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<運び屋さん> 2
しおりを挟む<運び屋>ラウルさんが取り出した、大きな大きな<冷蔵庫>。いったいいくらするんだろうと狼狽えている私の前で彼はもう一度アイテムボックスを開き、さっき取り出した冷蔵庫によく似たもの……、<冷凍庫>を取り出した。
……どうしよう。無理だ。この街では立て続けに大きな買い物をしてしまったから、手持ちのお金に余裕がない。
せっかく手配してくれたものを返品するのも申し訳ないし、<ギルド>で借金を申し込んだとして、この2台が買えるだけの大金を私に貸し出して貰えるのかも不安だ。
今回狩って来た獲物を全て売り払ったら何とかなるかもしれないけど、<極桃オーク>のお肉を全て手放したらハクとライムが凄く残念がるだろうし……。
表情には出さずに、内心では大いに焦りながら金策を考えていると、
「いや~、冷凍庫を配達するのに<代金の受け取り依頼>がなかったのは今回が初めてですよ。ああ、手紙の返事を書かれるのでしたら、❝受け取り❞と一緒に持ち帰りますよ。サービスです」
ラウルさんは「今後<運び屋>にご用の際にはごひいきに」と言いながら営業スマイル…よりも、やや親し気な笑顔を浮かべた。
「手紙?」
「ええ、冷蔵庫の中に」
手紙なんて受け取っていない、と思いながら問い返すと、ラウルさんはいたずらな目をしながら冷蔵庫を手のひらで示す。
急いで冷蔵庫を開けてみると、中には蝋で封をしてある冷えた1通の手紙が入っていた。
『いつ、「お腹すいたーっ」と言いながら戻って来るかと楽しみに待っているんだが、なかなか戻ってこない所をみると、無事に旅を続けているようだ。
ハクちゃんとライムちゃんもきっと元気に仲良くころころと転がっているんだろうねぇ。あの可愛らしい姿はいつでも簡単に思い出せるけど、きっとアタシの記憶以上に可愛く育っていることだろう』
から始まる1枚目には、私が出てからの村の近況や、マルゴさんが村長に就任したこと、<カモミールティー製造販売計画>のことなどが几帳面な文字で詳しく書かれていた。
そして2枚目にはオースティンさんの命を助けたことへのお礼が…、何度も何度も繰り返しお礼の言葉が書かれていて、そのついでのようにオスカーさんやオースティンさんも元気だと書かれていて、そのまたついでのように❝オースティンがアリスさん用に冷蔵庫と冷凍庫を製造したから使ってやっておくれ❞と書かれてあった。……代金のことなど一切触れていない。
どうすればいいのかと開いた3枚目は大らかな筆跡に変わり、「うちの愚息は無事にアリスさんに会えただろうか。もしも会えたなら、存分にこき使ってやってくれ」とルベンさんからの手紙になっていて、その続きは柔らかな筆跡に変わり「まだ、❝平民❞の設定で旅をしているの? あまり無理をしないでね?」から始まるルシィさんからの手紙になっていた。オースティンさんの命を救ったことへのお礼が書かれていて、あの時オスカーさんと一緒にオースティンさんを運んでいたおじちゃんたちの話を聞いてマルゴさんと一緒に頭を抱えたこと(どうしてかな?)や、ネフ村に戻ったオースティンさんがマルゴさんから私の話を聞くなり、「絶対にお礼をする!!」と叫んでそのまま作業室に籠ってしまったこと、少しだけむさ苦しくなったオースティンさんが出て来た時には冷蔵庫と冷凍庫が出来上がっていたことが楽しそうに書かれていた。
その次には、たった一言簡潔に「意外だろうが俺の名はそこそこ役に立つから遠慮なく使え」の文字が。オスカーさんらしい。
そして最後にオースティンさんの「お礼のつもりで冷蔵庫を作っていたら、母さんからアリスさんは冷凍庫を欲しがっていたと聞いた。せっかくだから両方受け取って欲しい」と書かれていて……。
どうやら私は、無料で<冷蔵庫>と<冷凍庫>を手に入れてしまったらしい。
物凄い高級品だと聞いていたんだけど……。
私の内心を見ていたかのようなタイミングでラウルさんが、
「冷蔵庫も冷凍庫もとんでもない高級品ですが、オースティンさんの命ほどの価値はないですよね~」
なんて呟くものだから、黙って受け取ることにした。
お礼状、急いで書かないと!!
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