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第一章
夜明けと涙
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人類は一度滅んだ。
大地は海に沈み、生き物は殆ど死滅。
嘆いた創造神は再び大地を蘇らせ、人類の他に異人と呼ばれる人ならざる者を共存させ、平等な魔力と選ばれし者に能力を与えた。
人類は栄えた。それと同時に争いは絶えず。
危険な能力者は告発、排除され、いつしか伝説の産物となった。
同時に人間の欲深さは怪物を産み、世界一栄えた国、帝国ではギルドと呼ばれる組合が蔓延りそれらを退治したりして好き勝手に活躍している。
その日の朝は清々しいほどの晴れであるにも関わらず、街の一部は不穏な空気を漂わせていた。
「マーサ・・・!どうして・・・!」
一人の大柄な男性が女性の無残な亡骸の前に突っ伏し、大粒の涙を流している。
どうやら婚約者で、近々結婚する予定だったそうだ。野次馬からは「可哀想に・・・」と同情のような同調のような声が上がる。
国の警団があちこちに配備されており、街の人々の顔には不安が浮き出ている。
「マーサ・・・愛してるよ・・・!マーサ・・・」
男が苦しくなり現場を立ち去ろうとした時、カサッと紙が擦れる音がした。
慌ててコートを探ると、ポケットに封蝋を施した手紙が入っていた。不思議に思いつつ、明らかに怪しいのでポケットにしまい直し家路に着く。おかえりの返事が返ってこない家の中へ入り、先程の手紙が気になって恐る恐る封を開ける。そこにはこう書かれていた。
「愛する者を失い、悲しみに暮れる哀れな子羊よ。慈悲を与えたもう。これは貴殿を救う為の招待状である。招待を受けるのならば、貴殿を必ず護り、救う事を誓う。血の盟約をここへ メビウスより」
慈悲?招待?護り救う?
・・・バカバカしい。
それにメビウスって・・・殺し屋だろう。
バカバカしいとは思ったが・・・縋りたかったのだろう。この暗闇から抜け出したくて、這い上がりたくてもがいて疲れて。今やっと、蜘蛛の糸が降りてきたのだ。このチャンス、この好機、逃すわけにはいかない。
近くにあった果物ナイフで親指の腹を切り、流れ出た鮮血を手紙へ堕とす。
すると手紙は血をシミにすることなく吸い込み、青い炎に包まれ燃えて魔法陣へと変化した。度肝を抜かし、尻もちをついた男の目の前に、鮮血と同じ髪色の青年が現れた。
「こんにちは。神代 朔夜て言います。どうぞよろしゅう」
この変な喋り方の青年、朔夜がこの物語の主人公である。
♢♢♢
「か・・・しろ・・・さくや?変な名前だな・・・」
「んあ?あぁ、あんま馴染みあらへんよな」
「それに変な喋り方だ・・・」
「これは癖!」
朔夜と名乗った青年は机の上から降りてニコニコと愛想のよい笑顔で受け答えする。パッと見た感じは好印象で、青年にしては可愛らしい顔立ちをしており、とても殺し屋には見えなかった。というか本音は殺し屋であってほしくない。こんないい子が殺し屋でいてたまるか。
思い切って聞いてみる。
「君は・・・本当に殺し屋かい・・・?」
「ほんまやで!」
秒で希望は打ち砕かれた。こうもあっさり肯定されると悲しいものである。
しかし、元気いっぱいの笑顔に絆されてすっかり忘れてしまっていた。
「せやせや、おっちゃん。依頼は?」
「え?・・・あ・・・」
あの亡骸がフラッシュバックする。
思わず吐き気をもよおしたがギリギリのところで我慢し、深呼吸する。
「・・・妻になる予定だった人が、殺された。犯人はわからない。でも・・・」
言い切るまでぐっと涙を我慢する。
「彼女の・・・マーサの仇を取りたい!!・・・頼む・・・世界で一番・・・愛する人だったんだ・・・!」
額を地につけて頭を下げる。思わず零れた涙が木の床を濡らして、染み込んでいった。
朔夜は一言。
「うん、ええよ」
と言い、私の頭を撫でてくれた。
「あ、でも報酬弾んでな?彼女さんの仇、絶対取ったるから」
