護堂先生と神様のごはん 幽霊屋台は薄暮を彷徨う

第3章 墓場とラーメン

8.光の正体

『あっ、近くの海ってもしかして……』

　私の脳裏に先程の夕陽に照らされた海が浮かぶ。そして、その上空に煌めいていた幾筋かの光をはっきりと思い出した。

『……まさか、あれって……』

『おお、そうじゃそうじゃさっきも飛んでおったの』

　神様は楽しそうに手を叩く。

　この神様と暮らすようになってから、私の日常にはしょっちゅう不可思議な存在が紛れ込んできていた。
　あまりにも自然に、沢山の怪奇現象が起こるものだから、私の方は大分慣れっ子になっていた。

　だがそれでも、死神がラーメン屋をしている理由までは想像がつかない。

『あの、死神さんは何でラーメン屋を始めたんですか？』

　私は質問を続けた。死神の主人は少し考えるような間を取ってから、ゆっくりと答えた。

『私、ハジメテ人間ノツクル拉麺食ベテ感動シタ。私モ作ッテミタイと思ッタ』

（初めて食べたラーメンの味に感動したから……）

　動機としては分かるが、死神がラーメンを食べる機会なんてあるのだろうか。

『そうですか……ラーメンを初めて召し上がったのはどちらで？』

『人間霊ガ、霊界ニ食堂作ッタ。偶二私モ行ク。トテモ美味シイデス』

（霊界に食堂……？）