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極桃オーク祭り 準備
しおりを挟む❝極桃オーク祭り❞と銘打ってはみたものの、今手持ちの食材でできる料理はあまりない。
かと言っていつも通りのメニューでは楽しくないので、
「串カツ……ですか?」
「うん。オークカツを一口大にして串に刺しただけなんだけどね。少しは雰囲気もかわるでしょ」
ビジューに来てすぐの頃に大量に作ったものの、今ではあまり使わなくなっていた❝串❞を使うことにした。
マルゴさんの計らいで竈を手に入れてからはあまり必要なかったんだけど、1本1本頑張ってナイフで削った分思い入れだけはあったんだ。
一口大に切った極桃オークや玉ねぎなどを料理長さんに串に刺してもらっている間に、私は、
「ん~……。ちょっと酸味が強いかな?」
「では、こちらの物では?」
「さすがは料理長! お酢を何種類も置いてるのね!」
「いやぁ、それほどでも。ハッハッハッ!」
ソースを作っている。オークカツにはお塩でも良かったんだけど、串カツにはソース!って思っちゃったんだよねぇ。ちょっとお肉の大きさや形が違うだけなのに、譲れなかったんだ。
<キャロ・ディ・ルーナ>にもソースはあった。あったんだけど……、すっごくスパイシーなソースだったんだ。私の好み、って言うか慣れ親しんでいるのは甘めのソースだったから、そのソースを串カツに使うのはちょっと違和感が凄くて……。
幸いソースの作り方を知っていた(昔、幼かった流威の為に甘口のソースを自作していた時期がある)から、ここでも作ることにした。私が手に入れていなかったお酢を厨房で見つけて、❝極❞桃オーク肉との交換を申し出たら、快く譲ってもらえたから♪ 厨房にある分は全部使っても良いって言ってくれたの!
料理長さんは私が「ソースを作る」って言った瞬間に厨房を出て行こうとするからびっくりしたんだけどね。ソース自体はすでに存在しているから今私が作るものは新作にはならない。気にしなくていいと伝えたら、今度は料理長さんが驚いていた。なんでもソースのレシピは料理人の❝命❞なんだそうだけど、私は料理人じゃなし、ソース工場の経営をするつもりもないから気にしない。
機嫌よく調理を進めていると、料理長さんが私の手元をじっと見つめていることに気がついた。
「どうかした? レシピが気になるなら後でまとめて渡そうか?」
「いえ……。アリスさまの手は料理人のものではないのに、と」
「え?」
「数々の素晴らしい料理を作り出すその美しい手が、料理人の手でないことが、その……」
「ああ……。うん。あはは……」
❝料理人の手❞と言われて料理長さんの手を観察してみると、爪はきっちりと短く切られていて、指の関節はしわがしっかり入っていて、皮が厚い。
もちろん、たまたま料理長さんの手がそうだっていうだけの可能性もあるけどね。
私の手は爪だけは綺麗に短く揃えているけど指は細く節もほとんど目立たないし、手のひらや指の皮膚も薄い手だ。
食材を洗う為に手が荒れていることもなく、包丁を握ったり食材を握ったりするために節が太くなることもない、熱いものを持つのには不向きな手だとすぐにわかる、自分で言うのもなんだけどかなり美しい手指をしている。
……この体は創造されてからまだ数か月しか経っていないからね。ビジューが気合を入れて創ってくれた時のままだから、美しくてあたりまえ。ずっと修行してきた料理人さんの手とは違う。
もう、笑ってごまかすしかない。言い訳や説明を全て放棄して笑ってみせると、
「失礼いたしました」
何かを悟ったような表情で料理長さんは自分の手元に視線を向けた。
(ん~、食材の下処理は誰かに任せていたって感じかにゃ?)
(アリスはあじつけたんとうってこと?)
(ひととおりの技術は身に付けたけど、基本、下処理は使用人任せのお嬢さまの道楽料理って思ってるかもにゃ~)
………うちの従魔たちの見解が痛いです。
でも、こっそりと料理長さんの表情を覗いてみると、とても優しく温かい感じで私を見てくれたのできっと大丈夫! ポツリと、
「お嬢さまの家で働いていた料理人たちがうらやましい……」
なんて声が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだよね!
普通の平民のお家には、複数の料理人はいないハズだから!
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