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信頼と心配が嬉しいから、寝る! つもりだったのに…… 7
しおりを挟む「こちらは<カチョカヴァッロ>。少し厚めに切って軽く焦げ目がつくまでフライパンなどで焼くと、外はカリッと香ばしく中はトロりととろけた食感が楽しめますよ」
(アリス! 焼くのにゃ!)
(アリス! ぼくもたべたいの!)
部屋に入り席に着くとネストレさんは丁寧な挨拶と共に同行者を紹介してくれて、そのあとすぐにハクとライムに❝お土産❞の説明を始めた。
……どうして2匹に説明してるのかなぁ?という疑問を吹き飛ばす勢いでハクとライムが試食を強請るので、皆さんに断りを入れてからコネクティングルームに移動した。
せっかくだから、そのまま焼いたものと少し手を加えたものにしてみようかな。
フライパンで焼いたカチョカヴァッロはネストレさんの説明どおり、外はカリカリで中はトロリとした素敵な食感になり、
「にゃにゃん! にゃーお!(ネストレ! これはおいしいチーズなのにゃ!)」
「ぷきゃー!(ネストレ! ありがとー)」
2匹が満足そうにネストレさんにお礼を言う。2匹の言葉はわからないだろうに、ネストレさんも、
「君たちと主さまとのくつろぎ時間をお邪魔してしまったことへのお詫びなんだよ。私たちに少しだけ、アリスさまとの時間を分けてくれるかい?」
と返して了承の鳴き声を貰っている。
なるほど。これはハクとライムへの賄賂だったのか。だったら2匹に説明するのも納得かな?
彼らが話している間に出来上がったのは、厚めに切ったカチョカヴァッロに小麦粉をまぶしてフライパンで焼いたもの。それに塩コショウを振って、今回は彩にパセリを乗せて出来上がり!
一切れ味見に手に取って……、口に入れ……、こちらをガン見している従魔とゲストの視線に負けてそのままお皿を差し出した。 まあ、元の素材が良いのでそれなりの味にはなっているハズ!
どうやら気に入ったらしい彼らによってあっという間にお皿が空になり、
「こちらは<ラリマー>。名前でおわかりでしょうが、この街自慢のチーズでこの街でしか作られていないのです。24ヵ月かけて作られるチーズなのですが、まずは12ヵ月ものをどうぞ」
次に出してくれたのはハードタイプのチーズで、太鼓型の大きな重いものだった。なんとなく見た目に覚えのあるチーズなんだけど……。そのままで、と言われたので薄くスライスして食べてみると、あっさりした甘いミルクの優しい味のするおいしいチーズだった。
続いて24か月ものをどうぞ、と勧められ、こちらも同じようにスライスにする。こちらは濃厚で、噛めば噛むほどミルクの風味が広がるおいしいチーズだ。……これは、アレだ、あの味だ!
私たちが満足の吐息を吐くのを見てネストレさんは胸を張ると、
「このチーズは400年ほど前の旅人が、当時この街で1番だった牧場の娘との結婚の許しを得る為に作ったものなのです。24ヵ月もの時間をかけて娘と共に娘の両親に尽くし『このチーズが出来なくても、私たちは結婚を許す気になっていた。だがこのチーズを味わってしまった今、私たちが君に願おう。娘と牧場をよろしく頼む』と言わせたチーズなのです。
そしてその話を聞いて興味をもった当時のギルドマスターが試食をした際に、旅人の遠い遠い故郷ではこのチーズを担保にお金を融資する制度があると聞き、この街に、この街のギルドにその制度を取り入れた上で貴族や豪商への販路まで整えたのです。手間と費用の面から非常に高価なもので一般の領民には知られていない味なのですが、アリスさまには是非味わっていただきたいと思い持参しました」
満面の笑みを浮かべると、アイテムボックスから3つもの<ラリマー>を出してくれる。
うん……。その話、全部じゃないけど一部に聞き覚えがあるなぁ……。
そう、アレ。<パルミジャーノ・レッジャーノ>だ!
きっとその旅人さんは、イタリアのチーズ職人さんだったに違いない!
思わぬ形で同郷(国は違うけど世界は同じ♪)の先人の話を聞けて、なぜだか溢れそうになる涙を抑えるのが大変だったよ。
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