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第一章 入学編
入学編第七話 訓練
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ラノハたち竜機操縦士育成学校第四期生が入学したその日から、約三週間の時が流れた。
現在、ラノハたちは二手に分かれ訓練を行おうとしていた。
一方は剣などを使った近距離、中距離戦闘の訓練を、もう一方は銃の訓練である。
聖装竜機、邪装竜機は同様に、主に三つのタイプに分けられる。
近距離戦闘型、中距離戦闘型、遠距離戦闘型の三種類である。
主に近距離戦闘型では剣を、中距離戦闘型では槍と片手銃を、遠距離戦闘型では狙撃銃を扱う。
遠距離戦闘型を除くその殆どが、盾を装備するのだが、極稀に盾を装備しない者も存在する。盾を装備する戦闘スタイルが合わない者もいるからである。
殆どの聖装竜機が盾を装備する理由は、竜機同士の戦闘となると盾がないと装甲を貫いてしまう危険があるからだ。
ラノハが申請した聖装竜機は、近距離戦闘型である。故にラノハは近距離、中距離戦闘の授業の方に参加していた。
ちなみにミリアは中距離戦闘型の聖装竜機で銃を扱うのでそちらの方に行っている。
そして今、近距離、中距離戦闘の相手となるペアを組む必要があるのだが、ミリアがいない今、ラノハと組もうと思うものなど一握りもいないだろう。
……ラノハは全く気にしていないようだが……。
そんな様子のラノハに、ある一人の男子生徒が話しかけた。
「オタール。今日も頼めるか?」
「……別にいいが、また倒されてもいいならな」
「望むところだ。今日こそは一本とってみせる」
「……そうか。いくぞ、モートゥ」
「ああ。セフィター先生。合図の方よろしくお願いします」
「……分かった」
セフィターがそう言った後、ラノハは二本の模造剣をそれぞれの手に持ち、構える。いわゆる、二刀流である。
それに応じてリディオも槍と盾をラノハの方に構えて、戦闘態勢をとる。
両者は互いに睨み合い、動く時を待つ。
少しの間、このような状態が続き、ついにセフィターが合図を出した。
「……模擬戦、始め」
この声にいち早く反応し動いた者は、ラノハであった。
ラノハはリディオとの距離を一気に詰めて、二本の模造剣で連続攻撃を仕掛ける。
そのとてつもなく早い連続攻撃を、リディオは辛うじてではあるが盾で防ぎ、反撃の時を待つ。
しかし、ラノハは反撃の隙を与えない速さで攻撃を続ける。
リディオは盾でその攻撃を防ぎながら、一歩、また一歩と後退してしまう。
すると、この攻防の間に一瞬、ラノハに隙が生まれた。
その隙を見逃さなかったリディオは、槍を突き出す。
だが、ラノハはこの攻撃を見て口角を上げた。
そして、リディオの槍の突きを姿勢を低くして避け、前を見据える。
リディオはとっさに盾を体の前に持ってくる。
が、しかし。ラノハは右手に持つ模造剣で盾を下から崩し、盾を跳ね除けた。
そしてそのまま、ラノハは左手の模造剣をリディオの頸に持っていった。
ラノハの模造剣がリディオの頸に当たる寸前のところで、セフィターが声を上げた。
「……そこまでだ。両者離れろ」
セフィターのこの声を合図に、ラノハとリディオは動きを止めて、両者共にお互いから離れる。
ラノハとリディオが両者とも模擬戦が始まる前の位置に戻ったことを確認してから、セフィターは口を開いた。
「……礼」
「「ありがとうございました」」
ラノハとリディオはお互いに礼をしてから、端の方に行く。
次の模擬戦を邪魔しないためである。
二人が端の方に着くと、リディオがラノハに向かって話しかけた。
「……さっきの突き、誘ったのか?」
「……まぁな。わざと隙を作って攻撃させた。お前なら、僅かな隙でも見逃さず攻撃してくると思ったからな。ま、案の定ってわけだ」
