13 / 26
第一章 入学編
入学編第八話 来校
しおりを挟む
朝、ラノハは自分たちの教室にて、セフィターが来るのを待っていた。
他の生徒たちも、自分の席に座って各々周りにいる者と談笑している。
シルア、シルンと話していたミリアは、ラノハに声をかけた。
「ラノハは誰が来ると思う?」
「……なんの話だ?」
「特別講師の話だよ!もう!」
「ああ……。その話か……。はっきりとは分かんねえけど、多分……」
ラノハがその先を言おうとした時、教室のドアが開いてセフィターが入ってきた。
それにより、生徒たちは一斉に私語をやめる。
教室が静寂に包まれていることを確認したセフィターは、その静寂を切り裂くべく口を開いた。
「おはよう諸君。早速だが、今日の特別講師を紹介しようと思う。お二方。どうぞ入ってきてください」
セフィターがそう言うと、教室のドアが再び開いて、二人の男女が教室の中に入ってきた。
その姿を見た生徒たちは呆然とし、驚きを隠せなかった。
なぜなら、この二人の男女は彼ら生徒たちにとっての憧れであり、尊敬している存在だからだ。
その二人の男女は、生徒たちの前に立つと小さく一礼した。
そしてその後、その男の方が生徒たちに向かって話し始めた。
「皆、はじめまして。ジーク・スパルドだ。隣にいるのは私の妻のリム・スパルドだ。今日は、特別講師としてここに来た。今日一日、よろしく頼む」
「リム・スパルドです。よろしくね」
なんと特別講師として来校したのは、ミリアの両親であるジークとリムであった。
これにはラノハとミリアも驚いたが、ラノハは多少なりとも予想はしていた。
なぜなら、ジークとリムは二人で『最強夫婦』と称されるスミーナ国の最高戦力であり、ジークに至ってはスミーナ国内で初めて聖装竜機を動かした伝説的人間である。
そんなスミーナ国が誇る二人がこの竜機操縦士育成学校に特別講師として来校することは、後継の育成という面において、ある種当然のことだろう。
だが、それだけではなく、裏にはスミーナ国の思惑があった。
邪装竜機の侵攻から十年がたった今現在、スミーナ国とルマローニ国は所謂膠着状態にあり、いつ戦争が起こってもおかしくない状況なのだ。
講和条約が結ばれていたとはいえ、十年も経てばもはや意味を持たない。
現にスタッツ街からの報告によれば、ここ数年、エリス村周辺でルマローニ人の数が目に見えるほど増えているようなのだ。
スミーナ国はこの事実により、開戦は近いと判断し、竜機操縦士の育成に更に力を入れ始めた。
今回のジークとリムの来校も、この一環であろう。
竜機操縦士の人数は増えてきたとはいえ、まだまだ少ない。
故にスミーナ国は、たとえまだ学生であろうとも戦力として見ているのであろう。
だが、生徒たちはそんなスミーナ国の思惑など露知らず、『最強夫婦』と名高い二人に教えていただけるという事実に興奮していた。
そんな生徒たちの興奮を知ってか、セフィターがこう言った。
「君たちも一刻も早くこの方たちに教えていただきたいだろう。よって、すぐに移動する。今回は長時間聖装竜機に乗ることになるので更衣してから来ること。では、すぐに動け」
「「「「はい!」」」」
セフィターの言葉を聞き、生徒たちは一斉に更衣室に向かい始める。
だが、ラノハただ一人はセフィターの元に向かった。
「先生。俺は剣の訓練に行ってもいいですか」
「駄目だ。今日は一年が聖装竜機の授業をほぼほぼ一日使うため、二、三年生がそこを使っている。邪魔にならないようにしていろ」
「……なら、家に帰らせてもらいます。この学校で出来ることがないなら、家に帰った方が有意義だ」
「……好きにしろ」
セフィターから許可をもらったラノハは、支度を済ませて教室を出る。
そしてそのまま、本当に帰ってしまった。
ジーク、リム、ミリアのスパルド一家は、そんなラノハを悲しそうな表情で見送るのだった。
他の生徒たちも、自分の席に座って各々周りにいる者と談笑している。
シルア、シルンと話していたミリアは、ラノハに声をかけた。
「ラノハは誰が来ると思う?」
「……なんの話だ?」
「特別講師の話だよ!もう!」
