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街歩き3日目 8
しおりを挟むわざわざピッツァ屋さんの店主夫妻が来てくれたのだから、無駄に待たせてはいけない。
そう思って一番最初にピザを試食してもらおうと考えたんだけど、店主夫妻から猛反対を受けてしまった。 何種類もの料理があるのならお腹に溜まらないものから出すのがセオリー。最後の一口まで美味しく食べてもらう為にコースを組み立てるのが料理人の義務だと力説されたんだけど、気の向くままに作っていた私のごはんをコースに仕立てるのはなかなか難しく……。最初の品くらいはお腹に溜まらないものを、ということで話はまとまった。
今回の試食者はラファエルさんとネストレギルドマスター。だけでは寂しいので、レシピ班と調理補助班の代表にも試食組に入ってもらうことにした。……残りのメンバーの視線が突き刺さるように痛かったから、みんなには後からゆっくりと味見してもらうことを説明する。ジャスパーでのレシピ作成の為に完成品の味を覚えてもらう必要があるからね。
「前回もそうだったでしょ?」と尋ねると嬉しそうに頷いて作業に戻ってくれたので、ハクとライムが忍び笑いをしていることには気が付かなかったようだね。❝食いしん坊仲間❞を見る2匹はとても楽しそうなので、余計なことは言わないでおこう。
ディアーナとイザック、リベラトーレさん親子にはちょっと早い晩ごはんとして食べてもらう。登録前の商品を自分たちが食べることに戸惑いを浮かべるリベラトーレさん親子だったけど、ディアーナとイザックがうまくまとめてくれた。
ディアーナはともかくイザックはジャスパーで経験済みのことなので、何の気負いもなく椅子に座って❝ごはん❞が出てくるのを待っている。その姿を見てリベラトーレさん親子も安心したようで、(僕たちもごはん食べる!)とちゃっかり同じテーブルについていたハクとライムを嬉しそうに観察していた。
さて、始めますか♪
一品目は果物たっぷりの<フレーバーウォーター>。これはおいしいだけでなく、手軽に作れて見た目も美しく楽しいので、貴族家や飲食店が大喜びするだろうと、ラファエルさんとネストレギルドマスターが大喜びしていた。
続いて、小さなカップに注いだ卵とキャベツのスープをそれぞれに2杯ずつ。
「……どうして同じものが2つも?」
ネストレギルドマスターの言う通り、見た目は全く同じ。ただ一つだけ違うのは、
「どうしてこんなにも味に深みが……!?」
片方のスープはハーピー骨で出汁を取っていることだけ。
「これが<出汁>の力です。素晴らしいでしょう? 今までただ捨てていた魔物の骨からこんなに素晴らしい出汁が取れるなんて、一体誰が想像したでしょう」
驚き顔のネストレギルドマスターに、出汁の存在を知っていたラファエルさんが冷静な顔で説明をしているけど、嬉しそうに揺れている尻尾が彼の内心を如実に表している。
「この<クルトン>を入れると、また味わいが違っておもしろいぞ。今回は素焼きが合うだろうな」
イザックの説明を聞いて、素焼き・バター・油で揚げた3種のクルトンを怪訝な目で見ていたみんなが先を争うようにクルトンを投入する。その上、
「これは美味いだけじゃなく、腐りにくく持ち運びが便利な上にスープに入れるだけで腹持ちが違うから、冒険者や隊商、軍などの携行食としても使えるな」
私以上に上手な売り込みをしてくれるイザックのお陰で、商業ギルド混合組とディアーナの目の色が変わった。
……たかがクルトンにそこまでの商品価値があるとは私も知らなかったよ?
お次は❝出汁つながり❞で、<オーク骨出汁>を使ったオーク肉と野菜の煮物と椎茸の戻し汁を使った<だし巻き卵>だ。
両方ともに高評価なんだけど、調理の段階で実は意外なことが判明していたんだ。
それは、この世界には私たち日本人のお弁当の強い味方!<卵焼き>が存在していなかったということ!
目玉焼きはある。オムレツもあった。ゆで卵もある。 なのに、卵焼きがなかったんだ!
私がだし巻き卵をくるくるとフライパンで巻いているのを見た調理補助班の反応でわかったんだけどね。フライパンで薄く焼いている卵を見て、そんなに薄く焼いていたら破れると心配をしながらも、クレープのように何かを包むことを想像していたらしい。それなのに私が卵をくるくると巻き始めたのを見て目を丸くして、どんな味なのか!?と興奮を隠そうとしなかった。もちろんその味は、
「オムレツとはまた違う。優しい柔らかさの中にしっかりとした卵とダシの味が……!」
とっても好評だった。
調子に乗って、正統派のだし巻き卵の他に我流のだし巻き卵(フライパンに多めに卵を流し込んで、かき混ぜながらふわふわの状態にしてから巻く)を披露すると、それだけで2品の調理方法の登録候補になってしまったから驚きだったけどね。
次に出したのは卵つながりで<卵丼>と、その派生レシピとしてハーピー肉を使った<きっと他人丼>
ハーピー肉の代わりにオークカツを使うと<カツ丼>になるなど、色々とアレンジしやすいことを伝えておく。
そして次アイスクリーム! ミルクに桃やメロンなどを足した物もアレンジ品として出しておく。ジャスパーでは味見しかしていなかったから、ラファエルさんがとっても喜んでくれた。
他にも、スライムジェルを使った桃やメロンなどの色々な果物のゼリーに続き、ハーピーハムを出すと、ハムの加工の過程でスライムの皮を使うことを知ったラファエルさんとイザックがスライムの絶滅を危惧したり、果物のジャムの他にトマトのジャムを出すと、「野菜がジャムに!? その発想はなかった!」と嬉しそうに拍手をしてくれる。
チーズフォンデュ&ミルクフォンデュはモレーノお父さまも気に入っていた一品なので、申請と同時に登録が決定していたようだし(王さまが水晶越しに見ていたメニューはほぼ登録が決まっているようだ。新作の確認が取れていて私の許可が下り次第)、試食はとても順調に進んで行く。
ちょっと驚きだったのが、メロンの皮で作ったお漬物が大好評だったこと。本来捨てるor無理して最後まで齧るしかなかった皮の部分を使って作ったこの一品は、
「め、飯に合う!!」
「コメとの相性が最高ですね!」
「食の革命だ!」
「これだけでコメが食えるぞ! 遠征には必ず持って行く!」
特に男性たちから好評を得た。
私も大好きな一品だけど、ちょっと貧相なメニューだから、何と言うか……、ここまで受けるとびっくりするよ。
その後も順調に試食は進み、とうとう残すのはピッツァ…、いや、今回はフライパンで焼くからピザ? ……まあ、どっちでもいいや。 最後の一種類。
ピザを作るためにここまで来てくれたリベラトーレさんのご両親の為にも、失敗はできない!
気合を入れて……。よし、次、いってみよーっ!!
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