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第4章 お祭りクレープとカルボナーラ

31.コーヒー

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『何頼む?』

 私はドリンクメニューを広げながら二人を席に迎えた。

『そうですね、私はこのメロウオリジナルブレンドにします』

『あ、じゃー俺も』

 私はコーヒーをマスターに注文すると、直ぐに本題に入る事にした。

『それで、天狗の件なんですけど……真白さんはあの後どうされたんですか?』

『ええ。弓矢を躱しながら、皆さんとは逆方向に逃げたので遅くなってしまいました。銀胡も別方向に逃げたようで、その後は見かけていません……』

『弓矢って……何時代だよ怖えー』

 天太君が顔をしかめる。私は益々恐縮しながら言った。

『まさか今回、これまで現れていた妖怪達の棲み家にわざわざ取材に行くとは思いませんでした……』

『実は、空を飛び変化をする妖怪として、天狗は候補に上がっていたのですが、その拠点までは掴めていませんでした……。今回の件で彼等の居場所が分かったのは怪我の巧妙でしたが……』

 そう言うと真白さんも険しい表情になる。

『今回、銀胡との対立がはっきりして、彼等の狐に対する警戒はかなりのものだという事も分かりました』

『つまり、こむぎは元より真白さんに対しても敵意を向けていたという事ですね?』

『はい』

 ふわり、と良い香りが漂う。

 白い口髭を蓄え、黒いベストを着たマスターがコーヒーを持って来てくれた。

『ごゆっくり』

『どうも』

 天太君と真白さんは、早速淹れたてのコーヒーに口をつけた。
 どんな深刻な話をしていても、落ち着きを取り戻せる不思議な香りだ。
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