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第5章 神と天狗と月見うどん

18.相談相手

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『烏天狗?』

『ええ、赤い顔で鼻が長い天狗は鼻高天狗という、お面とかでよく見る天狗です。でも、こちらは割と近代になってから広がったイメージで、古くはカラスのような嘴をして山伏のような姿をした烏天狗が主流でした。烏天狗の中でも、より鳥に近い姿の木葉天狗という種類の天狗も居ます』

 奏汰は淀みなく解説してくれる。

『そうなのか……それで、それぞれ好きな食べ物は違うの?』

 私が尋ねると、奏汰は少し難しそうな顔をする。

『……すいません、食べ物に関してはあまり詳しい情報が無いのですが、木葉天狗は川で魚を採っていたという話があります。でも、サバが嫌いな天狗の話なんかもありますし、地域でも伝承の内容は異なっているみたいです』

(……なるほど、まあ神様の言っていたように地域差や個体差はあるのだろうな)

『ああ、うどんが好きなんて話もありますよ。他に多いのは、小豆飯や小豆餅なんかですね……お酒が好きで酒宴をしているなんて話も多いです。拐ってきた人間の子にも食べ物を与えていたという話もありますし、人間のご飯を盗んで来たりもしていたんじゃないでしょうか?』

『そうなのか、割と色んな物を食べるのかもね。ありがとう!』

『どういたしまして!』

 私は奏汰にお礼を言うと、職員室に戻って残りの仕事を片付けた。

(手土産にし易いのは、小豆餅とかかなぁ……後は日本酒かぁ……誰か詳しい人居ないかな……)

 仕事を終えて、帰り支度をしながら考え込んでいると、私は背後から心臓に悪い音量で声を掛けられた。
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