にっと笑った朔夜の犬歯はやけに長く鋭く、髪の隙間から見えた耳の先は尖っていた。
異人か聞くまでもなく朔夜は再び魔法陣の上に立ち、消えてしまった。
大地は海に沈み、生き物は殆ど死滅。
嘆いた創造神は再び大地を蘇らせ、人類の他に異人と呼ばれる人ならざる者を共存させ、平等な魔力と選ばれし者に能力を与えた。
人類は栄えた。それと同時に争いは絶えず。
危険な能力者は告発、排除され、いつしか伝説の産物となった。
同時に人間の欲深さは怪物を産み、世界一栄えた国、帝国ではギルドと呼ばれる組合が蔓延りそれらを退治したりして好き勝手に活躍している。
その日の朝は清々しいほどの晴れであるにも関わらず、街の一部は不穏な空気を漂わせていた。
「マーサ・・・!どうして・・・!」
一人の大柄な男性が女性の無残な亡骸の前に突っ伏し、大粒の涙を流している。
どうやら婚約者で、近々結婚する予定だったそうだ。野次馬からは「可哀想に・・・」と同情のような同調のような声が上がる。
国の警団があちこちに配備されており、街の人々の顔には不安が浮き出ている。
「マーサ・・・愛してるよ・・・!マーサ・・・」
男が苦しくなり現場を立ち去ろうとした時、カサッと紙が擦れる音がした。
慌ててコートを探ると、ポケットに封蝋を施した手紙が入っていた。不思議に思いつつ、明らかに怪しいのでポケットにしまい直し家路に着く。おかえりの返事が返ってこない家の中へ入り、先程の手紙が気になって恐る恐る封を開ける。そこにはこう書かれていた。
「愛する者を失い、悲しみに暮れる哀れな子羊よ。慈悲を与えたもう。これは貴殿を救う為の招待状である。招待を受けるのならば、貴殿を必ず護り、救う事を誓う。血の盟約をここへ メビウスより」
慈悲?招待?護り救う?
・・・バカバカしい。
それにメビウスって・・・殺し屋だろう。
バカバカしいとは思ったが・・・縋りたかったのだろう。この暗闇から抜け出したくて、這い上がりたくてもがいて疲れて。今やっと、蜘蛛の糸が降りてきたのだ。このチャンス、この好機、逃すわけにはいかない。
近くにあった果物ナイフで親指の腹を切り、流れ出た鮮血を手紙へ堕とす。
すると手紙は血をシミにすることなく吸い込み、青い炎に包まれ燃えて魔法陣へと変化した。度肝を抜かし、尻もちをついた男の目の前に、鮮血と同じ髪色の青年が現れた。
「こんにちは。神代 朔夜て言います。どうぞよろしゅう」
この変な喋り方の青年、朔夜がこの物語の主人公である。
♢♢♢
「か・・・しろ・・・さくや?変な名前だな・・・」
「んあ?あぁ、あんま馴染みあらへんよな」
「それに変な喋り方だ・・・」
「これは癖!」
朔夜と名乗った青年は机の上から降りてニコニコと愛想のよい笑顔で受け答えする。パッと見た感じは好印象で、青年にしては可愛らしい顔立ちをしており、とても殺し屋には見えなかった。というか本音は殺し屋であってほしくない。こんないい子が殺し屋でいてたまるか。
思い切って聞いてみる。
「君は・・・本当に殺し屋かい・・・?」
「ほんまやで!」
秒で希望は打ち砕かれた。こうもあっさり肯定されると悲しいものである。
しかし、元気いっぱいの笑顔に絆されてすっかり忘れてしまっていた。
「せやせや、おっちゃん。依頼は?」
「え?・・・あ・・・」
あの亡骸がフラッシュバックする。
思わず吐き気をもよおしたがギリギリのところで我慢し、深呼吸する。
「・・・妻になる予定だった人が、殺された。犯人はわからない。でも・・・」
言い切るまでぐっと涙を我慢する。
「彼女の・・・マーサの仇を取りたい!!・・・頼む・・・世界で一番・・・愛する人だったんだ・・・!」
額を地につけて頭を下げる。思わず零れた涙が木の床を濡らして、染み込んでいった。
朔夜は一言。
「うん、ええよ」
と言い、私の頭を撫でてくれた。
「あ、でも報酬弾んでな?彼女さんの仇、絶対取ったるから」
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