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第2章 幽霊屋台を追いかけて

10.光るもの

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 デートだったら確実に盛り上がりそうな美しい景色であるが、残念な事に現実は男二人と神様が、神出鬼没の幽霊屋台を探し回っているのである。

 同じシチュエーションだったら、デート側の経験をした人の方が多いのではないだろうか。まず人生において幽霊屋台なんて探す機会も必要もないだろう。

 私が心に虚しい風を吹かせていると、宵山が海の方に向かって歩き出す。

『おおー、キレイだなー!』

 折角なので、私も気を取り直して夕焼けを楽しもうと、宵山を追いかけた。
 そして眩しく輝く海を眺めていると、私の視界の中で何かがキラリと光る。
 波は元より光っているが、私が見たのはもっと上、つまり空だった。波のしぶきだとしても、あんなに高くあがるだろうか。

(何か細長いものが、幾つか横切ったように見えたのだけど……)

『目撃情報があったのは、ここの駐車場だったよな?』

 私は宵山に話しかけられて、思考を中断し振り返った。

『あ、ああ。』

(今見たものも、一応地図に書き込んでおこう……)

 私は周辺の情報も合わせて地図に書き込むと、携帯を取り出して数枚写真を撮った。

『今のところ何の気配もないなー。折角なら食べてみたいがな。幻のラーメン』

『そうだな……。もう次が最後だ。そこを回ったら、駅前で普通にラーメン食べて帰る感じだな。移動中に美味しそうな店がないか調べておくよ』

 依頼を受けた時に感じた不安が、杞憂で済んでくれるならその方が良いが、なんだかあまりにも呆気ない感じがした。

 そう言って私が車内に戻ろうとすると、神様が窓越しに海の方を眺めてニヤニヤしているのに気が付いた。

(神様も景色が綺麗だなんて思うのかな……食べ物にしか興味がないと思ってたけど……)

 何を見ていたのか聞いてみようかとも思ったが、直ぐに宵山も車に乗り込んできたので結局聞けず仕舞いだった。
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