「そうか……。今回は勝てると思ったんだがな……。盾を崩したのはシュネイ流剣術か?」
「ああ。本来二刀流の剣術じゃないが、二刀流の中に盛り込むことができた剣術だ。俺が使える剣術は、既存の剣術の中ではこのシュネイ流剣術しかない。二刀流に盛り込めたのがこれしかなかったからな。後は我流だ」
「シュネイ流剣術は速さ最重視の剣術……。なるほど。二刀流も速さが求められるからピッタリだったわけか」
「……そういうことだ」
シュネイ流剣術とは、聖邪戦争以前に大成されたとされている、攻撃速度最重視の古参剣術である。
シュネイ流剣術は現在、創始者不明の剣術として扱われている為か、スミーナ国内での使用者はかなり少ない。更に、一対一に特化しており、戦争に適していないという点も影響しているのだろう。
今現在、スミーナ国内での主流の剣術は、すべてスミーナ国人が作り出した真新しい剣術であり、その殆どがカウンター型で盾の使用を推奨している。
だからこそ、ラノハが二刀流をするにあたって参考にできた剣術は、シュネイ流剣術しかなかったのである。
すると、しばらく黙っていたリディオが口を開いた。
「……今までの模擬戦で、シュネイ流剣術を使わなかった理由はなんだ?」
「……今までは、単純に使うまでもなかっただけだ」
「……そ、そうか……!」
そう言ったリディオの顔は、喜びに包まれていた。
ラノハが言った、今までは使うまでもなかったという言葉。これは、今回は使わざるを得なかったという意味にも捉えられる。
リディオはこの事実に対して歓喜した。
初めて戦った時、リディオはラノハ相手に手も足も出なかった。
その時、リディオは半ば本能的に気付かされた。
今この場において、圧倒的強者はラノハであると。
そんな圧倒的強者であったラノハに、シュネイ流剣術を使わせたという事実はリディオに自信と成長を感じさせた。
ラノハとリディオが話し終わった時、丁度模擬戦を終えた二人の男子生徒がラノハとリディオの方に来て、その中の一人であるホーブが口を開いた。
「リディオ君。今日も彼と模擬戦をしたのかい?」
ホーブはラノハをチラリと見て、そう言った。
リディオもホーブのこの言葉を聞いて、ラノハを見て口を開く。
「ああ。ラノハとの模擬戦は得るものが多くてな。ホーブもラノハと戦ってみたらどうだ?」
「遠慮しとくよ。それに、たまには他の人とやった方がいいと思うよ?なんと言っても彼は……」
「……それは今、関係ないことだろう」
ラノハはホーブのその言葉を聞くと、両手に持っていた二本の剣の柄を握りしめ、ホーブを睨みつけて口を開いた。
「……おいコントレス。模擬戦、殺ろうぜ。ボコボコにしてやるからよ」
「……だから遠慮すると……」
「いいから来い」
「ちょ、ちょっと待……!」
ラノハはホーブの手を取り、引きずるようにセフィターの元まで連れて行く。
リディオとホーブと共に来ていたもう一人の男子生徒は視線をラノハとホーブの方に向けて、二人を見送った。
しかし、ラノハがホーブと共にセフィターの所に着く前に、セフィターが声を上げた。
「よし。今日はここまでだ。こちらの方に集まってくれ」
「チッ……」
セフィターのこの言葉を聞いてラノハは露骨に舌打ちをし、ホーブはホッとしたような様子だった。
生徒たちはセフィターの言う通りに、セフィターの元に続々と集まってくる。
この場にいる全員が集まったことを確認し、セフィターは口を開いた。
「明日は聖装竜機操縦の授業が殆どになるので、この時間は一時間分まで短くなる。なぜなら、特別講師が来校してその方が授業をしてくださるからだ。詳しいことは終礼の時間に話す。では、更衣室で更衣してから教室に戻ってきてくれ」
「「「「はい!」」」」
生徒たちはセフィターに対して返事をした後、更衣室に向かって歩き始める。
そんな生徒たちの頭の中には、特別講師が誰なのかというものしかなかった。
