女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
707 / 754

護衛旅 集落 1

しおりを挟む





 朝起きてテントの外に出てみると、ハンモックの中で抱き合って眠る夫妻の姿があった。

 ハクやライムと一緒に楽しむつもりでゆったり目に編んでいたのが良かったのか、見た目は少し窮屈そうだけど、2人の寝顔はとても幸せそうだ。

 夫妻を起こさないようにそうっと朝ごはんの準備をしていると、ニールとスレイがゴブリンとホーンラビットの死骸を運んできてくれた。ゴブリンは頭が潰されているのでニールかスレイが、ホーンラビットはクビを搔っ切られているのでハクが狩ってくれたのだろう。

 何にも気が付かずにぐっすり寝ていた自分を少し恥ずかしく思うと同時に、私を起こすことなく私たちの眠りを守ってくれた従魔たちに今朝も感謝の気持ちが湧きあがる。

 今日の朝ごはんは何がいいかなぁ? おいしいものでたっぷりと労ってあげなきゃね!











 お肉が大好きなハク、甘い物や乳製品を喜ぶライム、野菜や果物が大好きなスレイとニール。

 みんな基本的には何でも喜んで食べてくれる良い仔たちなんだけど、それぞれに好みはある。だからみんなが満足するものを作るのは難しいんだけど、私には【インベントリ】があるからね! 保存している食べ物からみんなの好きそうなものを選んで出す。

 みんな同じメニューだけどハクにはオーク肉の竜田揚げを多めに、ライムには桃のフローズンヨーグルトを多めに、スレイとニールにはたっぷり野菜と卵のスープをお鍋ごとサーブする。これに炊き立て(インベントリって本当に便利だよね!)ごはんを付ければ朝ごはんの出来上がり♪

 主食と一汁一菜一デザートだけのちょっと寂しい朝ごはんだけど、文句を言うことなく嬉しそうに目を輝かせてくれるのが嬉しい。解体&魔石の回収作業を終わらせた夫妻もワクワクした表情で私が席に着くのを待ってくれているので、急いでテントなどをインベントリに放り込んでテーブルに移動した。











「………随分とボロボロ、だな?」

「外見だけで中は元気よ。(治したから)怪我一つしてないわ。見た目が悪いと問題ある?」

「いや、ないが……。じゃあ、これで引き取りは終了だ。細かな査定が澄んだら冒険者ギルドに連絡を入れるから、連絡を聞いたらこの札を持って速やかに裁判所へ行ってくれ。ご苦労さん!」

 旅に出て最初の集落の門の所で盗賊たちを引き取ってもらう。盗賊の身元確認や褒賞金の確認に2日ほど時間が掛かると言われたが、依頼人夫妻がゆっくりと町を見る時間も必要だから問題はない。

 ここで売り買いする商品を決める為の下調べに行くと言う夫妻と別れてから、私たちは冒険者ギルドへ向かった。今回は夫妻に素材を売っているから納品分はそんなにないんだけど、まあ、一応ね?

 門から真っ直ぐに大通りを進んで行くと左手に見える2階建ての建物。あまり大きくないギルドを見て、なんとなく(ここに来るまで強い魔物とも出会わなかったし、平和なところっぽいな)と思ったのは早計だった。

 ドアを開けるとほぼ同時に、

 ❝ドンッ❞

 後ろから力いっぱいにぶつかられ、

「あ? ここは女子供の遊びに来るような場所じゃねえんだよ! 邪魔だからさっさとどきな!」

 いきなり罵声を浴びてしまったからだ。

 えっと、こういうのをなんて言うんだっけ? ……そうそう、❝テンプレ❞だ。

 テンプレートなシーンにふさわしく、ここは私も一発カマシておくべきかな?

「ねえ、おじさん? ここはあなたのようにひ弱そうな男が来る場所じゃないのよ? 早くお家に帰って奥さまのお手伝いでもしていなさいな。 ……あっ! 依頼人だったのかしら? あなたのような男性がする依頼って言うと……、お家の玄関前に湧いてしまったスライム(ランクG)の退治かな? きっと頼りになるGランクの子供たちが受けてくれると思うから安心してね!」

 なんて、ね!
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...