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お引越し準備 1
しおりを挟む「お土産にするにはちょっと変かもしれないけど……。 この街の名物のカントチーニはもう食べた? アーモンドがいっぱい入っていてとっても美味しいのよ!」
「俺もここで買ったメロンなんだが……。形は悪いが甘みが強くて美味いんだ!」
部屋に案内した2人は挨拶もそこそこに、持って来てくれたお土産をハクとライムに披露している。
懐かしいジャスパーの物ではなくてラリマーで入手した品なのは、ジャスパーからラリマーまでの移動に掛かる時間を考えたら仕方がない事だよね? なによりも、お土産をわざわざ用意してくれる気持ちが嬉しいから、
「んにゃ~ん♪」
「ぷきゃあ~♪」
2匹はとってもご機嫌!に2人の腕の中に飛び込んで、目一杯の愛想を振りまいているし、
「せっかくだから、今一緒にいただこうね!」
2匹のごはん作りに失敗した私からすれば、このタイミングで2人が来てくれたことがこの上ないお土産になった。だって、作ったうどんは3人分しかないからね! 他のごはんをインベントリから取り出す理由が出来たんだ。
アーモンドの香りがとっても香ばしいカントチーニをお皿に移し、ミルクたっぷりのカフェオレを淹れる。アルバロとマルタはリクエストをくれたので、ロイヤルミルクティーだ。
アルバロの持って来てくれたメロンは彼の言う通りに形が悪い。……実は、初めて見た瞬間かぼちゃと間違えたんだけど、味をみると、甘みがとっても強くておいしいメロンだったのでびっくりした。
生ハムとの相性もよさそうだったので半分を普通にカットし、残りの半分を<生ハムメロン>にして出すと(もちろんオーク肉の方!)みんなにとても喜んでもらえた。厩舎にいるスレイとニールの口からすればほんの一口分しかなかったけど、彼らも十分に満足してくれたらしい(お使いのハク談)。
もちろんそれだけでは量が足りないので、以前作ったメニュー表に新作を足してから好きなものを選んでもらったら、アルバロとマルタだけではなく2匹も喜んでくれたので、ほっと一安心だ。
「え? モレーノお父さまとマルゴさんが?」
2人がここに来た理由。それは、モレーノお父さまとマルゴさんからの依頼を受けての事だった。
ミネルヴァ家のお引越しの護衛(兼お守り要員)に来てくれたのだ。
「俺たちだけじゃないぞ。俺もマルタもパーティーメンバーを連れてきた」
「いきなり一緒に来ると邪魔になるから、今は冒険者ギルドで待ってもらってるの。アリスが良ければ一度挨拶にこさせたいんだけど?」
2人は楽しそうに笑ってここに来た理由を話してくれる。
もしも私がこの街のギルドで十分な数の護衛を手配していても、この依頼は取り消されないそうだ。なんて心強い!
ほとんどの子供たちにとっては慣れない旅路。お世話してくれる人手はいくらあっても困らないどころか大助かりだ! アルバロとマルタの人間性はバッチリだってわかってるし、この依頼の性質を理解した上で2人が連れてきてくれたパーティーメンバーなら安心だしね。
私は、お引越しメンバーであるイザックとマッシモの他にルシアンさんとリベラトーレさん、バルトロメーオの所属しているパーティーを護衛に雇おうと考えていた。あとはギルマスに相談して必要人数を揃えるつもりだったんだけど、アルバロとマルタのパーティーが揃ってきてくれたのなら、その問題はクリアになる。
モレーノお父さまとマルゴさんのサプライズ第二弾を心から歓迎しながら来てくれた2人にお礼を言い、これからパーティーメンバーの人たちに挨拶に行こうと提案する。
改めて皆さんをこっちに呼ぶより、私が行った方が早いしね。
2人には「腰の低すぎる依頼人は冒険者に舐められるぞ!」なんていつもとは違うお説教を貰ってしまったけど、だったら一体どうすればいいの!?なんて思ったことは内緒……のつもりが、どうやら表情に出ていたらしい。
「偉そうにしてろ。それくらいがアリスにはちょうど良い」と2人に言われて困ってしまう。
ハクとライムがコクコクと力強く頷いているけど……。私、結構偉そうにしているつもりなんだけどな? まだ足りないの!?
「お、アリスちゃん! 久しぶりだな、元気だったか? ………なんで護衛を2人も連れてるんだ? また何かあったのか!?」
「護衛? ああ、アルバロとマルタは私の護衛じゃないよ。知り合いの冒険者なの。それよりもバルさん、頼みたいことがあるんだけど、パーティーの人たちは一緒じゃないの?」
ギルドに入ると、ちょうど戸口に向かってきていたバルトロメーオに声を掛けられた。
依頼を終えて街に戻ったばかりらしく、リーダーさんは報告の為受付に、他のメンバーは酒場スペースで寛いでいるようだ。
バルさんは宿の手配に行こうとしていたのを急遽他のメンバーに代わってもらい、リーダーさんの報告が終わり次第すぐに私の所に来てくれると言ってくれたので、その前にアルバロとマルタのパーティーメンバーたちとの挨拶を済ませることにする。
ハジメマシテの人たちと会うのは、やっぱりドキドキするね!
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