ラノハも例外では無く、誰が来るのかという考えを巡らせながら更衣室に向かって歩いていった。
そんなラノハを疑いを孕んだ目で見つめる一人の男子生徒がいることは、ラノハ自身は知る由もないのであった。
現在、ラノハたちは二手に分かれ訓練を行おうとしていた。
一方は剣などを使った近距離、中距離戦闘の訓練を、もう一方は銃の訓練である。
聖装竜機、邪装竜機は同様に、主に三つのタイプに分けられる。
近距離戦闘型、中距離戦闘型、遠距離戦闘型の三種類である。
主に近距離戦闘型では剣を、中距離戦闘型では槍と片手銃を、遠距離戦闘型では狙撃銃を扱う。
遠距離戦闘型を除くその殆どが、盾を装備するのだが、極稀に盾を装備しない者も存在する。盾を装備する戦闘スタイルが合わない者もいるからである。
殆どの聖装竜機が盾を装備する理由は、竜機同士の戦闘となると盾がないと装甲を貫いてしまう危険があるからだ。
ラノハが申請した聖装竜機は、近距離戦闘型である。故にラノハは近距離、中距離戦闘の授業の方に参加していた。
ちなみにミリアは中距離戦闘型の聖装竜機で銃を扱うのでそちらの方に行っている。
そして今、近距離、中距離戦闘の相手となるペアを組む必要があるのだが、ミリアがいない今、ラノハと組もうと思うものなど一握りもいないだろう。
……ラノハは全く気にしていないようだが……。
そんな様子のラノハに、ある一人の男子生徒が話しかけた。
「オタール。今日も頼めるか?」
「……別にいいが、また倒されてもいいならな」
「望むところだ。今日こそは一本とってみせる」
「……そうか。いくぞ、モートゥ」
「ああ。セフィター先生。合図の方よろしくお願いします」
「……分かった」
セフィターがそう言った後、ラノハは二本の模造剣をそれぞれの手に持ち、構える。いわゆる、二刀流である。
それに応じてリディオも槍と盾をラノハの方に構えて、戦闘態勢をとる。
両者は互いに睨み合い、動く時を待つ。
少しの間、このような状態が続き、ついにセフィターが合図を出した。
「……模擬戦、始め」
この声にいち早く反応し動いた者は、ラノハであった。
ラノハはリディオとの距離を一気に詰めて、二本の模造剣で連続攻撃を仕掛ける。
そのとてつもなく早い連続攻撃を、リディオは辛うじてではあるが盾で防ぎ、反撃の時を待つ。
しかし、ラノハは反撃の隙を与えない速さで攻撃を続ける。
リディオは盾でその攻撃を防ぎながら、一歩、また一歩と後退してしまう。
すると、この攻防の間に一瞬、ラノハに隙が生まれた。
その隙を見逃さなかったリディオは、槍を突き出す。
だが、ラノハはこの攻撃を見て口角を上げた。
そして、リディオの槍の突きを姿勢を低くして避け、前を見据える。
リディオはとっさに盾を体の前に持ってくる。
が、しかし。ラノハは右手に持つ模造剣で盾を下から崩し、盾を跳ね除けた。
そしてそのまま、ラノハは左手の模造剣をリディオの頸に持っていった。
ラノハの模造剣がリディオの頸に当たる寸前のところで、セフィターが声を上げた。
「……そこまでだ。両者離れろ」
セフィターのこの声を合図に、ラノハとリディオは動きを止めて、両者共にお互いから離れる。
ラノハとリディオが両者とも模擬戦が始まる前の位置に戻ったことを確認してから、セフィターは口を開いた。
「……礼」
「「ありがとうございました」」
ラノハとリディオはお互いに礼をしてから、端の方に行く。
次の模擬戦を邪魔しないためである。
二人が端の方に着くと、リディオがラノハに向かって話しかけた。
「……さっきの突き、誘ったのか?」
「……まぁな。わざと隙を作って攻撃させた。お前なら、僅かな隙でも見逃さず攻撃してくると思ったからな。ま、案の定ってわけだ」
「そうか……。今回は勝てると思ったんだがな……。盾を崩したのはシュネイ流剣術か?」
「ああ。本来二刀流の剣術じゃないが、二刀流の中に盛り込むことができた剣術だ。俺が使える剣術は、既存の剣術の中ではこのシュネイ流剣術しかない。二刀流に盛り込めたのがこれしかなかったからな。後は我流だ」