「ああ……。その話か……。はっきりとは分かんねえけど、多分……」
ラノハがその先を言おうとした時、教室のドアが開いてセフィターが入ってきた。
それにより、生徒たちは一斉に私語をやめる。
教室が静寂に包まれていることを確認したセフィターは、その静寂を切り裂くべく口を開いた。
「おはよう諸君。早速だが、今日の特別講師を紹介しようと思う。お二方。どうぞ入ってきてください」
セフィターがそう言うと、教室のドアが再び開いて、二人の男女が教室の中に入ってきた。
その姿を見た生徒たちは呆然とし、驚きを隠せなかった。
なぜなら、この二人の男女は彼ら生徒たちにとっての憧れであり、尊敬している存在だからだ。
その二人の男女は、生徒たちの前に立つと小さく一礼した。
そしてその後、その男の方が生徒たちに向かって話し始めた。
「皆、はじめまして。ジーク・スパルドだ。隣にいるのは私の妻のリム・スパルドだ。今日は、特別講師としてここに来た。今日一日、よろしく頼む」
「リム・スパルドです。よろしくね」
なんと特別講師として来校したのは、ミリアの両親であるジークとリムであった。
これにはラノハとミリアも驚いたが、ラノハは多少なりとも予想はしていた。
なぜなら、ジークとリムは二人で『最強夫婦』と称されるスミーナ国の最高戦力であり、ジークに至ってはスミーナ国内で初めて聖装竜機を動かした伝説的人間である。
そんなスミーナ国が誇る二人がこの竜機操縦士育成学校に特別講師として来校することは、後継の育成という面において、ある種当然のことだろう。
だが、それだけではなく、裏にはスミーナ国の思惑があった。
邪装竜機の侵攻から十年がたった今現在、スミーナ国とルマローニ国は所謂膠着状態にあり、いつ戦争が起こってもおかしくない状況なのだ。
講和条約が結ばれていたとはいえ、十年も経てばもはや意味を持たない。
現にスタッツ街からの報告によれば、ここ数年、エリス村周辺でルマローニ人の数が目に見えるほど増えているようなのだ。
スミーナ国はこの事実により、開戦は近いと判断し、竜機操縦士の育成に更に力を入れ始めた。
今回のジークとリムの来校も、この一環であろう。
竜機操縦士の人数は増えてきたとはいえ、まだまだ少ない。
故にスミーナ国は、たとえまだ学生であろうとも戦力として見ているのであろう。
だが、生徒たちはそんなスミーナ国の思惑など露知らず、『最強夫婦』と名高い二人に教えていただけるという事実に興奮していた。
そんな生徒たちの興奮を知ってか、セフィターがこう言った。
「君たちも一刻も早くこの方たちに教えていただきたいだろう。よって、すぐに移動する。今回は長時間聖装竜機に乗ることになるので更衣してから来ること。では、すぐに動け」
「「「「はい!」」」」
セフィターの言葉を聞き、生徒たちは一斉に更衣室に向かい始める。
だが、ラノハただ一人はセフィターの元に向かった。
「先生。俺は剣の訓練に行ってもいいですか」
「駄目だ。今日は一年が聖装竜機の授業をほぼほぼ一日使うため、二、三年生がそこを使っている。邪魔にならないようにしていろ」
「……なら、家に帰らせてもらいます。この学校で出来ることがないなら、家に帰った方が有意義だ」
「……好きにしろ」
セフィターから許可をもらったラノハは、支度を済ませて教室を出る。
そしてそのまま、本当に帰ってしまった。
ジーク、リム、ミリアのスパルド一家は、そんなラノハを悲しそうな表情で見送るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
豪華客船での結婚式一時間前、婚約者が金目当てだと知った令嬢は
常野夏子
恋愛
豪華客船≪オーシャン・グレイス≫での結婚式を控えたセレーナ。
彼女が気分転換に船内を散歩していると、ガラス張りの回廊に二つの影が揺れているのが見えた。
そこには、婚約者ベリッシマと赤いドレスの女がキスする姿。
そして、ベリッシマの目的が自分の資産であることを知る。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる