにした。
「これはまた素晴らしいものを……! 登録は当然」
「していないぞ。アリスだからな」
「…アリスさんですからねぇ」
「これだけの物をまだ申請すらしていないなんて、信じられないわ……」
私をそっちのけで盛り上がっている3人と、きゃいきゃいとじゃれ合いながらごはんを食べている従魔たちを眺めながら、私は独りで食後の紅茶を楽しんでいた。
お茶の準備を始めた私にイザックが、
「さっきの飯を出してくれないか? ラファエルの分もあるだろう?」
と言うので、なにか真剣な話をするんじゃなかったの?と思いながらも、ゆっくりとごはんが食べられるなら、まあ、いいか♪と気を取り直して朝ごはんの続きを始めたんだけど……。
のんびりごはんを楽しんでいたのは私と従魔たちだけで、3人はごはんを楽しみながらも、真剣な顔で話し合いを初めてしまった。
実はこの雰囲気には覚えがある。
……❝試食会❞の時と似たような雰囲気なので、今後の行動がなんとなく読めるよね。 きっとこの後は<登録申請>をするためにギルドに直行するんだ。私のお買い物はまた❝おあずけ❞なんだ。
と少しだけ不貞腐れながらも紅茶の香りと味を楽しんでいると、
「アリスさんは他所の方の領地よりも、モレーノさまの領地を富ませたいとお思いですよね?」
至極当然なことをラファエルさんに聞かれた。
こっくりと頷いて見せると、満面の笑顔……のようでいてなんだかクセのある笑顔を浮かべたラファエルさんが、
「では、今回はジャスパーのギルドが主体となって、ラリマーのギルドで登録する形でいいですか?」
と続けるので、それにもこっくりと頷いて見せると、今度は本当に満面の笑みを浮かべたラファエルさんに握手を求められた。
……イザックとディアーナが間に入っている話なので、私に不利なことはないだろう。素直に握手に応じると、今度は新作を全て2人分ずつ用意して欲しいとのこと。
「このまま一緒にギルドへ行くんじゃないの?」
「アリスさんは今日はお買い物の予定だったのでしょう? 面倒な処理は済ませておきますので、夕方頃にギルドへお越しくだされば十分ですよ。適材適所。時間は有限ですから」
思っていた展開とは違って戸惑う私に、ラファエルさんは「腕の見せ所です」と不敵に笑う。
私がギルドに行って一から申請の手続きをするよりも、ラファエルさんが大まかな手続きを代行してくれる方が私にとってはありがたいのは確かだ。素直にラファエルさんの好意(?)に甘えることにして、言われた通り、ジャスパーを旅立ってから作った物を一通りラファエルさんに預ける。
ラファエルさんが私の代わりにギルドで根回しを、その間に私はディアーナとお買い物。イザックは昨日借りたばかりのマッシモの家に様子を見に行って夕方頃に商業ギルドに来てくれるらしい。
「保護者その3」だと笑っているけど、「食いしん坊その3」にしか聞こえないんだよね。ハクとライムに指先でハイタッチをしている姿を見ていると。
ディアーナも商業ギルドに同行してくれるらしいし、まあ、いっか。 人数が多い方が楽しいしね!
「では、商業ギルドの方はお任せください!」
話がまとまったのを見て、ラファエルさんは意気揚々と部屋から出て行ってしまったんだけど……。
ラファエルさんが朝から訪ねてきた用件。何にも聞いていないんだけど、大丈夫なのかな~?
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