「シュネイ流剣術は速さ最重視の剣術……。なるほど。二刀流も速さが求められるからピッタリだったわけか」
「……そういうことだ」
シュネイ流剣術とは、聖邪戦争以前に大成されたとされている、攻撃速度最重視の古参剣術である。
シュネイ流剣術は現在、創始者不明の剣術として扱われている為か、スミーナ国内での使用者はかなり少ない。更に、一対一に特化しており、戦争に適していないという点も影響しているのだろう。
今現在、スミーナ国内での主流の剣術は、すべてスミーナ国人が作り出した真新しい剣術であり、その殆どがカウンター型で盾の使用を推奨している。
だからこそ、ラノハが二刀流をするにあたって参考にできた剣術は、シュネイ流剣術しかなかったのである。
すると、しばらく黙っていたリディオが口を開いた。
「……今までの模擬戦で、シュネイ流剣術を使わなかった理由はなんだ?」
「……今までは、単純に使うまでもなかっただけだ」
「……そ、そうか……!」
そう言ったリディオの顔は、喜びに包まれていた。
ラノハが言った、今までは使うまでもなかったという言葉。これは、今回は使わざるを得なかったという意味にも捉えられる。
リディオはこの事実に対して歓喜した。
初めて戦った時、リディオはラノハ相手に手も足も出なかった。
その時、リディオは半ば本能的に気付かされた。
今この場において、圧倒的強者はラノハであると。
そんな圧倒的強者であったラノハに、シュネイ流剣術を使わせたという事実はリディオに自信と成長を感じさせた。
ラノハとリディオが話し終わった時、丁度模擬戦を終えた二人の男子生徒がラノハとリディオの方に来て、その中の一人であるホーブが口を開いた。
「リディオ君。今日も彼と模擬戦をしたのかい?」
ホーブはラノハをチラリと見て、そう言った。
リディオもホーブのこの言葉を聞いて、ラノハを見て口を開く。
「ああ。ラノハとの模擬戦は得るものが多くてな。ホーブもラノハと戦ってみたらどうだ?」
「遠慮しとくよ。それに、たまには他の人とやった方がいいと思うよ?なんと言っても彼は……」
「……それは今、関係ないことだろう」
ラノハはホーブのその言葉を聞くと、両手に持っていた二本の剣の柄を握りしめ、ホーブを睨みつけて口を開いた。
「……おいコントレス。模擬戦、殺ろうぜ。ボコボコにしてやるからよ」
「……だから遠慮すると……」
「いいから来い」
「ちょ、ちょっと待……!」
ラノハはホーブの手を取り、引きずるようにセフィターの元まで連れて行く。
リディオとホーブと共に来ていたもう一人の男子生徒は視線をラノハとホーブの方に向けて、二人を見送った。
しかし、ラノハがホーブと共にセフィターの所に着く前に、セフィターが声を上げた。
「よし。今日はここまでだ。こちらの方に集まってくれ」
「チッ……」
セフィターのこの言葉を聞いてラノハは露骨に舌打ちをし、ホーブはホッとしたような様子だった。
生徒たちはセフィターの言う通りに、セフィターの元に続々と集まってくる。
この場にいる全員が集まったことを確認し、セフィターは口を開いた。
「明日は聖装竜機操縦の授業が殆どになるので、この時間は一時間分まで短くなる。なぜなら、特別講師が来校してその方が授業をしてくださるからだ。詳しいことは終礼の時間に話す。では、更衣室で更衣してから教室に戻ってきてくれ」
「「「「はい!」」」」
生徒たちはセフィターに対して返事をした後、更衣室に向かって歩き始める。
そんな生徒たちの頭の中には、特別講師が誰なのかというものしかなかった。
ラノハも例外では無く、誰が来るのかという考えを巡らせながら更衣室に向かって歩いていった。
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