護堂先生と神様のごはん 幽霊屋台は薄暮を彷徨う

第1章 誘いの電話は突然に

5.オカルト雑誌のグルメ取材

　スープはコクのある醤油と魚介出汁がブレンドされとても奥深く、ちぢれ麺に良く絡んで、麺をすする箸が止まらなかったという。
　その味を忘れられない彼らは、また屋台に出会えないかと探して歩いているそうだが、お店に立ち寄れたのは皆一度限りだったそうだ。

（あの狸の蕎麦屋の様なものだろうか……）

　私は出雲で迷い込んだ、神様御用達の蕎麦屋を思い出した。

　そして、そんな湊川君の説明を聞いていく中で、私はようやく今回の依頼の本当の趣旨を理解した。

　つまりは、私達がこれから取材して書く記事は、旅行誌やグルメ雑誌用の記事ではなくオカルト誌のものなのだ。
　オカルト誌は湊川君の担当では無かったはずだが、調子の良い湊川君の事なので、また先輩の仕事でも安請け合いしてしまったのだろう。

『僕もこんな店が本当に見つかるとは思っていないんで、安心して下さい。とりあえず、目撃情報のあった辺りを昼から取材して頂いて、日が暮れる頃には駅前にあるラーメン屋で夕食を召し上がって下さい』

『え、普通の店に入っちゃうの？』

『ええ、目撃情報のあった場所の様子と、最後に普通のラーメン屋へ行ったオチだけ書いて貰えれば大丈夫です。後は取材地の写真を数枚……あ、食事代は経費で落としますから、好きなものを召し上がって下さいね！』

『うん、分かった。明日は土曜だし学校も休みだから、宵山と探しに行ってみるよ』

　私はそう言って電話を切る。