護堂先生の芋掘り怪奇譚

栗槙ひので

文字の大きさ
上 下
8 / 14

8.たぬきの子

しおりを挟む
 良く目を凝らしてみると、少し先にある木の根元辺りから、茶色くふわふわした何かが生えていた。
 植物ではなさそうだが、何だかは良く分からない。それはゆらゆらと揺れ動いている。

(あれは……?)

 恐る恐る近づいて見ると、地面が抉れて出来た窪みの中で、小さな子狸がもがいていた。

『What's up?』

 西園寺先生も近づいて来る。

『たぬき……みたいですね』

(さほど深くもないし、自力で這い上がれそうなものだけど……)

 私が窪みを覗き込んで、子狸の様子を伺うと、後ろ足の近くに赤黒く細長いものが見えた。 

(蛇!?)

 一瞬驚いたが、良く見ればそれは植物の蔓のようなものだった。どうやら足に絡まってしまったらしい。

 噛まれでもしたらという不安はあったが、このまま放っておくのも寝覚めが悪い。私は穴の端に屈んで、そっと手を伸ばすと、絡まった蔓をちぎり解いてやった。

 子狸は自由になった後ろ足をばたつかせると、チラリとこちらを見てから、慌てた様子で走り去って行った。
 まだ元気そうな様子を見て安心し、私も立ち上がろうとしたその時、

 ザザザッ……!!
しおりを挟む

処理中です...